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~涙するにもほどがある!51~

 ただ、ラビアより低いだろう身体には、魔女を連想させる紺色の帽子とローブを着ていて、それが、きらきらと光を反射して所々についている星の装飾がまるで夜空を連想させていた。


 左右からのぞくピンク色の髪の毛は、ツインテールにしているのか帽子の下から左右に流れてきている。可愛らしい顔を自身満々に満ち溢れた表情で魔法少女は、片手を胸に当て結人に言い放った。


「あんたが今の魔王様? 私はシエル・エトワレ! かの偉大な魔法使いルーナ・エトワレの子孫よ。仕方がないからあんたのこと手伝ってあげるわ!」


 その時、珍しくラプソディアがシエルの頭を思いっきり殴り飛ばした。殴られた衝撃で帽子がずれて顔が隠れたのを必死に直しながらシエルは涙を浮かべた顔をラプソディアに向け言い返す。


「ちょっと、何するのよ!」

「結人様に対してその口調をやめなさいと言ったでしょう」


 シエルは赤くなった頬を膨らませて、隣にいるスズネの裾を握りしめ「ラプソディアが怒った~」などと泣きつく始末。スズネは優しく頭を撫でていたが、シエルは結人の方をちらりと見て舌をぺろりとだした。


凄い子が来たなと若干思わなくもなかったが、そういう仕草や喋り方をする者がいても別に腹が立つ訳でもない。しかし、びっくりしたことは否めない。目にまだ涙を浮かべてぶつぶつ言っているのを、ラプソディアはスルーすることにしたようだ。


ティスはティスで、その魔法少女よりも普段はそのようなことをしないラプソディアがげんこつを食らわせたことにびっくりしているようだった。


「ラプソディア殿、彼女達が助っ人で間違いないのだな?」

「ええ、彼女達の力は私が保証します。口は少し悪いですが、彼女は転移魔法が使える魔法使いで貴重な戦力です。以前の奴隷商の洞窟の時には違う仕事をしてもらっていたため加わってもらうことが出来ませんでしたが……。人属側にも魔族側にも転移魔法が使える者は少ないですから」


そこで一度言葉を切り、結人とティスに異論がないことを確かめると、着物のような衣装に身を纏った狐人族のスズネの紹介をする。


「そしてこちらの方が、この間の奴隷売買組織から助け出した折りにいたスズネさんです。彼女は幻影を創り出すことに秀でているようなので、前衛向きではないですが今回のような作戦には重要なポジションになるかと」


 スズネは落ち着いたお姉さんといった感じで礼儀正しく軽く頭を下げている。今もスズネの服にしがみついているシエルはひょっとすると顔を上げるタイミングを逃してしまったのかもしれない。


 などと結人が危惧していたのだが、どうやら徒労に終わったようだ。がばっと勢いよく顔を上げたシエルは、結人の方を向き直り、きらきらと光る瞳を大きく見開き、かなり興奮した様子で早口にまくしたてた。


「結人! このスズネという女、かなり良い匂いがするぞ! あいた!」


 さらにラプソディアの追撃の拳が飛び、シエルの帽子が再びずれ落ち顔が隠れる。帽子の後ろを両手で押さえながらシエルが顔を上げると、再び涙目になっていた。まるでデジャヴだ。


「だからなぜ殴るのだ!」

「あなたには節度というものはないのですか?」


 そこへスズネが申し訳なさそうに助け舟を出してあげる。


「あの、ラプソディア様、私なら大丈夫ですのでどうかその辺で」

「ラプソディア、俺からも頼むよ。正直呼び捨てにされるのはこっちに来てからじゃ新鮮だったし」


 当の二人にこう言われては、ラプソディアも黙らざるをえなかったようだ。その代わりに苦虫をかみつぶしたような顔をしている。


 シエルは結人がかばってくれたことが嬉しかったのか、今度は結人の服に顔をうずめている。そんなシエルの頭を帽子の上からポンポンとあやしてやりながら、もう片方の手でラプソディアの肩を同じようにポンポンと叩いた。


「まあまあ、ラプソディアの気持ちは分かるけど、皆そこまで固くならなくて大丈夫だから」

「結人殿は優しいからな。皆そのやさしさにあまえたくなるのは分かる」


 結人とティス二人の言葉に、一つため息をついたラプソディアは肩をすくめてもう何も言うまいと諦めたようだ。そこでシエルがさっきと同じようにらんらんと輝く顔で結人を見上げラプソディアの意思など全く伝わっていないと思わせるセリフを、さっきと全く同じように叫んだ。


「結人の服も、めちゃくちゃ良い匂いがするぞ!」


 その言葉に、やはりラプソディアの拳が飛んだのは言うまでもなかった。






 場所は城の地下の一室。部屋の中はそれほど広くはなく、物などは何も置いていない。作戦前のぐだぐだ感はさておき、いざ魔法陣を描き始めたシエルは真剣そのものという感じで、少し緊張しているようだったが、自身の身長ほどもある杖を動かす動きには迷いがなく、まるでコンパスでも使っているかのように杖の持ち手側の先端から発せられた光が、スルスルと地面に移動し綺麗な魔法陣を描いていく。


 詳しいことは分からなかったが、この方法で描かれたそれは、地面を(えぐ)ったりしない限り簡単に消えたりはしないということだった。消すにはその魔法陣を描いた本人が魔法陣の解除を行うか、死ぬ時だそうだ。


 描きあがった魔法陣が淡い光を放つ中、ラプソディアがリア救出作戦の再確認をするため皆の方へ向き直ったのだった。


 



~おもちろトーク~

シエル   「おお」

シエル   「こちっも」

シエル   「これもか!」

ラプソディア「すぐに匂いを確かめるのはやめなさい」


いつもお読みいただきありがとうございます。

やっとリア救出手前まで話が進みましたね! 今回の救出作戦は無事成功させることが出来るのでしょうか? 黒騎士が



いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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