~身勝手にもほどがある!12~
その夜は三人で、色々と語ったが、結局出てくる国の名前や人の名前以外、あのゲームとの接点は見つけることができなかった。本当に単なる偶然なのだろうか?
色々とあって疲れていたのか、そのうちにリアが焚き木のそばで丸まるようにして、静かな寝息を立て始めた。普段はベッドで寝ているだろうから、この硬い地面の上で横になるのはかわいそうだと思い、結人は自分の服を脱ぎシャツ一枚になり、リアの頭の下にそっとすけてやる。流石にシャツ一枚だと少し肌寒くも感じたが、火のおかげでそこまで寒いとも思わなかった。
それを見たティスは、一度頭を下げる。
「ありがとう。本来であれば勇者である結人殿にこのような行いをしてもらうわけにはいけないのですが・・・。私が服を脱いでしまうと、その、肌着姿になってしまい・・・いや、勇者様のご命令とあらば、よ、喜んで、ぬ、脱がせていただくが・・・その」
などと真剣な顔で言ってくる、ティスの顔は焚き木に照らされていてもわかるくらい真っ赤だった。
「俺は脱げなんて、言わないから安心して。それに、これは俺がしたくてやったことだから」
それを聞いたティスがどこかほっとした表情で胸を撫で下ろす。
「結人殿は本当に優しいのだな。元の世界ではさぞ異性にモテたのではないか?」
「それがさ、彼女いたことないんだよね。やりたいことに没頭しすぎてたっていうのもあって」
「ならば、私なぞはどうだ?」
ずいっとこちらに身を乗り出すようにしながら、とんでもないことをサラッと言ってくる。焚き木に照らされたティスは、何ともいえない艶っぽさがあった。結人がどう返したものか、色々迷っていると、ティスは少し意地の悪い笑みを浮かべ「冗談だ」と言う。からかわれたのか? それにしても、心臓に悪い。
「しかし、没頭できるものがあるのは良いことだ。いったい何に没頭していたのだ?」
ティスが話題を変えてくれたので、内心で胸を撫で下ろす。
「その時々で違うんだけど、十四、五歳くらいまでは弓道やったりもしてたし、最近だとゲームとかかな」
ゲームと言う聞きなれない単語にティスは首を傾げながらも、子どもの頃、弓道をやっていたという言葉に惹かれたらしい。
「結人殿は弓の道を歩まれていたのか。やはり戦いに身を置く運命だったのだな。もし良かったら、明日の朝、私と勝負してみないか?」
確かに、この世界で生き抜くためなら剣のひとつも扱えたほうがいいだろうと思う。弓であればなお良かったが、贅沢も言ってはいられないだろう。
「それは、ありがたく受けさせてもらうよ。だけど、俺は素人同然だから手加減してもらえるとありがたいかな」
最後の言葉は、どうあがいてもティスに勝てる気がしないという思いからの言葉だったのだが、ティスは高らかに笑い飛ばした。
「それじゃあ、明日を楽しみにしておくよ。そろそろ結人殿も寝たほうがいいだろう。ノエルがいるから魔物も寄って来ないだろうし、それに見張りなら私もしている」
確かにティスの言うとおり、さっきからやたらと睡魔が襲ってきていた。結人はその言葉に素直に甘えることにして、焚き木のそばで体を丸めて火の暖かさとたまに薪が爆ぜる音を聴きながら、深い眠りに落ちていったのだった。
リア 「それにしても、結人様の服で寝ていたなんて至福です」
ティス「なんだったら結人殿にひざまくらでもしてもらってはどうだ?」
結人 「・・・いや、それは俺が恥ずかしい///」
今回は恐縮ではございますが、諸事情により話が少し短めとなっております。
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今後とも「異世界召喚されたはいいが、魔物に食べられました!」をよろしくお願いいたします。





