~涙するにもほどがある!14~
ラプソディアにそんな爽やかに魔王になったと言われてもなにがどう変わったのか結人自身わからないまま、ラビアの頭を無意識に撫で続けていた。ラビアの髪はサラサラでとても触り心地がよかったからだ。そのせいか、ラビアは顔を真っ赤にさせたまま微動だにしない。
「俺、魔王になった自覚がないんだけど、どこか変わった?」
ティスや他のものに尋ねながら、勇者だと言われた時にも自覚などなかったことを思い出す。ひょっとしたらそんなものなのかもしれないなどと、どこか心の中で納得している自分がいた。
「変わったと言えば変わりましたよ。そうですね、順を追って何があったのかご説明します。あの、その前に、そろそろラビアを解放してあげては?」
「わっ、ご、ごめんよ」
ずっと無意識でひたすら撫でていたせいで、ラビアは今にも倒れるのではないかと思うくらい顔を赤くしていた。結人は急いで手を放す。ラプソディアが止めてくれなければ触り心地のいい髪をいつまでも撫でていたかもしれない。ラビアは一歩下がりながら大丈夫ですと首を縦にぶんぶん振った。
ラプソディアはティスの立場を気にかけて「あなた様がご説明しますか?」と気を使ってくれたが、ティスは首を横に振りラプソディアに説明を委ねた。
「そうですね。どこから話したものか……。魔王様はどこまで記憶にございますか?」
結人はまだ少し痛む頭で少し考えてゆっくりと口を開く。
「俺が覚えているのは、ラビアに戻ってくるからって約束したあたりだ。そこらへんから記憶がないんだと思う」
「ということは、やはり結晶が入り込んだ辺りからですね。ではそこからご説明します」
結人の記憶はそこまでだった。リガーレの力を封じた結晶は指先に吸い込まれるように完全に姿をなくし、すさまじいオルクスの奔流が結人の身体を包み込み、ここにいる誰もを圧倒させた。天井付近にあった窓ガラスは割れて、吊るしてあったシャンデリアは落下し木っ端みじんとなる。まるで台風か竜巻がその部屋で荒れ狂っているかのようなすさまじさだった。その壮絶なオルクスのあまりの威力にラビアはあっという間に部屋の隅まで吹き飛ばされ、ティスは必死に結人にしがみついていたが耐えきれず、飛ばされそうになったところを魔法剣カレンデュラを床に突き立て何とか耐え忍んでいた。
あっという間に結人の両腕が黒曜石のように硬く変化し、ひじの当たりからは反りかえった鋭いとげを連想させるような形へと姿を変える。爪は魔物を連想させるような鋭さを増していき、目は赤く染まり明らかに人間のものではなくなる。ラプソディアは結人が暴走して誰かを傷つけないよう彼の身体をしっかりと抑え込み、暴走するオルクスを何とかコントロールできないかと自分のオルクスを同調させようと必死だった。「誰も傷つけたくない」それが魔王様の、結人の望みだから。
ラプソディアのオルクス量もかなりのものなのだが、それでも魔王であったリガーレの、今の結人のオルクスの量には到底及ばず同調させることがなかなかできないでいた。結人は苦しいのか、声にならない声で呻き、咆哮を上げる。その圧倒的な威圧感に失神をする魔族までいる始末だ。
「くっ……さすが、魔王陛下です。私のオルクス量では……歯が立たない」
結人が暴れる力もすさまじく、がっしりと抑えているラプソディアがじりじりと押されるほどだった。この荒れ狂うオルクスの暴走の中、ズシズシと歩いてやってきたのは三メートルくらいはあるのではないかと思えるほどに大きい魔族で、骨が露出した体の内側には筋肉が見えていて、頭からは闘牛を連想させる角が生えている。彼はものすごい力で暴れようとする結人をラプソディアに変わりがっしりと抑え込み、低くくぐもった声で口を開く。
「ラプソディア、お前はオルクスを同調できないかだけに集中しろ」
「ストラティゴス、ご助力感謝します。そのまま抑え込んでいてください」
ラプソディアは可能な限り自分のオルクスとかつての魔王だったリガーレのオルクスを同調させコントロールできないか試みる。正直、魔王様のオルクスがここまで圧倒的だなんて思っていませんでしたね。これは、何度やっても私が押し負けてしまう。
何回目の挑戦か分からないが、ラプソディアがどうにかできないかと必死に同調させようとしたその時だった。荒れ狂っていたオルクスが爆発を一気に吸収するかのように結人の内側へ吸い込まれ、猛威を振るっていたオルクスの暴走が嘘だったかのように辺りは一気に静けさと戸惑いに満たされた。ラプソディアがうまくやってくれたのかと皆が思い、ストラティゴスがラプソディアに尋ねた。
「ラプソディア、うまくいったのか?」
「いえ、私にも……何が起こったのか……」
太く低い声で骨と筋肉の見えたストラティゴスが問いかけるも、ラプソディアにはわからない。ただ、ストラティゴスに抑えられている結人はぐったりとしていてピクリとも動かなかった。この場にいる全員が死んだのでは? という懸念に捕らわれる中、ラプソディアが動くよりも先にティスが結人の前へと回り込み口元へ手を当てる。どうやら息はしているようだ。
「よかった。どうやら生きてはいるようだ。……結人!?」
ほっとするティスを差し置いて、ぐったりとしていた結人は一瞬びくりと痙攣したかと思うと、そのまま宙に舞い上がったのだった。
~おもちろトーク~
ラプソディア 「ストラティゴス、やっとあなたの出番が来ましたね」
ストラティゴス「ああ、いつぞや出番ではないところで登場してしまうという失態があったからな」
結人 「作者は何をどう間違ったのだろう(笑)」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
いや、おもちろトークで話題が出たように、ストラティゴス、違う話数で出てきてたことがあったんですよ(笑)すでに訂正はしたのですが、読者の皆様を戸惑わせてしまったのではないかと、今再び謝罪いたします。
私の場合、いくつかストーリーパターンを考えて書いている途中で「やっぱりこっちの方が」となってしまうのが悪い癖なんですよね(;´∀`)できる限りその辺りも読者の皆様にご迷惑をおかけしないように精進していきますので、どうか暖かい目で見守っていただけると幸いです。
いつもブックマークやいいね、ご感想や評価をしていただき誠にありがとうございます。
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今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。





