~涙するにもほどがある!19~
リアに似た人物が連れ去られるのを見たという悪魔の話を聞くためにベッドから立ち上がろうとしたところで、結人は強い目眩に襲われてよろめいた所をティスに支えられた。
「結人殿、焦る気持ちは分かるがひとまず落ち着け。その魔族が受けた情報によるとリアと思しきその人物は今なお牢屋に閉じ込められているようだ。我々の読み通り、リアの命を取るつもりはないのだろう。まずはお前が動けるようになることが第一だ」
確かにティスの言う通りだとは思うが、今こうしている間にもリアは……と思うと居ても立ってもいられない気持ちに襲われるのを無理矢理押し殺す。
「ひとまず五日も眠っておられたのです。お食事と栄養ドリンクをお持ちいたします」
ラプソディアの意外な、しかし聞きなれた一言に驚きのあまり考えていたことなど何もかもふっとんだ。
「栄養ドリンクなんてあるの!?」
思わず昔懐かしい言葉に耳を疑う結人だったが、よくよく考えてみればこの世界に来てからまだ数週間くらいしかたっていないのだ。知らないことの方が多いに決まっている。
「魔族特性の栄養ドリンクです。滋養強壮効果がありますよ」
いっそお前の美貌なら某鷲のマークのCMにでも応募してみればいいんじゃないかと心の底から思った結人だった。
ラビアが食事を持ってきてくれるという言葉はすごくありがたかったが、じっと待っているだけの気分にはなれずトラべザリアと呼ばれる間へ歩いて向かうことにした。さっきの部屋とはまた別の王室に運んでもらうことも出来るようだったが、魔王となった今、この城やほかの魔族のことなどを少しでも知っておきたかった。途中でラビアはリアの行方を知っているかもしれないという魔物を連れてきてくれるということで、別行動となった。
結人自身魔王になったという自覚は全くないままだったが、たまに出くわす魔族たちは皆一様に頭を下げ、口をそろえて「魔王様」と呼んでくるものだからどう反応していいのか皆目わからずにいた。今も廊下ですれ違いざま、頭は牛で身体は筋肉隆々という出で立ちのミノタウロスという魔族に頭を下げられ愛想笑いで手を振ったところだった。
「ティス、これって堂々としていればいいんだよね? どうもなれなくて」
「まあ嫌でも慣れてくるだろう。皆がこれほど敬意を示すのならば、それにこたえてやるのが王の務めというものだ」
その会話を聞いていたラプソディアは少し嬉しくなったのか、軽く手を打ち合わせ拍手をした。
「さすがは王宮の騎士長様だ。王族がどういったものかよくご理解されている。まあ人間界とは少し違う点もいくつかございますが、結人様ならきっと臨機応変に立ち回れるようになりますよ」
それでもすっきりとしない結人にラプソディアは苦笑する。
「もしどうしても嫌なようでしたら、一言皆にご命令すればいいだけですよ! 結人様は魔王なのですから」
そんなこんなでトラべザリアに到着した。結人達は開け放された十メートルはあろうかという大扉をくぐった。なんでもここの扉はいつでも開放しているらしく、好きな時に出入りして構わないとのことだった。中は縦長の机がいくつか並べられてあり、その奥にバイキング形式なのか食べ物がずらりとならんでいた。ここからではよくわからなかったが、どれもおいしそうな色合いをしている。その奥では緑色のトカゲのような姿の魔族がしろいエプロンを着けて忙しそうに動き回っていた。今何時くらいなのか分からないが、数人の魔族がちらほら見えるだけでかなり空いていた。
「バイキング形式なんだ! これなら好きなもの食べられるからいいね」
「ああ。私も毎回ここで食べているが、なかなかに魔族の食事もおいしいぞ」
結人が寝ていた間にティスは幾度もここトラべザリアへ来ては食事をしていたようで、自ら率先して食べ物の横に並ぶお盆や食器を取りに向かった。彼女もすっかりここの生活に馴染んできているようだ。結人やラプソディアもそのあとに続く。ほんとに並んでいる料理以外は日本と変わらない形式に少し驚いた。お盆に食器を乗せながらラプソディアが結人に尋ねる。
「結人様はお嫌いなものはないのですか?」
「あー、俺ウリ系が少し苦手なんだよね。あの独特の匂いとか。けど、こっちで何があるのかいまいち分かってないからなんとも。というか、こっちに来てから食べたものってあの丸い形のパンと、チョコレートに似たものだけだな」
ラプソディアはチョコレートという聞きなれない単語に少し興味を惹かれたようだったが、結人が料理の方に体を向けたので自然とそちらについていく形となった。
「では、簡単に料理のご説明をした方がよろしいですね」
「そうだね。まあ食わず嫌いはいけないことだと思うけど、近くで見るとおいしそうな料理から見た目すごいものまで色々あるみたいだから」
そうなのだ。遠目からではわからなかったが、近くで料理を覗き込むと日本にいたときによく食べていたチンジャオロース風なものから、野菜の中に目玉と思しきものがゴロゴロと入っているようなものまで色々とあった。結人は心の中であの目玉の料理だけは食べたくないなと固く誓ったのだった。
~おもちろトーク~
ラプソディア「ふぁいとー」
ラビア 「い、いっぱつっ、です!」
ティス 「……結人はいったい何をやらせたいんだ」
いつもお読みいただきありがとうございます。
今作いかがだったでしょうか?
私としては魔界の栄養ドリンクぜひとも飲んでみたいですね(笑)!
GWですね! 皆さんはどうお過ごしですか?
お仕事の方もそうでない方も、コロナ感染対策をしっかりと守り楽しい週にしましょうね!
この作品では、「こんなストーリーが読んでみたい」、「この人とこの人の絡みが見てみたい」などといった読者様のお声を募集しております!
また、個人的な質問などもお応えできる範囲でお応えいたしますので、お気軽にご感想などお寄せください。
今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。





