第11話 元挑戦者たちの後日談1
7月6日(日) 午後2時 玩具屋久田
私、直子は昨日の出来事を伝えるために玩具屋久田にいた。
「というわけで、浄化に失敗しました。」
「あー、いいよ。こっちも手助けできなかったし。」
「えっ!?」
私は管さんの言葉に驚いてしまった。
「一人や二人くらい大丈夫だと思う。それに願い事も割とまともな感じだし。」
「本当にいいんですか?それとまともでしょうか」
「いいって、こっちもごめんね。昨日は忙しくて連絡できなかった。」
「はぁ・・・。」
「ところで、後ろにいるのが、その成功した挑戦者?」
「はい。」
私は後ろにいる高井美香を久田さんに紹介した。
「君が美香ちゃんか。こんにちは。」
「こんにちは。ハリセンさんがいつもお世話になっています。」
「丁寧な子だね・・・。美香ちゃん、聞きたいことがあるんだ。」
「何でしょうか?」
「君たちを挑戦者にしている人って誰?」
ストレートに言っちゃったよ!そういえば、浄化した人から情報を聞いていなかった!私の阿保!
「すみませんが、それは答えることができません・・・。」
美香ちゃんは申し訳なさそうな顔をしながら答えた。
「私からも聞きたいの、ダメ?」
「ごめんなさい、ハリセンさんからのお願いでも、あの人たちには願いを叶えてくれた
高井美香は恩返しを人生上のルールにしている人だった。
「でも、ルールだけなら教えます!」
「ルール?」
「はい、挑戦者のルールがあるのです。」
私たちは美香ちゃんからルールを聞いた。
「そういう事になっていたのね。」
「はい、後、挑戦者は土曜日に選ばれます。」
「なんで土曜日なの?」
「それはわかりません。」
私たちはルールを聞いた後に謎に思った。
何故、不殺の心を持っているのか。何故、土曜日に選ばれるのか。
それはさておき、私は元挑戦者から情報を聞こうと思った。
「管さん、今から挑戦者だった人から敵の場所の情報を聞こうかと思います。」
「ハリセンさん、それはできません。リタイヤした人は記憶を一部消されているらしいです。」
「そうなのっ!?」
「はい、最近参加した忍者の方がリタイヤした人から会社の場所と主催者の顔と名前が抜き取ったそうなんです。」
「遅かったか・・・。」
私は凹んだ。そして、忍者って何!?
「でも、他の挑戦者がどんな人だったかは覚えているそうです。」
「よし、行ってくる!」
「私も付いていきます。」
私達は、挑戦者だった人のもとへ向かった。
まずは、宇宙人のパリ・タ―イさん。今は害虫駆除のボランティアに参加している。
パリは、加熱した害虫を食べながら話をしてくれた。
「う~ん、そうだね。覚えている人というと、元社長と忍者のおじさんとバイオ博士くらいしか覚えていないかな。」
「どんな人でしたか?」
「元社長は、私をスカウトしてくれた人なの。なんでも、自分の会社を大金で主催者に譲ってしまった人なんだって。」
「なんじゃそりゃ。」
「次に男の忍者の人とバイオ博士は私と同じようにグロテスクな映像を見ながら虫を食べることができたよ。」
「うえぇ~。」
私は想像しただけでぞっとした。パリさんと同じく、精神が異常な人がいたとは。
「美香ちゃん、記憶を消している人がその忍者なの?」
「いいえ、忍者は二人いました。お爺さんと女の忍者でした。」
「そうそう、お爺さんじゃない方がスタッフになったんだよね。」
くノ一の方がスタッフになっている。じゃあ、記憶を消しているのがくノ一なのだろうか。
「そうだ、イナゴの佃煮どう?普通の人でも食べれるよ。」
「結構です。」
「いただきます。」
私は遠慮した。背筋がぞっとしてしまった。美香ちゃんは食べた。平気な顔で。
「おいしいです!」
「そうなの!?」
「ハリセンさんもいかがでしょうか。」
「いえ、私は遠慮するよ・・・。」
私たちはパリさんを後にした。
次に私は高田塔子の所に向かった。彼女は黒田君と一緒に『塔子ちゃんを超えろ!』というイベントを開催して終えていた。
「なにこれ?・・・」
「私の顔写真を見て妬まない人が私に挑戦しに来たのです。そして全戦引き分けでした。」
「そうだったのね・・・。」
「ところで塔子に何を聞きに来たの?」
「他の挑戦者の情報を聞きたいの。」
「挑戦者ですか・・・、元社長とそれ以外にはいませんね。」
「そうなのね、分かったわ、ありがとう。」
「もしかして、他の人にも聞くつもり?だったら色君は修行の旅に出てるから聞けないよ。」
「分かったわ、ありがとう。」
私たちは塔子ちゃんと黒田君を後にした。
その後、禁酒シスターだった小野聖子の所に向かった。今はお料理学校に通っていた。
「やぁ、あの時はすまなかったわねぇ。それと挑戦成功成功おめでとう。」
聖子さんは私への謝罪と美香ちゃんへの祝福をした。
挑戦者の時とは違って、優しいおばあちゃんといった穏やかな雰囲気になっていた。
「他の挑戦者の事を聞きたいのかい?そうだねぇ、かつての私と美香ちゃんの様に自分の願いが世界をよくすると私よりも信じていた人が何人かいたねぇ。」
「どんな人でしたか?」
「そうだねぇ、一人は地球温暖化を解決させたいって言っていたね。他には、悪滅亡とか、富国とか、差別のない世界とか、そんな事を目標にしていた人がいたねぇ?」
「そうだったのですね、ありがとうございます。」
「いやいや、こちらこそありがとう。あの時、君のおかげでお酒を使うに料理を考えるという新たな目標ができたよ。」
聖子さんはうれしそうな顔をしていた。
午後5時 帰り道
「いやぁ~、聖子さんとパリさんからしか情報が聞けなかったね。」
「そうですね。でも、意外でしたよ。リタイヤした人たちがあんなに嬉しそう
聖子さんはお酒を絶滅させようとしていた。しかし、今は料理を研究するようになった。
塔子ちゃんは、格下に妬まれて馬に乗って暴走をした。しかし、黒田君のおかげで同格・格上の人間を探すという目標ができた。
惑星の生態を崩したパリさんも、今は害虫駆除で人々を助けていた。
色君もなんだかんだで人を笑顔にする修行をしているようだ。
「他の人たちも、元に戻して平和になるといいね。」
「それは難しいと思います。」
美香ちゃんは低い声で言った。
「のこりの挑戦者は、あの人たちの様に笑顔になれないと思います。」
どういう事なの。
「他の人たちは、特定の人物を自身の命を犠牲にしてでも叶えようとしたり、自分の正しさを私の様に信じて疑わない人がいたり、望みがかなえられなかったら生きるのをやめようとしている人がいました。」
美香ちゃんの言っている事に少し疑ってしまった。命を犠牲にするほどの願いという事に。
「それでも・・・、私は元に戻す。」
「できる限り、みんな元に戻して、ハッピーエンドにして見せる。そして、アイアス君の手も汚させない!」
私はそう強く決心していた。
「やっぱり、ハリセンさんはいい人だな。」
「そ、そうかな?」
「はい。あの、もしあの時の異能の永久版を貰ったら、預かっていただけないでしょうか。」
「いいのかい?」
「はい、前にあなたの言っていたことに確かにと思いました。催眠は良くないと。だからじゃんけんの一騎打ちを引き受けました。だから、大事な時以外は持っていただけないでしょうか。」
私の言葉が少しだけ、美香ちゃんに届いていた。私は少し、嬉しかった。
「・・・分かったわ。」
「ありがとうございます。」
作者はイナゴの佃煮を食べたことはありません。