~身勝手にもほどがある!14~
何でも、その知人というのは、リアが幼い頃、誘拐されそうになったところを助けてくれた精霊使いなのだそうだ。かなり不思議な雰囲気の老人で、幾つもの光る玉と会話していたということだった。
「ですが困ったことに、その方が今どこに住んでいるのか知らないのです」
ティスはリアが誘拐されかけていたことを初めて聞いたようだった。
「それは初耳だ。王国や教会に知られていたら大事になっていた話だな。そうだな・・・・・・その精霊使いの情報収集も踏まえて、この近くの村に行かないか? 私達もこの格好では目立ちすぎるし、結人殿もいつまでも破れたままの服というわけにもいかないだろう。顔を隠せるフードと、結人とリアには何か武器も欲しいところだ」
そうなのだ。結人が今着ている服はあのオルゴイという魔物に食われた時の服だったので、あちこち破れていて、リアに枕代わりに貸していた上の服も、実は見るに絶えない姿となっていた。しかも前の世界で寝巻にしていたジャージときている。一度魔物化した右腕に至っては、肩から下の袖の部分が無い状態だった。
「俺も新しい服は欲しいかな。それよりさ、村の中とか人が大勢いるようなところで二人の名前とか普通に呼んで大丈夫なの? 俺達を連れ出してくれたことにはすごく感謝してるけど、そのせいでティスも城の連中に見つかったらまずい立場だと思うし、リアはリアで俺と同様、罪人扱い中だろうし」
ティスは真剣な面持ちでひとつこくんと頷く。
「ああ。それを確かめるためにも一度近くの村を探っておきたい。私達が王城を飛び立ってから一晩経った。早ければ城を出立した早馬が近隣の村にお触れを出し回っているはずだ」
お触れって、すなわち某アニメなどで有名な顔写真の下にWANTEDって書かれたようなやつだよな。俺、麦藁の帽子をかぶってもなけりゃ、髪が緑でもないぞ。自分の気を紛らわそうとあえて違う想像をしてみたのだが、予想以上に不安が顔に出ていたのか、リアが結人の手を握り、大丈夫ですよと軽く微笑む。彼女のこういう笑顔はなぜか心がほっと落ち着く。
「ありがとう。俺も二人に迷惑かけないよう、色々と強くなるから。改めて二人ともこれからよろしくな」
少し照れくさくもあるが、言わずに後悔するより、こういうことはちゃんと伝えておきたい性質なのである。リアは優しく微笑んだまま、よろしくお願いしますと言い、ティスは少し恥ずかしそうにしながら、よろしくとだけ答えた。
「さあ、予定が少しずれたが結人殿。約束どおり手合わせといきますか」
さっきの恥ずかしさを紛らわしたかったのか、ティスはにやりと笑いながら立ち上がる。
「もともとそのつもりだったからね。ところで俺は武器とかどうしたらいい?」
「そうだな。私はこの剣があるから良いとして」
ティスは腰に下げている魔法剣カレンデュラを抜き放つ。言い伝えでは、太陽から落ちてきた雫が剣に変わったといわれている。銀色の柄部分から伸びている細身の刀身部分は、魔力を纏い、薄っすらと赤色に輝いていた。
というより、そんな物騒な物、俺からしたら全然良くないのだが!
ティスは辺りをきょろきょろと見渡し、少し離れたところに落ちている長さ一メートルよりは少し長いかなという枝を拾ってきて、リアに差し出す。
「リア、すまんがこれに強化魔法を施してくれ」
はい、わかりました。と、頷きながら、差し出された枝に向かって両手を広げ、目を瞑る。
「デューロ」
魔法をかけられた枝が一瞬だけ淡く光ったような気がした。
「はい、これで鉄、とまではいきませんが、それに近いくらいには堅くなっているかとおもいますよ」
手渡された枝は確かに芯が通ったかのように堅いものへと変わっていた。という感じで、リアがさらっと説明してくれたわけだが、鉄に近いくらいって、これはこれでやばいんじゃ・・・・・・。流石に助けてもらった命の恩人を鉄パイプで殴り殺したなどといったら冗談では済まない。
「結人殿、お言葉だが、素人の剣が当たるほど私を甘く見てもらっては困る」
確かにそれもそうか、と妙なところで納得する。それよりも、さっきからどうも顔に出ているのか心を読まれているような気がするのは気のせいなのだろうか?
それでは私が立会人になりますね。とリアが少し離れたところへ移動する。ティスと結人も向かい合いながらお互いに距離をとった。
「結人殿、とりあえず殺す気で打ち込んで来て欲しい。ここにある、ありとあらゆる物を武器にしても構わない。今、目の前にいる私はお前を殺そうとする敵だ」
すごい気迫だ。向かい合っただけでティスが強いという感覚が空気を震わせ伝わってくる。これは、俺も本気でかからなければほんとに一刀両断されかねないのではないだろうか。
「それでは、お互い相手を殺さない程度に始めてください」
リアの合図とともに結人は地を蹴りティスに向かっていったのだった。
~おもちろトーク~
リア 「結人様は以前、弓の経験がおありとのことでしたが、剣は?」
結人 「剣は子供の頃プラスチックのおもちゃを振り回してたくらいかな」
ティス「プラスチックとは聞きなれないが、それは乙女チックみたいなものか?」
結人 (乙女チックって言葉、この世界にもあるのか!?)
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