第10話 金貨とじゃんけんポン
午後1時 東区 商店街
高井美香は、中央区で100人にお札を張った後、モストホープ社でお札を補充した。その後、市電で東区の方で次の標的を探した。
「土曜日は歩行者天国になるのですね。ここにもいい人が良そうだな。」
そして、彼女は人柄のよさそうな人20人にお札を張っていった。
「さて、他の所にも回ろう。」
商店街を出ると、アイアスに遭遇してしまった。
「あっ、デビルハンター!」
「挑戦者、ここにいたとはな・・・。」
美香は金貨を出した。そして、アイアスの逆方向に逃げた。
「待てっ!」
アイアスは追いかけた。
美香は、時々アイアスに金貨を当てた。
午後1時20分 人通りが少ない道
20分も走った美香とアイアスは、道で立ち尽くした。
「挑戦者!お前の人間を捨ててしまった心。そしてその力。断じて許さぬ!」
「何を言っているのですか、デビルハンター。私は人間の持っている見返りの心をもっていますよ。それにこの力は世の中を良くしているだけですよ。」
「ふざけるな!お前はその力で無理やり見返りを出そうとしているだけではないか!」
「そうですよ!家族以外に無償の思いやりなんて人類の8割以上いると思っているのですか?」
「いるに決まっている!思いやりは生きるもの全員にあるはずだ!」
塔子の質問に肯定するアイアス。しかし、塔子はそんなアイアスに呆れる。
「この時代をまだ詳しく見ていないのによく言えますね。」
「何だと!?」
「いいですわ。どちらが正解か勝負で教えますわ。」
「望むところだ!」
美香とアイアスの一騎打ちが始まった。
アイアスは、剣を構えて塔子に襲い掛かった。
美香は金貨を投げた。しかし、アイアスは剣でコインを振り落とした。
美香の前までやってきたアイアス。しかし、美香は小判を両手で持った。
すると、小判は突如大きくなり大判の側面でアイアスの腹部をついた。
「ぐふっ!」
アイアスは倒れてしまった。その隙をついて美香は金貨を詰めた紐が長い巾着袋をハンマーの様にアイアスの右手を攻撃。
アイアスが持っていた剣が飛んでしまった。
更にお盆サイズの金貨を側面でアイアスの頭を叩いた。
「えいっ!」ボォン!
「アウチッ!」
「私の方が正しかったですね。」
「そんな・・・馬鹿な・・・。」
「じゃ、さよなら。」
美香はアイアスを置いて走り去った。
午後6時 中央区 デパート
美香は着実に計画を進めていき、お札は合計200人張り、恩返し金額も1万7千円になっていた。
残り時間はあと6時間。達成するのも時間の問題だった。
しかし、美香は念のためモストホープ社でお札をまた補充をした。
そして今美香は、デパートでおいしいお惣菜を探していた。
直子の夕飯を探していた。塔子はまだまだ恩返しをする予定だった。
「さて、どれが美味しそうかな?」
からあげ、黒豚とんかつ、からし蓮根、明太子、ステーキ肉、等デパートにはおいしそうなものがいっぱいあった。
また、夕方時なので人が多かった。
「よし、サラダと鶏肉と豆腐の煮物にしよ。」
美香は買うものを買った後、デパートを後にした。
すると、電話が鳴った。
「はい、もしもし。」
『もしもし、高井ちゃん?横田です。ハリセンの人です。」
「あっ、ハリセンさん!」
何故、直子が美香の電話番号を知っているのか。それは、商品券の封筒に美香の電話番号が書かれていたのだ。
『高井ちゃん、一騎打ちをしたいの。』
「一騎打ちですか。」
『そう、高井ちゃん。あなたのいう事は私は正しいと思っているの。』
「そうでしょう。」
『だけど、人に催眠をかけるのは行動が良くないの。倫理的に。』
「えー、そうでしょうか?」
『そういうものなのよ。高井ちゃん、私は催眠を止めるためにあなたを止めたいの。』
(う~ん、いくらハリセンさんの頼みでも難しいなぁ。もうすぐ目標達成しそうですし、譲れない望みですし。でもなぁ~。)
「分かりました。夕飯も届ける予定だったので今行きます。」
『ありがとう、ってまだ恩返しをする予定だったの!?』
「はい、お昼に言ったじゃないですか。」
『そういえばそうだったね、分かったわ。』
美香は直子の自宅前に向かった。
途中でお札も人に貼り付けた。
午後6時45分 直子の自宅前
「お待たせしました。」
「来てくれてありがとう。それじゃあ、じゃんけんで勝負してくれないかしら。」
「はい!あなたの頼みなら受けてたちます。」
私はじゃんけんで勝負をすることにした。正直、他の勝負の案が出なかった。
「それじゃあ行くよ。」
「はい。」
「「最初はグー!じゃんけんポン!」」
私はパー、高井ちゃんはチョキ。私の負けだった。
「やったぁあああああああああ!」
「負けた・・・。」
高井ちゃんは喜び、私は膝をついて落ち込んだ。
ピーンポーンパーンポーン!
突如スピーカーが鳴った。
『高井美香様、おめでとうございます。恩返し金額が2万円を超えました。挑戦成功です。明日の9時までに、モストホープ社へお越しください。異能力は強制解除いたします。』
どうやら、高井ちゃんの目標が達成したアナウンスだった。私がじゃんけんに勝っても負けても時間切れだった。
「や、ややっ、やりましたー!」
私は落ち込んだ。しかし、彼女の望みも正しかった。ここは成功することを祝った。
「おめでとう、美香ちゃん。」
「あっ、ハリセンさん・・・。ごめんなさい、命の恩人でもやっぱりこれは譲れませんでした・・・。」
美香ちゃんは悲しむ顔をしていた。しかし、私は笑顔でいった。
「何を落ち込んでいるのよ。勝負に勝ったのでしょ。おめでとう。」
「でも・・・。」
「いいから、いいから。もし、本格的に使えるようになったら恩を仇で返された人を優先に貼り付けてくれない?」
私がそういうと、美香ちゃんは少し明るい顔に戻り、はいと言った。
「じゃあ、買ってきてくれた夕飯。一緒に食べましょ。」
「はい!」
私と美香ちゃんは自宅に入り、夕飯を一緒に食べた。
モストホープ社
アウルート「ついに成功者が出ました!」
おおおおおぉぉっと部屋にいた参加者たちは、歓声を上げた。
無垢・光の神「ついに正しさが証明されたか。」
風刺・芸術家「えー、絵を完成したのになぁ。」
替玉・お化け「まぁまぁ、ところでなんで美香ちゃん金貨を投げれたり、大判をでっかくできたんだろう?」
強欲・元社長「アウルート社長、あれも異能の一つですか?」
アウルート「あれは異能ではありません。高井美香さんがひそかに練習していた手品だそうです。」
「「手品ぁ!?」」
黒幕「そうだよ!催眠のお札以外何にも作ってないからね!はっはっはっ!」
「そうだったの。」
「異能なしでも強かったのかよ。」
美香に驚く参加者たち。
替玉・お化け「しかし、人から恩返しを求めなくても、神様は行いを見ているから、いずれご褒美はやってくるから。俺は見返りは望まないなぁ。」
独善・滅私奉公「成功したとはいえ、見返りとかを求めるのは嫌だなぁ。」
アウルート、黒幕(お前の方が嫌じゃ!)
残り挑戦者38名 挑戦成功者1名 失敗者4人
挑戦者ファイル8
名前 高井美香
年齢 17歳
罪名と肩書 代償・見返り美人
好きな物語 かさじぞう
嫌いな物語 人魚姫
願い事 恩返しが当たり前の世界
実家は世界有数企業の社長令嬢。
恩返しをする人と恩を仇で返す人を国内外でたくさん見てしまい、恩返しを望むようになった。
成績優秀で現在の自由研究のテーマはDNA関係を発表する予定。
ホワイト・ゴッド・シャインがスカウト。