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~身勝手にもほどがある!8~

 思っていたよりは意外と早くにリアを説得することが出来た。

 結人の処刑がいつ行われるか、分からない以上、行動するなら早い方がいいということになり、「決行は今夜、看守が見回りに来たタイミングで」ということになった。


 その時に備えて牢屋の鍵を開けておくことにしたのだが、ロザリオをいったいどうやって鍵穴にはめたらいいというのだろうか。


「このロザリオ、どうやって使うの?」


 結人は、十字架の下の部分を鍵穴に挿してみたりしたが、どうあがいても先端しか入らない。


「それは聖魔力を感じ取って魔法が発動するようになっています。聖魔力を扱えるものは極少数ではございますが、勇者である結人様なら全属性の力が扱えるはず。ただ、結人様の場合、魔族のみが持つオルクスも一緒に併せ持っているため力の使用に少しコツが必要なのかも知れません。体の内側に意識を集中してみてください」


 結人は目を閉じ、いわれるがまま意識を集中する。

 もっと深いところへ集中を、というアドバイスの元、意識を集中していると、しばらくしてぼんやりと二つの炎のような揺らぎを感じることが出来た。この揺らぎを例えるなら、一つは黒々としていて足を入れたらどこまでも飲み込まれて抜け出すことが出来ないような揺らぎ。もう片方はそれとは真逆で、さらさらとした清らかな水を連想させるようなどこまでも心地よい揺らぎであった。この二つの揺らぎはお互いに均衡しているようだった。結人はこの揺らぎを見失わないように意識を集中させたままリアに尋ねた。

 

「リア、身体の中で二つの揺らぎを感じる。たぶんこれがそうなんだと思うんだけど、この後はどうしたらいい」

「魔物が持つオルクスはドロドロとしている感じなのですが、そうではない方の力だけを指先まで流すようなイメージで持って来てください」


 結人は言われるがままにイメージして、さらさらとした力を流そうとするのだが、黒い炎がそれを邪魔するかのようにうねるのが分かる。

 ならばこのような漠然としたものではなく、自分が知っているようなものにイメージを置き換えてみてはどうだろうか。例えば、水と油だ。けして交わることのない二つの液体に、境目を作るような感じでさらさらとした水で壁を創る。壁にしていない残りの魔力をロザリオを持っている手へと流すイメージで。すると、ロザリオが一瞬だけ輝き、鍵が開く金属音が聞こえた。

 少し扉を押してみるとゆっくりと向こう側に動いた。やった!と叫びたいのを看守が来たら大変だ、と必死に思いとどまったのだが、嬉しさのあまりついついガッツポーズをしてしまう。


「結人様、鍵を開けることが出来たのですね」

「うん。これもリアのおかげだ。これが魔法なの?」

「はい。今のは聖属性の魔法です。そのロザリオのように力を流し込むだけで魔法が発動する道具を魔法具と呼びます。魔法具はその属性の力を扱える者であれば誰でも簡単に使用することが出来るんです。それにしても、こんなにも早く魔法操作のコツをお掴みになるとは驚きです。さすがは勇者様ですね」


 その言葉は、例えお世辞であっても嬉しかった。地球には魔法はなく、結人にとって紛れもなく初めての魔法だったのだから。


「うん。自分の中に感じる二つの力を水と油に例えてみたんだ」


 それを聞いたリアはくすくすと可笑しそうに笑い出した。


「あれ、俺、可笑しなこといったかな」


 結人は笑いを必死に押し殺しているリアを微笑ましく思いながら尋ねた。


「だって勇者様、魔法をまるでお料理のように例えるんですもの。ですが、そのイメージで成功して良かったです」


 そういってまたくすくす笑い始めた。リアのつぼがいまいち分からないが、こんな状況でも、楽しそうに笑ってくれるなら、それがいいと思うし、それだけで結人の心もほっこりと暖かくなるのだった。






 勇者とリアが連行されたことを聞きつけたティスは、王にお会いすべく、謁見の間の前まで来ていたのだが、天井まで届く大扉の前に立つ見張り役の兵士二人に頑なに入室を拒まれてしまった。


「ここを通してくれ」

「なりません。何人たりともここを通すな、とのご命令です」


 ならば仕方がない。こういうやり方はあまり好きではなかったが、立場を利用するほかあるまい。


「ロードティスエリーム騎士長として命ずる。王に謁見を」


 それでも兵士は頑なに首を横に振るだけであった。騎士長として命令したにも関わらず、ここを通せないと言うことは首を縦に振らないのではなく、()()()()のだろう。

 つまり、私より上の地位の者が兵士に命令を出しているということになる。これ以上、ここにいるのは時間の無駄だと踵を返したところで足を止めざるを得なくなった。


 振り返った先、十数メートルの辺りから、ご自慢のちょび髭を撫でつつ、楽しい見世物でも見るかのようにクシロス卿が立っていたからだ。


「やあやあ、これはこれは騎士長殿。王への謁見は叶わなかったでしょう。もっとも謁見出来たところで、何も事態は変わらないのですがね」


 何がおかしいのか「くっくっく」と人を嘲るように笑っている。


「これはクシロス卿、ご機嫌麗しく。それよりもリアを、シネラーリア様をご存知ありませんか?急を要する大切な話があったのですが」


 もちろんそんな話などはなかったが、クシロス卿は食いついてきた。


「そうであったか。ではその用件、私が代わりにお伝えしましょう。今、彼女は勇者のことで忙しく動けない状況だと聞いている」

「いや、こればかりはクシロス卿といえど、他言していい内容ではないのです。それでは」


 やはりこいつが一枚噛んでいるとにらみを付けたリアは、結人とリア救出に向かうため挨拶もそこそこに、その場を足早に歩き去ったのだった。

~おもちろトーク~

リア「まあ、それにしてもクシロス卿は嫌味な人ですわね!」


結人「あはは、なかなかに派手な衣装だったし、あのちょび髭触る癖何とかならないのかな」


ティス「いっそ私が持つ魔法剣で髭を剃り落としてりやりましょうか」


ということで、ちょっとした外伝トーク的なものを書かせていただきました。今までに応援、ブックマーク等してくださった方ありがとうございます!これからもゆるふわをよろしくお願いします✨

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― 新着の感想 ―
[良い点] くどくどとした描写ややり取りが無く、スムーズなのがとても良いです。リアと結人…前回も書きましたが、ほっこりします。牢屋なんですけどね。 [気になる点] すみません。今更なんですけど、リアは…
2021/10/11 13:00 退会済み
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