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ブランカの報告 2



私が一つ頷くと、ブランカは先を続ける。



「まずはお義母様が受けたという、私の恋人たちが行った無礼な振る舞いについてですが……一人は王妃たるお義母様に庭園を去るように要請し、もう一人は愛人にするようにと迫ったと、証言が取れました。もっとも、ジョストはすぐに証言と謝罪を行ったのですが……マティアス、彼があんなに無様な振る舞いをするとは、私も初めて知りました」



出来事については、きちんと証言が取れたみたい。

特に訂正することもないけれど、この情報を得るまでが大変だったのだろうと察せられる。


ジョストが赤毛の騎士モドキで、マティアスが金髪の軽薄男だったか。

あのときの反省具合からしても、赤毛君はともかく、後者は正直に罪を認めるようなことはしなかったのだろう。



「彼は……はじめのうちは罪を認めず、ジョストを止めるために近づいただけで、後のことはお義母様の勘違いだと主張していましたが、お義母様が理由もなく激昂されるはずがありませんもの。それを指摘すると、次は私に慈悲を乞いながら、年上の女性と遊びたかったと言い出し……相手にせず何度か証言を迫ると、ようやく口を割りました。その後は口汚く喚いては、牢番に当たったり、私やお義母様のことを悪し様に罵ったりと……見るに耐えない有様でした」



そこまで言うと、思い出したのかブランカは振り切るように首を振った。



「あの場にいたお義母様の侍女や護衛からも話を聞き――そうそう、二人を止められなかった護衛たちは、陛下が処罰されるそうですね――お義母様は彼らを諫め、大事にしないためにあの場で収めようとされていたこともわかりました。それなのに彼らが余計なことを言い続けたせいで、とうとう逆鱗に触れてしまったと」



ブランカがそこまで調べたことに、正直驚きを隠せない。

私が目を見開いていると、ブランカは大きく息を吸い――。



「そこで私はジョスト、マティアスの両名を不敬罪とし……罰として、死なないように処置を施したうえで舌を切り落とし、鞭打ちとしました」

「えっ」



想像以上に重い罰だった……!!


ブランカの恋人だし、全貌が明らかになったところで厳重注意程度かと思っていたら、真逆。

そうか……ブランカの恋人だから(・・・)、重い罰にせざるを得なかったのか。


不敬罪は、私に対してのものだけではないから。



それ以外にも、何やら細々とした罪状がブランカの口で付け加えられていくけれど……それらを総合して、死罪ではないものの、禁固込みの身体罰になったということだった。


……文字通り、口が災いの元になってしまったということね。

彼らも舌を失っては、もう余計なことは言えないだろう。



「――ジョストに関しては、調査に協力的であったことやお義母様が収めかけていたというあの日の状況も鑑みて、鞭打ちは数回、形だけのものになりました」



流石に、彼らを全くの同罪としては扱わなかったらしい。

何と言ったものかわからないけれど、私の意向を汲んでくれたということは理解できる。



「それから、マティアスは未遂ではありますが、姦淫罪も適用され……その、陰刑に処されました」

「うっ……」



言いにくそうにブランカが口にしたけれど、私も思わず顔を歪めてしまった。


陰刑というのは、アレだ。

あの……男性のピーを去勢する、エグめの……。



「反逆罪も適用すべきという声もありましたが、謀反や命を狙っての犯行ではないので死罪にはしませんでした。……しかし、軽い罰では他方への示しがつかず、王妃であるお義母様を軽んじることになってしまいますので、今述べた罰を既に執行済みです。お義母様に許可を頂き次第、王宮内の地下牢から罪人向けの塔への収容を予定しています」



これは……さっき私がこの内容で満足できなかったら、追加で沙汰を下せるようにって言っていたけど……想像以上の結末になってしまった。

だけど、王妃に対して大っぴらにしでかしてしまったことを考えると妥当なところなのだろうと、頭の中で過去の判例を思い返して納得しようと頑張ってみる。


恐らく、今でも私の怒りが解けずにブチギレたままだったなら、死罪を要求しても通ってしまうだろう。

うん……赤毛君はちょっぴりだけ減刑されたみたいだし、ギロチンは回避してあげられたと思うしか、ないか……。



顔色を悪くした私に、ブランカは毅然とした態度で告げる。



「お義母様が罪悪感を抱かれる必要はありません! これは彼ら自身が犯した罪で……彼らを傍に置いた、私の罪です」



続く言葉に、ハッと顔を上げると、ブランカの酷く悔いたような表情が目に入った。



「彼らの行いは……私が日頃、お義母様へ対して取ってきた態度や行動のせいでもあるのです。私が、お義母様に意地悪なことを言ったり、嫌っている、みたいな……そんな素振りをしていたから、だから、彼らも……。ですので、あの日お義母様が仰ったとおり、彼らを管理できなかった、私の責任なのです」



一瞬、幼げないつものブランカが垣間見えたけれど、すぐにまた毅然として大人びた口調に戻る。



「お義母様への報告は、これだけではありません。と、いいますのも……彼らを処罰しただけで、話は終わらないのです」



真剣な表情を浮かべたブランカが語ったのは、私の知り得なかった、あの日の衝撃的な背景だった。



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