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傭兵斡旋所

「フルミス」


「何だ」



 劣化魔術を薄く纏いつつ辺りを走っていると、ガオリスに呼び止められた。



「お前さん、傭兵の許可証は持っているな?」


「あぁ」



 傭兵団に入る為には傭兵斡旋所からの許可証が必要となる。

 身分証明書の様な物だ。



「討伐試験があったはずだが、何を狩った? 犬型か?」


「黒犬だな」



 黒犬は犬型の魔獣だ。

 好戦的でよく討伐依頼が出ている。



「黒犬か、三人でも手強かっただろ?」


「何故三人なんだ」


「おい待て……」



 私の言葉にガオリスは戸惑った様な声を出す。



「斡旋所から説明があっただろう? 三人で編成を組んで討伐しろって」


「知らん」


「知らんって、お前さん」


「狩れと言われたから狩っただけだ」


「一人で狩ったのか……。まぁ、お前さんの技量ならできなくは無いだろうが」


「回避して首をはねるだけだからな」


「それが難しいんだけどな」



 ガオリスは呆れた様に笑っていた。



「斡旋所が三人で組めと言うのは理由がある」


「まとめた方が楽だからだろ」


「ちげーよ。連携の腕や誰かと組む交渉面も審査内容だからだ」


「何が言いたい」


「よく受かったなと言いたい」


「どうでもいい、本題を聞こう」


「冷めてんなぁ……。まぁ、簡単に云えばアレだ」



 ――魔獣討伐だ。







 傭兵斡旋所はいつも通り騒がしかった。


 仕事を探す者。

 併設された食堂で喚く者。

 新人の講習を行っている者も居た。



「あれは詐欺師だな。ちょっと待ってろ」



 詐欺師も居るのか。

 ガオリスは講習を行っていた男に近づく。



「げげっ!? ガオリス!?」



 男はガオリスに気付くと驚いた声を上げた。



「洒落にならんから止めろ」


「うひぃー!?」



 ガオリスが小突くと詐欺師は泣きながら去っていった。

 情けない奴だ。



「新人も多く集まるからな、カモにしようとする奴が後を絶たねえ」



 帰ってきたガオリスは少し苛立ちを覚えた様な口調で言う。



「そうか。オレには関係ないことだ」


「そいつはどうかな」


「何だ?」


「人間は情報の塊だ、善意を持っている内はその情報を引き出しやすい。だが詐欺にあった人間は用心をする、場合によっては悪意を持つ。善人がクズに堕ちるのは一瞬の話だ」



 ガオリスは少し寂し気な表情を浮かべた。



「嘘の情報に踊らされる可能性は下げた方が良いだろう」


「騙される奴が悪いんだ」


「それはガキの理屈だ。精進しろよ坊主」


「……ムカつく。自分一人で完結しているのが一番だろ」



 私はそうやって生きてきたんだ。

 自分のこれまでを否定された様で嫌だった。



「その先があるって話だよ」



 その先……?



「まだ分からねぇか。お前さんにも分かる日が来るだろうさ」


「ほんと、ムカつく!!」



 声を荒げた私に。



「うわぁー、おっかねぇな」



 笑いながら言うガオリス。

 やっぱりムカついた。


少しペースを上げたいですね。

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