~身勝手にもほどがある!9~
さっき自分の牢屋を開錠した時に身体がコツをつかんだのか、リアの牢屋の扉にロザリオを近づけただけで簡単に聖魔法を発動させることに成功し、何の苦労をすることもなく牢屋を開錠することが出来た。結人は中へ入りながらロザリオをリアに返す。
「流石、結人様です。一回やっただけでここまで魔力をコントロール出来るようになるなんて。後は、それの応用と結人様のイメージ次第で、火、水、土、風の四大元素に加え、光、闇、全ての属性魔法を扱えるようになるはずです」
胸の前で両手をグーの形で軽く握り、期待にらんらんと瞳を輝かせながら、そんなことを言ってくるリアはとても純粋で可愛らしかった。そんな彼女と二人、無事に脱獄するためにもぜひとも魔法を使えるようになりたい。一応断言しておくが、目の前の美少女に褒められたからだとか、美少女が期待してくれているからなどという不埒な考えから魔法を使えるようになりたい訳ではない。
「応用って具体的にどうしたらいいの?」
「先ほどは魔具という手助けを用いてだったので手に魔力を流すイメージだけで魔法を扱うことが出来たと思います。それの応用で、例えば掌に火の玉を生み出したいとすると、自分の中に流れる火の魔力を引っ張り出してくるよう魔力をコントロールしながら、それを玉にしたいという明確なイメージが必要になってくるのです。そしてそれを発動させる引き金が呪文となってきます。私が結人様を拘束するときに使った「カデナ」なんかがそうですね! 人にはそれぞれ生まれながらにして各属性の適正の有無が分かれていて、一つも属性を持っていない人は当然魔法を使うことは出来ません。ですが、勇者である結人様は全属性に適正があるはずですので、努力次第で全ての魔法が扱えるようになるはずですよ」
流石、勇者と名のつくだけの事はあるが、何にせよ、今の結人の強さは魔法が使えない一般人と同程度なので本当に自分の頑張り次第なのだろうと思う。
「とりあえず、こっちの牢屋に俺がいるのがばれるとまずいから、見回りが来るまでおとなしく自分の牢に戻っておくよ。リア、必ず上手くいくと信じて二人で無事にここを抜け出そう」
その言葉にリアはどこか物悲しそうな顔を一瞬見せた。それもそうだろう。この歳にして国の最高司祭なのだ。ついてきてくれる信者や国のことなど気がかりとなるものはさぞ多いのだろうと思う。だがリアは、すぐに気を引き締めた顔で一つ大きく頷いたのだった。
どのくらい時間が経ったのだろう。もうそろそろだろうか。待っている間、時間は物凄く長く感じる上に、緊張や不安で腹時計などは全く当てにならなくなっていた。そんな中、石床を革靴で歩くような響きの良い足音が遠くの方で聞こえ始め、それが次第に牢屋の方へと近づいて来るのが分かった。
いよいよ決行の時が来た。結人は無意識の内にそう確信した。緊張のあまり手は汗ばむし、喉はからからだったが、そんなことをいっている場合ではないと気を引き締めなおしつつも、見回りに何か企んでいるのではないかと悟られないように、一生懸命に平静を装ったのだった。
時を同じくして王城の一室で、いつもの人を小馬鹿にするような態度も、自分のちょび髭を撫で回す仕草もせず、クシロス卿は胸に手を当てて跪き、誰かと話をしているようだった。しかし、その部屋にクシロス卿以外の人影はない。ドアには人払いの呪文と、盗聴防止用の結界まで施している。
「あの小娘を処刑前にあなた様の前にお連れいたします。あの娘の魔力は本物。必ずや、あなた様に気に入っていただけるかと」
「はい。勇者は確実に処刑いたします。そうなればあなた様の復活もより強固なものとなりましょう」
クシロス卿はしきりに頷いたり、一人言のような会話を誰もいない部屋の中、しばらくの間続けていたのだった。
~おもちろトーク~
リア「それにしてもクシロス卿、ひとりでぶつぶつ言ってちょっと怪しいにもほどが。ひょっと して私みたいに幽霊にお友達でもいるのかしら?」
結人・ティス「え、リア幽霊の友だちがるの!!?」
応援、ブックマーク、感想などしていただいた皆様日々感謝です!
今後とも「異世界召喚されたはいいが、魔物に食べられました!」をよろしくお願いいたします。





