~身勝手にもほどがある!17~
首にかかるペンダントが壊れたことにより、結人の周りがゆがんで見えるほどの禍々しいオルクスの奔流が結人の体を包み込んでいた。
「我を封印できるとおもったか、おろかな人間の分際で!」と、また頭に直接語りかけてくる声が激怒する。
薄れゆく意識の中、こいつをどうにかしなければリアだけでなく、ここら一帯にある命全て奪ってしまうだろうことは本能的にわかる。
例の身体の内側が焼け付くような痛みに耐えながらどうにか言葉を発する。
「リア、に・げ・ろ」
リアを振り返った結人の片瞳は赤く染まり、腕は黒曜石のような硬い物質に変わる。爪は鋭く、関節部分からは鋭いとげを連想させるような突起が天へと貫くような形へと変貌する。
「結人様、今お助けします! カデナ」
リアは臆することなく駆け寄り、呪文を詠唱する。
結人の周りにいくつもの魔法陣が現れ、そこから伸びた鎖が結人を捕縛しようと伸びる。だがしかし結人に絡みつくように伸びた鎖は、禍々しい気にはじかれ鎖を構築した魔法陣ごと吹き飛ばした。
「そんな」
リアは驚愕した。大型の魔獣ですら拘束することができる魔法だと言うのに、魔法陣ごと力でねじ伏せるかのようにかき消されるだなんてことはあってはならないのだ。
結人の頭の中では、鎖をはじいたときに声の主がものすごく憤っているのが分かった。このままではこいつがリアを殺してしまいかねない。どうにかしてここから放れようと必死にもがいてみるが身体はいうことを利いてくれなかった。
と、突然、先ほど矢が飛んできた茂みの中から7人の男たちが情けない悲鳴を上げながら立ち上がった。見るからに私たちは野盗ですといわんばかりの格好をしている。
どうやら今夜にでもこの村を襲おうと計画し隠れていたのだろう。皆結人を見て各々に化け物だ、悪霊だなどと騒ぎたて後ずさりし逃走し始める。中には腰を抜かし動けないものも見受けられた。だがしかし、それが功を奏したといっていいのかは分からないが、結人の身体を奪い取ろうとする声の主の注意がリアから盗賊たちへとそれた。
結人の意思とは関係なしに結人の身体は跳躍し、10メートルはあろうかという盗賊たちとの距離をあっという間に詰めて、逃げ遅れた一人の盗賊の首を、形が変貌した鋭いつめでかききった。
首から血しぶきを上げながら男の身体はその場に崩れ落ちる。その横で腰を抜かしていた男に手が伸びる。「やめろ・・・・・・やめてくれ・・・・・・野盗とはいえ彼もまた人間なんだ」
だがそんな結人の思いさえあざけり笑う声が脳に直接響く。「そうだ人間だ。人間は俺より弱い。弱いものが俺を化け物とののしることは断じて許さん」腰の抜けた男の喉をつかみ持ち上げる。地面を離れた足がばたばたと苦しそうにもがいていたが、急に動かなくなる。結人ははっとして男に目をやると、首を絞めていた指が力を入れたのだろう、男の首は明らかにへし折れているのが分かった。
もう、やめてくれ。これ以上はいやだ。身体は焼けるように熱く、いまだ自由は利かない。だが心は結人のままなのだ。その思いが涙となり赤く染まっていないもう片方の瞳からあふれ、流れた涙が頬を伝い砕けた宝石がはまっていたペンダントに吸い込まれるように落ちて消える。
すると、ペンダントを媒介に聖なる気が結人を包み込みんだ。身体の内側から焼けるような痛みは消え、身体の自由が利くようになる。結人の腕や瞳はそのままだったが、頭に直接語りかけていた声も聞こえなくなった。
これは、チャンスだ! 少しでも人がいないところへ離れて、これ以上犠牲は出さないようにしないと。結人は震える足でよたよたと歩き始める。村のほうで警鐘がなっているのを耳の奥で感じながら。
「結人様、どこに、いかれるのですか」
リアだった。彼女が悲痛な面持ちで声を限りに叫んでいる。ああ、彼女には笑っていてほしい。結人は心のそこからそう思った。だが、口をついて出た声は明らかに結人の声とは違う、地を這うような恐ろしい声だった。
「来るな。リアまで殺したくない」
その言葉は一種の呪詛となり、リアの身体を縛り上げる。
必死に抗っているのだろうが、どうすることもできずに動くことができないリアの元に、ティスが買ってきた荷物を腕の中に収めた状態で駆け寄るのが見えた。
リアには、ティスがついていれば大丈夫だ。そう確信した結人はまた歩き出す。街道沿いは人に会う可能性がある。だから、いくなら森の奥だ。身体の自由が利く間に少しでも遠くへという信念の元、きしむ身体を引きずるように一歩また一歩と歩いたのだった。
~おもちろトーク~
リア 「なかなか大変なことになってきましたね」
結人 「ほんとにね。 ところでティスはどうやって村に入ったの?」
ティス「顔パスだ!」
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これは「自分にしか書けない物語なんだ」という思いのもと、これからも精進しつつ執筆してまいりますので、どうか優しい目で見守っていただけると幸いです。
今後とも「異世界召喚されたはいいが、魔物に食べられました!」をよろしくお願いいたします。





