~涙するにもほどがある!3~
結人自身、イムザの家を飛び出しここへ走ってくる途中で気が付いたのだが、体がやけに軽く、結人の目に映る景色などがスローモーションにでもなったかのように見えていた。
実際にはイラと同化したことにより、結人の肉体に変化が生じ、オルクスが身体能力や視力、聴力といったありとあらゆるものを強化していた。それに、イムザが施してくれた精霊術のおかげでオルクスや魔力の使い方がわかることを結人は感覚で理解することが出来た。
オーガや周りのレッドキャップたちの動きを目で追いながら思う。
「まさか、これほどまで相手の動きが見えるなんて」
それにこのオルクスから結人のイメージで具現化した刀身が真っ黒い刀だが、結人の右側から横殴りにきたオーガの棍棒をバターでも切るかのように滑らかに切り裂くほど恐ろしい切れ味を誇っていた。
棍棒を切られたオーガも驚きで一瞬だけ動きが止まったように見えた隙を結人は逃さない。オーガの腹の高さまで跳躍し、横殴りにオーガの腹を掻っ捌く。
腹を切られ血や内臓物が辺りに噴き出し、身動きすることが出来なくなったオーガが地面に崩れると同時に、三匹のレッドキャップが一斉に牙をむきとびかかってくるが、結人はそれを着地と同時に華麗に宙返りでよける。三匹の魔物からすれば結人が突然目の前から消えたように感じたことだろう。三匹のレッドキャップが重なったところを、足にオルクスを集中させて一気に踏み込み横一線で三匹まとめて両断する。
それを見た他のレッドキャップたちは恐れおののき逃げ出そうと逃走を開始しだした。
「少し試してみるか」
結人は左手を上げ頭で魔法で創った矢をイメージする。そのイメージ通りに魔力でできた光の矢が空中に現れるのを確認してから上げた手を一気に振り下ろす。魔力を操り形成された光の矢が逃げ惑うレッドキャップに飛来するも命中は半分といったところだった。さすがに足を切断され動けないでいたオーガには命中して息の根を止めることはできたが。
「何匹かには逃げられたか」
オルクスを具現化したこの刀はなかなかに良かったが、魔法はもっと練習が必要だな。後は剣技をティスに教えてもらいつつ魔法をリアに習うことが出来たらいうことなしだ。などと体のいいことを少し考えてしまったが、とりあえず二人を守ることが出来てよかった。
リアはティスに寄り添うような形でこちらを見て結人に微笑みかけている。二人のところへ戻ろうと一歩踏み出したところで、身体全体に雷を浴びせられたかのようなとてつもない痛みが走り我慢することが出来ずに思わず膝をつく。眼球も飛び出すのではないかと思うくらいの痛みが走っていて頭も割れそうなほどに痛い。
オルクスを具現化して創り出していた刀も、魔物化させていた腕も集中が途切れると形が維持できなくなりり霧散した。
「結人殿大丈夫か?」
「結人様!?」
心配した二人が駆け寄ってきてくれる。
なんとなくだが、結人は気が付いていた。イラのおかげで色々と身体能力など上がったのかもしれないが、人である結人の身体がそれについてこれなかったのだと。
リアがすかさず「サナーレ」と回復魔法をかけてくれてなんとか立ち上がれる程度になったが、まだ頭は痛いし体中しびれが残っているかのようにびりびりしていたが、あまり二人に心配をかけてはいけないと思い無理に強がって見せた。
「ありがとう。俺はもう大丈夫。それより、リアは怪我とかしてない? ティスはどんな具合? オーガに吹き飛ばされていただろ?」
「私は大丈夫です」
「私もこの服のおかげで骨などは折れてはいないから大丈夫だ。それにリアが魔法で治療してくれたからな。それより結人殿。いったい何があったのだ?」
二人にとっては当然の疑問だろうとも思うが、まずは場所を移したいところだ。
「それも説明するけど、まずはここを離れよう。ここじゃ落ち着いてご飯も食べられない。お腹すいちゃって」
結人はお腹が空いていることを素直に伝えたのだが、そのセリフに二人は再度顔を見合わせ笑い出す。
「結人様が変わられたかと思って心配しましたが、結人様のままでよかったです」
「ああ、ほんとに。だが、食料が今朝食べたパンくらいしか残っていないぞ。服を何とか購入した時点で結人殿の暴走があったから食料まで買えなかったんだ」
結人は周りに倒れている魔物の死体をみて、魔物は食べられないのか? と聞こうかとも思ったが、人型の魔物を結人自身食べる気はしないなと言うのをやめる。
「ここじゃ美味しいものもおいしく食べられる気がしないから」
そうなのだ。ここには腹を裂かれたオーガやらレッドキャップの死体で地獄絵図と化していた。
それにしてもと結人は思う。力を使うたびに毎回こんな風になっていたら、敵のど真ん中で動けなくなった時に終わりだ。まあ敵に囲まれている時点で絶望的なのかもしれないが。どちらにせよ自由に動き回るためには、オルクスをかなり抑える必要がありそうだ。どの程度まで抑えたらいいのかがわからない以上、実際に試すしかないところが辛いところだが。
その時、突如轟音と共に数十メートル先の木々がなぎ倒され砂煙が巻き起こったのだった。
~おもちろトーク~
リア 「結人様、オルクスや魔力で何か食べ物を出すことはできないのですか?」
ティス「確かにな。最後の感じだとたぶん食事はまたお預けだろうからな」
結人 「そんな! これは何が何でも……ねえ、触るだけでスパッと切れそうなパンが出来たんだけど」
いつもお読み頂きありがとうございます☃❄
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平均評価も4.6★と高く、皆様の応援が創作意欲にもつながっており大変感謝いたしております。
結人がやっと主人公らしくなってきましたね。今後結人はどのような道を歩んでいくこととなるのでしょうか? 最後までお付き合いいただければ幸いです。
今後とも「異世界召喚されたはいいが、魔物に食べられました!」をよろしくお願いいたします。





