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~身勝手にもほどがある!18~

 一体、どれくらい森の中を歩いたのだろうか。空高かった日はかなり落ちてきていて、木々の間から届く光は周りを夕暮れ色に染めていた。あれから身体が焼けるような痛みは無く、頭に響いてくる声も聞こえてはいなかったが、結人はかなり疲弊していて、木の根元に凭れるように横になりながら太く大きなその木を見上げ考えていた。


 これ以上誰かを殺すくらいなら、いっそ死んだほうがマシなのではないかと。

 だが、魔物化した鋭利な爪を喉元へ持っていこうとする度に、リアやティスの顔が浮かび、一歩を踏み出すことが出来ないのだった。既にそれだけ深い関わりを持ってしまった。多分、結人が死んだらリアもティスも悲しむだろう。そして逆もまた然りなのである。


 だったら、「この状況をどうにかするしかないじゃないか」と自分に叱咤するのだが、身体は重たく足が鉛にでもなったかのように動いてくれる気配はなく、結人は知らない間に意識を失っていたのだった。


 生暖かい風が髪を揺らす。俺は寝ていたのか? と訝しむも瞼は重たく開こうとしてくれない。

 

 そして再び生暖かい風が結人の髪を揺らした。そこで、はっとして目を開ける。辺りはすっかり夜になっていたのだが、月の明かりが届いてくれているおかげで辺りの様子を窺うことが出来た。窺うことが出来たからこそ、生暖かい風の正体が()()()()()()()


 まるで大きなくちばしを連想させるそれは結人と顔がくっつくのではないかと思わせる距離にあり、その上にある鼻口から息を吐くたびに生暖かい風が結人の髪を揺らしていたのだ。


 そして、さらに目線をあげていくと、大きな顔の左右についた優しそうな、これまた大きな瞳が結人をしっかりと見ていたのだ。

 それは、見上げなければいけないほどに大きく巨大なカメだった。そしてまた生暖かい鼻息が結人の髪を揺らす。


「だぁ〜、わかったから。すこし離れてくれ」


 言葉を理解するとは微塵も思っていないまま、カメの鼻先を押し返す。押し返した右手は魔物化したままだったが、とりあえず自由に動かせることに安堵する。


「そなたからは勇者の匂いと、魔王の匂いがする。相反する二つの匂いをさせているとは、実にふざけたやつじゃ。主様はおぬしのことを気にかけていたようだが、なるほど面白い、わらわも気に入ったぞ。着いてくるがよい」


 突然女性の声で話しかけられて、結人は戸惑った。ここには自分とこの大きな亀しかいないわけで、いったい誰が話しかけて来たのだろうと辺りをキョロキョロと見回してみたが、やはり他には誰もいなかった。


「何をきょろついておる。お前の目の前におるじゃろ」


 目の前と言われ、巨大なカメに視線を戻す。まさかとは思うが、このカメが喋っているのか?


「俺に話しかけているのは、君なのかい?」

「他に誰がおるのじゃ。ふざけるのはそなたの存在だけで十分じゃ。はよ参るぞ」

 

 そう言い残しカメは歩き出したのだが、地面の上をすべるように浮遊している。そして驚いたのが、このカメに実態があるのかないのかは分からないが、物体ががまるでそこにないかのように透過していくのである。


 少しいったところで首だけ振り返り結人が立ち上がるのを待ってくれているようだった。意外と優しいな、などと思いながら背を預けていた木を支えにして何とか立ち上がり、カメのあとをよろよろとついていく。結人のスピードに合わせて移動しながらカメがポツリと口を開いた。


「そういえば、自己紹介がまだじゃったの。わらわはトルチュ。何千年という時を過ごしてきた精霊じゃ。今からお前をわらわが主の下へ連れて行くが、余計なことはするでないぞ。もしも主に何かしようものならわらわがお前のその首を噛み千切ってくれる」


 主とはいったいどんな生き物なのか。結人はごくりとつばを飲み込む。

 今こいつに、いつまた暴走するか分からない俺の状況を伝えておくべきなのだろうか? だがもしそのことを話して危険だと判断されたなら、ここで殺される可能性もあるのではないだろうか。


「おい。そのようなくだらんこと心配せんでもよい。おぬしから魔王のにおいがしている時点で危険と判断して食ろうてやることもできたのじゃが、まだ諦めるには早いとわしは判断した。じゃから、わが主の下へ連れて行く。主もそれを望んでいる」


 最後に、「ま、おぬしの見た目からしてそうとうに怪しいがの」などと付け加えられた。


 心を読まれていたことに一瞬度肝を抜かれそうになったが、なにせカメがしゃべっているのだ。それくらいのことはできるのかもしれない。


「色々と聞きたいこともあるじゃろうが、主に会うまでもうしばらく我慢せい」


 そして誰も踏み込んだことがないのではないかと思えるほど深い深い森の奥へと案内されたのだった。

~おもちろトーク~

結人   

 「小説とかだとよく擬人化できたりするもんだけど、トルチュも人の姿になるのかな・・・・・」


トルチュ 

 「おい、人の背中に甲羅を乗せた美女を想像するでない」


結人

 「人の心読まないで~」


ここまでお読みいただきありがとうございます。

皆様のおかげで、私的にも物語が大きく動き始める入口にやっとたどり着いたのかな?という感じです♪


いままでブックマークや評価などほんとにありがとうございます。

また、今回レビューを二件も書いていただけたことなど、心より感謝申し上げます。

未熟な私ですが、今後とも精進してまいりますので、どうかこれからも応援の程よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新たなキャラ登場で、物語が大きく動く予感がしますね!相反する匂いがする結人…わくわくします! [一言] リアとティス、どうしてるかな…? そんなドキドキ感も残してる辺り、流石ですね〜♪応援…
2021/11/29 14:10 退会済み
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