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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

もう戦争なんて、こりごりだ

作者: 大山 たろう

Twitterのフォロワー数百名を記念しまして、プロットでかけそうだと思ったものを、ただ夜更かし深夜テンション(いつも)で書き上げました。時間もかかっていなければ、確認作業も、添削も一切していないどころか、短編完結のくせに五千字にも満たない量です。


それでも、彼を書きたい、彼を主軸に置きたい。それを書いて、読んでもらいたい。


その思いだけで、この物語は作られています。


きっと構成はめちゃくちゃ、文法も悪いところあるかもしれませんが、どうかご容赦ください。


(誤字は報告いただけたら幸いです)

「それじゃあ、アイラ。今日も、行ってくるよ」


「行ってらっしゃい、バーナード。今日も気を付けてね」


 バーナードはドアを開ける。


 冬の時期。毎日のように雪が降り、街を白く染める。子供たちが道端で雪を投げて遊んでいたり、老人が屋根の上に登って雪を屋根からおろしていたり。


 冬の何事もない王都セントリヒエの街並みを眺めてから、バーナードは足を進める。


 ざく、ざくと冷たい雪を踏みしめながら進む。

 かじかむ手をかばうように脇に挟んで進んだ先は王城のすぐそばにある兵士の訓練場だ。


 バーナードはそこで兵士として訓練し、来るべき日に備え、力を蓄えていた。


「おう、今日も精が出るな」


 バーナードにいつものように話しかけるのは同期のグルーだった。


「まぁな、嫁さん待たせて死ぬわけにもいかねぇからな」


「はは! その通りだ! まぁ、こんな下っ端の下っ端の部隊じゃあ、戦争に行っても被害を増やすだけとか言って連れて行かなさそうだがな! ガハハ!」


 冷気が痛く感じるほどの気温だというのにこいつは大きな声で笑い飛ばしていた。


 事実、バーナードとグルーのいるこの隊は戦争などにはいかず、どちらかというと王都内の見回りや、塔からの監視が主な任務だった。


 そのため給料も決して高いとは言えず、バーナードとしてはこの険しい冬を超えるために少しでも稼ぎたいところだった。


 しかし、当然葛藤もある。


 給料が高くなるということは、危険な作戦への参加が多くなる。すなわち死ぬ可能性が高い。


「俺たちこのまま平穏に暮らすには、下っ端のままのほうがいいのかもしれないな......」


 柄にもなく、バーナードはそうつぶやいた。


「そういえば、知ってるか?」


「何をだ?」


「もうすぐ、この国が隣の小国と戦争をおっぱじめるんだと」


「またか......税も上がったら、いよいよ次の冬は越せなくなりそうだ」


「本当にそうだな。まぁ、俺たちの給料も税から出てるから、減らせとも言えないのが現状なんだがな!」


 また大声で笑い飛ばすグルー。


 結局そのまま休憩時間に入るのだった。




 休憩が終わる。バーナードはまた獲物の剣を練習するために、愛用の剣を手に取り訓練場へと向かおうとした。

 が、後ろから声をかけられる。振り向くと先ほどの元気はどこへやら、小動物のように縮こまったグルーの姿が。


「なぁ、バーナード」


「どうしたグルー」


「さっき、戦争が始まるって言っただろ?」


「あぁ、小国だって?」


「小さな国だと俺もてっきり思ってたんだが、相手は大国の商国みたいなんだよ」


「それは、本当か......」


 グルーの沈黙。それが答えだった。


「そしてその戦争に、俺たちの部隊も、参加することになった」


 これが彼のテンションの答えだった。

 つまるところ、戦争において雑兵として扱われるこの部隊は死ぬ可能性が高い、というわけだ。


「今日はもう、帰るよ」


「そうか、俺もそうするよ」


 二人はそれぞれの家のことを考える。


 重く降り積もった雪のように、バーナードの心は冷たく、重かった。


 心がぬくもりを求めている。心が癒しを欲している。


 死ぬ云々より、今を大切にしよう。戦争に行ったって、後悔しないように。


 バーナードは、そんな気持ちを胸に、朝よりも積もった雪を踏みしめ、帰路を急ぐのだった。





「お帰り、バーナード。浮かない顔してるけど、何かあった?」


「まぁ......戦争に、行くことになった。それも結構大きな戦争だそうだ」


 その瞬間、アイラはお盆を落としてしまった。


「な、なんで......」


 アイラはこらえきれずに、崩れて泣いてしまった。大きな声を出して、子供の時のように。


「俺だって......」


 本当は、行きたくなんてない。戦争に行かずに、二人で逃げてしまいたい。


 そんなことを考えてるけれど、ここで逃げるわけにはいかない。俺の仕事は王都を、国を守ることだ。

 職務と家族、俺は家族をとるだなんて簡単に言えるような仕事ではない。

 ジェイドはその心の声を外には出さず、アイラを抱きしめる。


「戦争に行って、必ず帰ってくる。だから、待っていてくれ。」


「わかった。ずっと、ずっと待ってるから」





 準備をするも、平穏な日々はすぐに過ぎ、戦争の日はやってくる。


「覚悟はできたか!」


 おおおおおぉぉぉぉぉぉぉ――――――


 大きな雄たけびが聞こえる。


「これから始まるのは、商国との戦争である! 王国のために、命を賭して戦うのだ!」


 騎士隊長が士気を高めるために演説を行う。バーナードもその言葉をきちんと聞いていた。


 王国のため。国のため、国のためとは言うが、兵士の仕事である民を守る物じゃなく、王国の国益のため、そう聞こえてならない。

 何故人間は、醜い争いをこうも繰り広げるのだろうか。

 そんなバーナードの問いは、今答えが見つかるはずがないものだった。


「いざ、出陣だ!」


 その声を聞いて、兵士と騎士の行軍が始まった。




 ガチャ、ガチャ。


 ガチャ、ガチャ。


 ガチャ、ガチャ。


 金属と金属がぶつかる音がする。兵士は鎖帷子をつけたりして、最低限の装備で機動性を確保しているが、騎士は鎧をしっかり着込んで、そのうえ馬に乗って歩いている。


 もちろんその重量は相当なものとなり、馬は走れず、速度が出ないため速度の遅いほうへと合わせている。これほどに非効率で、頭の悪い行進は本当に強国と呼ばれた王国の進軍なのか?


 いらいらとしてきたバーナード。すると隣にグルーがやってくる。


「まぁそうカッカするな! きっと何とかなるさ!」


 そう言って、バーナードの背中をバシッと叩いてきた。


「そ、そうだな」


 バーナードは、そう答えるしかなかった。


「敵影です!」


 もうすぐ見えると思っていたが、いざ見えたとなると早いものだ。


 騎士隊長は拡声魔法を口に着けて、大きな声を発した。


「我は王国騎士団長 アレックス・ナイトロードである!」


 そう言った数秒後、向こうから声が返ってきた。


「商国騎士団長 クリストファー・ユナイテッドだ!」


 その声を聞いた騎士団長は、小声で「相手にとって不足なし」とつぶやいた。そして拡声魔法をまたかける。


「「いざ尋常に、勝負!」」


 両国騎士団長のその声で、戦争は始まった。




 カキィン、キイン。


 あちらこちらから金属と金属のぶつかり合う音が聞こえる。戦争からすでに一時間ほどが経過した。最初は弓矢と魔法で様子を見るような戦い方だったが、埒が明かないと思ったのか、両国とも突っ込んだ。


 たまに聞こえてくる断末魔が、「次はお前だ」と言うように響き渡る。


 バーナードは、戦っている振りをしていた。


 剣を打ち合わせた商国の兵士に、小声で話しかける。


「お前にも、守るべき家族がいるのではないか?」


「お前もだろう?」


 その言葉ですべてを察したらしく、二人は目の前の相手よりも流れ弾などで死なないことを重視する立ち回りをしていた。

 きっとうまくいくと思っていた。これができれば、生き残る確率がぐんと伸びる。


 バーナードは心の内で自身の勝利を半ば確信しつつあった。







 いまだ終わらぬ血の雨。鋼のぶつかり合う音。


 少しずつ降ってきた雪は、さらに視界をふさいでいた。


 雪は溶けて水たまりを作る。ぬかるんだ地面がさらに戦闘を泥沼とさせていく。

 雪が溶けて水たまりを作る。しかしその水たまりは空を反射する綺麗なものではなく、深紅に染まった死の色だった。

 積もった雪には真っ白なキャンパスに絵具をぶちまけたかのように鮮やかな赤が彩られる。


 次第に兵が引いていく。騎士団長どちらからともなく後ろに下がったせいか、両国これでお開きのようだ。


「もう次はこりごりだな」


「全くだ」


 そう言って、敵だったはずの兵士とも分かれるのだった。








 王都セントリヒエに帰還する。


 解散を告げられた後、バーナードは鎖帷子を捨てるようにして脱いで、真っ先に家へと戻った。

 愛するアイラを抱きしめるため。愛する家へと帰るため。


 家の戸をノックする。


「......はい」


 そう暗い声が返ってきた。バーナードは「俺だ!」そうかすれかけた声を出した。戦争が終わったわけではない。むしろこれからが本番だろう。戦争に勝ったわけではない。むしろこちらから攻めていた分損害もこちらが多いだろう。


 それでも、今は、今だけは。生き残った喜びを。


「バーナード!」


 戸から飛び出してくるアイラ。


「ただいま」


「おかえり」


 その何気ないいつものやり取りが、いつもより新鮮に感じられた。

 願わくば、このまま俺たちが戦争に行くことなく、平和に、これを繰り返せたら。


 そう願った。叶うわけもないのに。

 けれど、日常の崩壊は想定よりももっと早く起きてしまった。


 否、もうすでに起きていた。





「この部隊の戦死者は一名。グルーだ。」


 そう、騎士団長直々に報告された。


 のちに回収できた遺品をバーナード自ら持っていった。家の戸を開けて違う兵士が立っていた時にはもう目じりに涙が浮かんでいたグルーの妻、カルネ。


 遺品である鎧と識別番号を渡されたカルネはそれを抱いて泣いた。ただ泣いていた。あの戦場の雨よりも、きっと彼女の心は暗く、閉ざされているのだろう。











 バーナードは背を向けて去る。













 戦争なんて、ロクなもんじゃない。



 欲望のために戦い、そして死んでいく。


 この戦いは何も生み出さなかった。この戦いに何も意味がなかった。この戦いはただ失っただけだった。




 何かを守る兵士が、ただ失うために、同じ人間とぶつかり合う。





 なんて、なんて。





 なんて、人間は、傲慢なのだろう。



 そんな思いがバーナードを支配する。

 けれど、権力があるわけでも、解決策があるわけでもない。

 一人、バーナードはグルーの顔を思い出し、酒を飲んだ。

 嫌な思い出は消えてほしかった。酒に消してほしかった。


 けれど、グルーの大声で笑う顔と、カルネのなく顔が、頭にこびりついて離れない。



 ただ、この世の不条理を、不自由さを、ただ嘆いた。



 バーナードは酒のせいではない、落ち着いた思考であることを確認して、家でアイラに「話がある」と呼び出し、二人で何度も座った椅子へと腰を掛けた。


「アイラ。今から俺と、この町から、王国から、逃げよう」


 バーナードはアイラにそう告げた。

 きっといつかこうなる定めだった。

 こんな傲慢な戦争があってたまるか。


 もう、アイラ一人残して永遠の別れになるなんて言う可能性、ないほうがいいに決まっている。


「私も、一緒に逃げたい。一緒に過ごして、一緒に老いて、一緒の墓に入りたい。」


 それが、アイラの答えだった。


 家に置手紙を残し、二人は逃げた。夜の王都を抜け、近くの村で馬車に乗り、国の端っこについてから、その奥へと足を踏み入れた。


 そこは、逃亡者の集う街。何かから追われたもの、何かから逃げ出したもの。そんな人たちがやり直す街。


「ここで二人、やり直そう」


 バーナードは、そう言って、笑顔のアイラとともに、中立国家 ハイベルゲンへと足を踏み入れた。





 置手紙には、こう書かれていた。



















 もう戦争なんて、こりごりだ。

いかがでしたでしょうか。

時間かけてない(一時間弱)ではありますが、書きたい物語、かけたと思っています。


ちなみにもっと文章量増やして、添削した別の短編は個人的に自信作となっております。

そちらは八月十三日、投稿予定ですので、気長にお待ちください。


それでは『もう戦争なんて、こりごりだ』お読みいただき、ありがとうございました。

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