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~身勝手にもほどがある!2~

 城の中庭を飛び立ったティス達は、後ろにしがみつくリアの先導の元、ワイバーンに跨り、結人がいる洞窟の上空まで来ていた。馬であれば城から数時間は走らせなければいけない距離であったが、かなりのスピードで飛ぶことができるワイバーンは、半時間ほどでこの距離を移動することができた。


「あそこです!あそこから勇者様の気配を感じます」


 ですが、勇者様から伝わってくるこの感じは・・・

 最後の言葉を胸に押しとどめたリアが、眼下に見える洞窟を指差しながら叫ぶと、ノエルは従順にティスの指示に従い、急降下を開始する。ワイバーンは竜種において比較的小型な種類となり、陸地だけでなく岩の上や、木の枝などにも留まることが出来るため、着陸の場所にそこまで困ることは無い。

 

 洞窟の前が少し開けていたので、ノエルはそこに降り立ち、羽をたたみ、甘えたそうにティスの方を振り返り、クルルルと喉を鳴らす。ティスはノエルから降りる時にぽんぽんっと頭を撫でて飛び降りながらも洞窟から漂ってくる魔物の不穏な気配を強く感じていた。


「この気配、すごく嫌な感じだ。シネラーリア様、ここに勇者様がおられるのですね?」


 振り返るとリアはノエルの背中から半分、ぶら下がるような形で降りようとしていた。今にも落ちそうだ。昔からリアは運動が得意ではなかったからな。締まらないな~などとティスが内心微笑ましく思いながら手を貸してやる。

 

 やっとのことで降りられたリアは少し息を切らしながら、ありがとうを言い、ひとつこくりとうなずく。


「先ほどの質問ですが、間違いありません。この奥から勇者様の気配と邪悪なものの気配、両方感じます」


 ティスは後ろを振り返り、配下である騎士達に指示を出す。


「スティファン隊長の班の者は、私と共に中の捜索に向かう。後の者はこの場にて待機。1時間して戻らない場合は・・・」


 そこまで指示を出し、言葉を切る。先ほどから感じている魔物の気配がどんどんとこちらに近づいてきているのだ。リアがティスにだけ聞こえる声で耳打ちする。


「ティス、先ほどから魔物の気配は感じていますか?」


 その問いかけにティスは手短に「ああ」とだけ返事を返す。


「魔物の気配が強くなるにつれて、勇者様の気配も同じように近づいて来ているんです。私の気のせいであってほしいと願っていたのですが」


 それを聞いたティスの脳裏に嫌な予感が走る。

 魔物の気配と一緒に勇者様の気配も近づいているだと!?可能性として、勇者様と魔物が仲良く歩いているわけではないだろう。つまりそれは、勇者様が魔物に襲われたということなのではないのか?勇者様は生きているのだろうか。


「来ます」


と言う、リアの透き通る声に、全員はっとして洞窟のほうを注視する。


「全員もう一度、空へ!」


 言うが早いか、ティスはリアをひょいと抱え上げ、ノエルに飛び乗り、飛翔する。他の騎士達もそれに続く。

 その直後、洞窟の暗闇からティス達がいた、その場所めがけて結人を食らった魔物が文字通り飛んできた。()()()()()()()()()()()()()

 切り裂かれたおなかからは緑色の体液が大量に流れ出ていて、すでに虫の息なのは一目瞭然だった。芋虫に似た黒い体に鋭い棘のような歯が円形状に並ぶこの魔物はオルゴイだ。


 普段は、洞窟や少しじめっとしているような場所に生息し、口に入る生きたものならばなんでも丸呑みにしてしまう恐ろしい魔物だ。日が当たる場所へはめったに出てくることが無いと文献などには記されていたはずなのだが、それがいったいなぜこのような姿で? ノエルに跨り、思案するティスの疑問はすぐに解決することとなった。洞窟から一人の人間がゆっくりと出てきたからだ。しかし人間とは思えない禍々しい気配に、驚きを隠せない。この気配ははまるで魔物と同じではないか。それにあの右腕は・・・魔物の腕なのか?姿を現した男の腕から手先にかけては、黒光りする鋭利な鉱石を連想させるようなものに覆われていて、触っただけで突き刺さってしまいそうな鋭い棘のようなものが関節の辺りからいくつも上方向に伸びていた。五本の指は人間のそれとは程遠く、ドラゴンや魔人を連想させるような長く鋭い爪が伸びている。


「勇者様」


 ティスの後ろでリアが口を覆いながら、悲嘆の声を上げる。


「あれが勇者様だと!?リア、間違いないのか」


 見た目や感じ取れる気配はまるで化け物のそれと同じだ。


「あのお方から勇者様である力を感じます。ですが・・・」


 リアはそこから先は言葉にしなかった。その代わりに何度もごめんなさいと繰り返しながら口を押さえて、今にも泣きそうになっていた。いくら王国からの命令だったとしても、生真面目なリアの事だ。その思いは、その責任は想像を絶することだろう。


 腕が魔物と化した結人(ゆうと)の片側の瞳は赤く染まり、人間のものとは明らかに違う。そんな結人はティスたちの方を見上げて、にやりと笑う。空気を震わすほどの威圧感に呼吸をすることさえ忘れそうなほどだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 何が具体的に起こったのか、気になり、知りたくなる流れでとても面白かったです。おおよそのことは分かるのですが、まだ、それぞれの人物たちが持っている情報がピタッと嵌っていないところが良いですね…
[良い点] まさかの主人公が魔物化するとは……!! 以外にもありがちな展開ですが、序盤での魔物化は新しいですね。彼がどう物語を駆けていくのかとても楽しみですね。今後の展開にも期待しています! [気にな…
[良い点] キャー、素敵です。何が?ティスが、です♪動揺してもおかしくない状況なのに毅然としていて…カッコイイ。それにしても…結人に何があったのか…ゆるふわさんは『ヒキ』を作るのが上手いですね! [一…
2021/09/06 20:25 退会済み
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