第73話 あの子は鬼ではない!
モストホープ社は半分以上の人が驚いていた。
アイアス「角生えてるぅ!?」
アウルート「鬼塚さん、名字通りに鬼だったとは・・・。」
アウルートと済陽も驚いていた。
平塚「あの・・・、スカウトしたのに正体知らなかったのですか?」
特別にモニタリングをしていた平塚は2人に尋ねた。
済陽「本当に知らなかった。ただ、ふざけたことに腹を立てる子だと思っていた。」
強欲・元社長「驚いたけど・・・、今更だな。今までの奴らもこんな感じだったでしょ。」
「「「「「・・・・・・・・・、まぁそうだな。」」」」」
騒然としていた参加者たちは亜音速に腑に落ちた。
確かに今までの挑戦者も、宇宙人や意思が芽生えた本や幽霊、悪魔がいた。
だから、本当に今更である。
東区の直子たち
直子たちは鬼塚が鬼と知った後、逃げられてしまった。
「なんて言ってたの?」
直子はアイアスに電話の内容を聞いた。
「今回の悪魔は鬼の子孫らしい、素手で殴ってきたら全力でよけろと。」
「だから、鬼塚ちゃんは人をぶっ飛ばすグローブを欲しがっていたのね。」
「あの異能?が安全装置みたいだったのかよ・・・。怪我しない程度で」
「そりゃ恐れるわな。」
真紀久は壊れた槍を見てつぶやいた。
「あたし、あの子を探して話してくるわ。くんくん。」
「犬かっ!?」
熊田は匂いと気配で鬼塚を探した。
「あれっ、アイアスは?」
「あらっ、いない。俺たちも鬼塚さんを探そう。」
アイアスはいつの間にかいなくなっていた。
直子たちも熊田の後についていった。
一方、折れた槍はそのまま置き去りになっていた。
その折れた槍の破片を興味本位で拾った人が3人いたことに直子たちはされも知る由もなかった。
東区の江口公園 午後3時40分
走って逃げた鬼塚は公園のベンチで休んでいた。
角はいつの間にか消えていた。
鬼塚は自分の力に一番恐れていた。
「あぁ・・・、なんとしてでもこの力を・・・。」
鬼塚は自分の拳に着けているグローブを握りしめた。
「鬼塚ちゃん。」
「鬼塚望さんですね。」
声をかけられて顔を上げる、そこには自分を追ってきた熊田涼子と、挑戦中にすれ違ったことがある探偵の薬袋と安部、そして、
「安部さん!遠藤さん!サチコさん!蛇笏!なんでここに?それと初めまして薬袋さん。」
「やっほー。」「こんにちは・・・。」
涼子は驚いた。そして、初対面の薬袋に挨拶をした。
「あなたは・・・。」
鬼塚は遠藤を見て思い出した。遠藤が前に殴った相手の近くにいた人だったことを。
「俺たちもこの人に用があるんだ。」
「私、探偵の薬袋と申します。こちらは助手の安部くん。」
「・・・はい、私が鬼塚望です。それで、用は何ですか?」
鬼塚は自己紹介されたので、自分も自己紹介をした。その後、用件を聞いた。
「こんにちは、遠藤と申します。先ほどは財布を盗んだ濡れ衣を着せられそうになったところを助けてくれて?ありがとうございます。」
「構いません。どういたしまして。用件はそれだけです」
「もう一つあります。鬼塚さん。悪い人でも人を殴るのはやめて下さい!」
遠藤は単刀直入に鬼塚にお願いをした。
「嫌です!こればかりはどうしても諦めることはできません!」
当然、鬼塚は断った。その後、鬼塚はどうしてこのグローブを欲しがるかを説明した。
鬼塚はお嬢様と和服が好きなこと以外はその辺の女の子と変わらない子だった。
しかし、彼女には怒りの沸点が低かった。
クラスが騒がしい時やふざける同級生、いじめの現場を見ると鬼塚は腹が立ってしまう。
しかし、腹が立った途端、意識がぷつんと無くなる。
意識が戻った時には、拳を血で汚し、周りにいた同級生はけがをした状態で倒れていたのだ。
幸い、命に別条がなく、法的にさばくのも難しいため、無罪だった。
その出来事を何度も起こし、転校と引っ越しを繰り返していたのだった。
「そうだったのか。」
遠藤たちは納得した。
「でも、グローブ付けていても怒った時、無意識に外している可能性もあるんじゃないか?」
サチコは質問した。
「前に、手袋をつけていた時、手袋を外さずに殴っていました。外側から血が付着した様だったので。」
「ならグローブは外さないんだな。」
サチコが笑顔で納得をしていた。しかし、遠藤は苦い顔をしていた。
「でも、本当に悪いことをした人はともかく、悪ふざけをしていた人まで殴るのは良くないよ。そのグローブのためとはいえ。」
「なんでですか?」
鬼塚は睨んで質問した。
「君への仕返しがあるかもしれないんだ。僕はそんなことが合ったからね。」
遠藤は答えた後、脇腹の痣を見せた。
「「「「えっ?」」」」
薬袋と安部と涼子と鬼塚は目を丸くして驚いた。
「僕はね、前に不良に絡まれていた女性を助けたんだ。しかし、後日不良の男性たちに殴られた。もしかしたら、君に殴られた人は君の顔を覚えているかもしれない。君を見たら復讐するかもしれない。だから、ふざけていた人を殴るのはやめてほしい。」
「遠藤さん・・・(この人は殴られた人じゃなくて殴った私を心配しているんだ。)。」
「だけど、ノルマを達成しないとこの子は鬼になって暴走するかもしれないぞ。」
「そうだなぁ、でも仮に本当に悪い人がいても都合よくいるとは限らないし。」
「とりあえず、感情ははメンタルコントロールで沈める方法を実践するとして。力はこれがないといけない気がする。」
「買収して殴られるか?」
安部が意見を言っている途中だった。
「解決する方法があります。」
また一人、やってきた。
「げっ、アイアス・・・。」
涼子は露骨に嫌な顔をした。
「その解決方法とは何ですか?」
鬼塚は興味深く聞いた。
アイアスは剣を出してこういった。
「貴方が消滅すればいいだけです。」
「おいふざけんなぁ!こんなかわい子ちゃんを消すってあんた悪魔か?」
涼子は怒った。他の皆も怒った。
「悪魔はあなた達でしょう?」
アイアスは冷静に返した。
「私たち以上にお前が悪魔じゃい!」
「何を言っているのですか?人のために自分を恐れるなら自滅を望むのではないのですか?」
「そんなことできません!」
アイアスの質問に鬼塚は涙を流しながら大声で答えた。
「私だって人間です!普通に老衰で人生終えたいし、普通の人の様に仲よくしたり遊んだりしたかった!でも、この力があれば人をけがさせなくて済む!」
「鬼塚の言うとおりだ!あたしもヴァンパイア混ざっているけど半分は人間だ!そして人間と仲良くしたい!」
「俺もだ・・・!」
「うんうん!」
鬼塚の意見にサチコと蛇笏と遠藤は賛同した。
「鬼塚さん、確かあなたの家は金持ちですよね。俺たちに依頼すれば、アイアスからあなたを守ることが出来ますよ。」
「今なら4分の3は俺が負担するぞ。」
薬袋と安部もタイミングの良いところで宣伝をしてきた。
「さぁ、鬼塚ちゃん。あなたはどうしたい?」
涼子はあえて鬼塚に質問した。
「お願いします!私をあいつから守ってください!そして、この鬼の力を封じたり沈めたりする方法を探してください!」
「引き受けた!」「おっけー!」「マカセロォ!」「うん」「分かった!」「行くぜェ!」
薬袋たちはそれぞれ返事をした。
安部と涼子はアイアスを妨害し、残った遠藤たちは一緒に逃げた。
「どうしてデビルハンターのあなたが悪魔の味方に?」
「悪魔は彼女じゃない。悪魔はあの子の力だけだ。」
「そうだ!あの子は和服が似合う鬼可愛い子だ!」