~無理ゲーにもほどがある!5~
結人は、骨と思しき足に当たる硬いそれを両手でぐっと握る。骨であるならそんな簡単に折れたりするはずが無いと思い、めいっぱい力んだのだがそれはあっさりと抜けてしまい、危うく胃酸の中へ倒れこむところだった。
暗闇の中、手探りで抜けたそれの形をなぞっていく。
すべすべとした石のような感触なのだが、ところどころ鋭利な刃物のように鋭くなっているのが分かる。大きさは掌くらいだ。
「骨ではなさそうだけど、こんなものが刺さっていただなんて。この尖っている部分で肉を切り裂けないかな?」
やれることが限られている中で、こんなものを見つけられたのは非常に運がいいと思う。肉壁を思いっきり切り裂いてやろうと握っている腕を思いっきり振り上げたのだが、辺りがぼんやりと明るく、目の前の肉壁がふと見えることに気がつく。
さっきまで真っ暗で何も見えなかったのだが、今は肉壁が見える程度に明るいのだ。不思議に思い、手に持つその石を見上げると、ぼんやり紫色の光を発していて、向こうが透けているようだった。
「まるで宝石みたいだ」
昔買ってもらった図鑑の中に紫色の宝石があったことを思い出しながら、あまりの美しさにしばらく見とれていたほどだった。しかしここは胃の中。ゆっくりしている余裕は無い。
結人は今度こそ肉壁を切り裂き、ここから出てやるという思いで腕を振り上げ、思いっきり振り下ろした。一瞬肉が避けるような感覚があったような気がしたのだが、その後の感触が分からなかった。
もう一度、より鋭利な部分で切り裂いてやろうと手で握っている石を持ち直そうとして驚愕した。掌ほどの大きさがあった石が、どんどん掌に吸い込まれるようにして、すでに半分ほどの大きさしか残っていなかったのだ。
これがマジックだったなら、「ハンドパワーです」で有名になったマジシャンも顔負けだろう。
いや、そんなことを言っている場合ではない。不思議なことに痛みなどは感じないのだが、感じないからといってそのまま吸い込むのを黙って見ていられるほど結人の肝っ玉は太くない。
「いやいや、まてまてまて! 俺の手どうなっちゃってんの!?」
石を握っていなかったもう片方の手でどうにか紫色に光る石を掌から取り出そうと悪戦苦闘してみるが、いっこうに抜ける気配は無い。それどころか、どんどんと手の中に吸い込まれていき、最後には完全に石の姿が見えなくなり、周囲はまた暗闇に包まれたのだった。





