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ショッピングモールのウサギさん

 ショッピングモールは楽しい楽しい場所だね。賑わい活気に溢れている夢の街さ。


 だが狭間の街のショッピングモールは別だよ。今日も血しぶきが飛び散っているから。



★★★


 天井の照明は煌々と輝き、大型ヴィジョンでは子供向けの楽しい番組映像が流れている。でも吹き抜けの中央通路は不気味に静まり返っているね。このショッピングモールの客はたった1人の少女だけなのさ。


「あれ……。ママは?パパは?」


 両親の姿を探すけど見当たらない。どうやら彼女は迷子らしい。大人の人を探したけれど、こんな大きなモールなのに誰もいやしない。怖くなって、寂しくなって、とうとう少女は蹲って泣き出した。そしたら誰かが優しい言葉をかけてくれたんだ。


「泣いているのはだあれ?そこかい?」


 それは低く大きく、おばけのような恐ろしい声。少女が恐る恐る顔をあげると、目の前に大きな大きなウサギのぬいぐるみが立っていた。3メートルはあるんじゃないかな。


「い……いや……」


 怖くて怖くて少女は動けない。そしたら可愛いウサギさん。急に怖い顔になって、その大きな腕で少女をペシャンコに叩き潰してしまったよ。


「あー、潰れちゃったぁ〜!」


 何もかも潰されて、可哀想な少女は血まみれなって死んでしまったんだ。ああ可哀想に。


 こんな恐ろしいウサギさんに出会わなければ良かったね。



★★★

 

「あれ……。私はどうして?」


 吹き抜けの中央通路は不気味に静まり返っているね。天井の照明は煌々と輝き、大型ヴィジョンでは子供向けの楽しい番組映像が流れているけれど、やっぱりここはさっきのモールの中なんだ。


 少女は自分の体を触ってみるけど、ウサギさんに粉々にされたはずの体は元にもどっていたよ。


「どこに行ったんだ〜い、白いブラウスのお嬢ちゃん?出ておいでよ〜?」

「また来た!」


 遠くから怖い怖いウサギさんの声がするよ。早く逃げないと、また酷い目にあって殺されてしまうに違いない。

 

「はっ!はっ!」


 ピカピカに磨かれた床を踏みつけ、少女はどこまでも走り続ける。モール内の柱に観葉植物、休憩用のベンチといった障害物を避けながら。


「ガァァァァァァッ!」

 

 でも巨大なウサギさんときたら、そんなの蹴飛ばしながら追いかけてくるよ。怖いったらありゃしない。


「きゃっ!」


 運悪く少女は躓いて転んでしまったんだ。そしたら瞬く間にウサギさんに追いつかれて、踏み殺された。頭を割られて肉塊に変えられてしまったんだよ。ああ可哀想に。


「また潰れちゃったねぇ〜」



 でも終わりはないんだ。


 苦しいことはいつまでも続くよ。


★★★


 ──今は何月何日なのかしら。『月の広場』で目を覚ましてからもう476日は経っているはずなんだけど……。あとで計算しなくちゃ。


 結局、吹き抜けの中央通路はどこまでも続いているのさ。いくら逃げてもモールに終わりはないって、少女は気づいたんだ。そうここは無限の牢獄。モールから出ることなんて、人間にはできやしないのさ。


「ウサギが来る前にトラップの場所を確かめないと」


 エアガンを片手に、慣れた手つきでチョークで壁に絵を描くよ。綿密な計画。これならバッチリだね。

 

 爆発音がモールの中に轟いた。あの怖いウサギさんが少女の仕掛けたトラップにかかったみたいだ。うまくいったね。


「ぐぎゃぁぁぁっ!熱いぃぃぃ!熱いぃぃ!」


 大きなウサギさんの体が激しく燃えている。売り場から集めてきたカセットボンベがキチンと爆発したみたいだね。異臭がモール内に広がっていくよ。


 でも火だるまのウサギさんが床を転げまわっているから、早く逃げないとモールごと大火事になっちゃうね。


「ちくしょぉぉぉぉっ!ちくしょぉぉぉぉぉお!熱いよぉぉぉぉ」


 とっても怖い顔をしたウサギさんが、少女の姿を見つけて追いかけてきたよ。火だるまだから危ないよ。


「よくも俺の体ををををををををを!」

「死ね!」


 少女はエアガンのトリガーを引いたよ。そしたら無数の弾がウサギさんの目を砕いたんだ。


「ぎええええええええっ!そんなぁぁぁ」


 ウサギさんは動けなくなってしまったよ。そのまま真っ黒の灰になるまで燃え尽きてえてしまったんだ。可哀想にね。


 でもモール中に火が広がってしまった。このままだと少女も焼け死んでしまうんだ。怖いね。とっても恐ろしいね。



 でもあの子は賢いから、そうなる前に自決してしまったんだ。


「今日はここまで」



★★★



──助けてくれ。あいつが今日も俺を追いかけてくる。


 今日のウサギさんは少女のエアガンで滅多打ちにされて手足をバラバラにされちゃってるんだ。


 結局、吹き抜けの中央通路はどこまでも続いているのさ。いくら逃げてもモールに終わりはないって、ウサギさんは気づいたんだ。そうここは無限の牢獄。モールから出ることなんて、ぬいぐるみにはできやしないのさ。


 ここは狭間の街だから、無限の時間の中で、孤独な少女はウサギを殺して暇つぶしするしかかやることはないのさ。


「待てぇぇ!ふひゃひゃひゃ」


 手足の千切れたウサギさんは、這いつくばって必死に逃げているんだけど、すぐに捕まっちゃう。少女の足は早いんだ。


 大きな胴体に跨ると、右手のナイフでぬいぐるみをめった刺しにしているよ。ウサギさんから血が噴き出しているのに全然やめないね。それしか楽しみがないからね。


 少女はとっても怖い顔をしていんだ。あれが悪魔って言うんだろうね。



 ああ可哀想なウサギさん。



 でも終わりはないんだ。


 苦しいことはいつまでも続くよ。

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