ガオリスとフルミス
「あら? ガオリスさんじゃないですか」
「おぉ、受付の姉ちゃん」
「メドイですよ。いつになったら覚えてくれるんですか?」
ガオリスと呼ばれた男が立ち上がると、メドイと呼ばれた女性の倍は身長があった。
身長が高い男と低い女が並んでいる姿は、傍目にも奇異に映る。
「ワリィな、人の名前を覚えるのは苦手でよ」
ガオリスは冗談げに笑った。
「ところで聞きたいんだが、あの坊主は何者だ?」
「フルミスさんですねぇ」
舞台から降りて行く少年を見ながらメドイは言う。
「んー、最近街に来た傭兵志願の方ですが、ほとんど素性は分からないんです」
「見所がある、ウチで引き取るわ」
「え、本当ですか!? 急にどうしたんですか?」
「まぁ俺達もオッサンになっちまったからな、そろそろ後進の育成をしないとなぁって」
「傭兵団を存続させるつもりなのですね」
「まだまだ今の時代には必要だ。魔獣達がいる間はな」
その言葉を聞いてメドイは笑みを浮かべる。
「それは助かります。じゃあ早速フルミスさんに伝えておきますね」
そして廊下を駆けて行った。
◇
「誰?」
傭兵団の誘いと聞いて斡旋所の待合室にやってきたが……。
そこに居たのは筋肉だった。
高い身長でガタイの良い男は不敵な笑みを浮かべている。
顔を上げないと目が合わない、面倒だな。
「はは、藪から棒だな。俺様はガオリスだ」
「そう。知らないけど」
「ほぉ知らないのか」
おどけた風に口をすぼめるガオリス。
「文句あるの?」
ちょっとイラっとした。
「ねぇさ。良いねぇ、その跳ねっかえりぷり」
「そんなつもりは無い、ボクは強くなるだけだ」
それ以外に価値はない。
「何だ、求道者の類か?」
「別にいいだろ、強くなりたい理由なんて」
「確かにそうだが、求める先の大きさで成長の度合いが測れたりもする」
ガオリスは真面目な顔をして言った。
「お前は何を目指す?」
そんなものは決まっている。
「赤い竜」
「成程な、復讐か」
それだけで理解される。
赤い竜は方々の村々を崩壊させているが未だに討伐されていない。
しぶといのもあるが、神出鬼没なのが一番の問題だ。
討伐部隊の編成が終わる頃には既に別の場所に移動している。
故に未だに討伐は進んでいない。
「アイツはグチャグチャにしないと、存在してはいけないんだ」
何かがある度に、あの竜の顔が頭をよぎる。
そして身を焼くような怒りの炎が湧き上がってくるのだ。
だから決めた。
私一人で殺す。
その為に闘うと決めたんだ。
私はガオリスを睨む。
意見はさせない、意見はいらない。
「分かった、その為の訓練をしよう」
「……それで、貴方は何?」
「聞いてなかったのか?」
そう言ってガオリスは二ッと笑うと。
「お前の師匠だよ」
聞きなれない言葉を吐いたのだ。
余裕を持って一日一話更新の予定です。