1 エイリアン・インベージョン!
『宇宙人はいるのか』
これは遥か昔から長い間議論されてきたことである。
地球以外の星に文明を持つ生命体はいるのだろうか。
意思の疎通はできるのだろうか。
世界中の科学者が宇宙人との遭遇を求めて日々研究を進めている。
これは、そんな宇宙人と出会ってしまった、ただの高校生、相浦悠矢の話である。
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「皆さん座ってくださいー」
教室に入ってきたのは林たまこ。
城宝高校3年B組の主担任。
穏やかな性格で生徒からの人気は高く、生徒だけでなく先生からも好かれている。
しかし、なかなかの美人だが彼氏が出来ず、現在も休日は出会いを求めて街を彷徨っているらしい。
「今日は転校生を紹介しますー」
林先生の声にクラス中がざわめき出す。
すると教室のドアが開き、1人の少女が入ってきた。
綺麗な女の子だ。
金髪の長い髪に意思の強そうな青い目、アメリカからの転校生かな?
転校生は黒板の前に立つと、生徒たちに向かって口を開いた。
「はじめまして皆さん。相浦ランコです。宇宙から来ました」
…なんだこいつは?
中二病ってやつか?
もう高3だというのに…
「えっと…彼女は相浦ランコさん。ポルックス高校…?という所から来たそうです。仲良くしてあげてくださいね?」
林先生が説明を加える。
「自己紹介はもういいですね?私はここにある用があってきました」
「ある用…というのは?」
相浦ランコはクラスの最後列の生徒…相浦悠矢を指して言った。
「私は相浦悠矢さんに用があって来ました」
「…へ?」
「ちょっと来てもらいますよ」
「え?ちょっ…」
相浦悠矢は相浦ランコに連れられて教室の外に連れ出された。
「大丈夫?」「え?何が起こったの?」
「誰が連れてかれた?」「相浦だったよね?」
教室の中からざわめきが聞こえてくる。
そらそうだ。突然転校生にクラスメイトの1人が連れ出されたらこうなるわな。
「相浦悠矢さん」
「…えっ、あっはい」
「説明するのも面倒だし単刀直入に言いますね」
ランコは一呼吸入れてから悠矢に言った。
「相浦悠矢さん!私と結婚してください!」
「へ?」
その瞬間、相浦悠矢の脳は活動を停止した。
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俺は今何をしている?
俺は今、教室の外で今日やってきた転校生と話をしている。
ここまでは理解できる。
ただ話の内容は今宇宙から来たと自称する、何故か俺と同じ苗字の知らない誰かからの求婚だ。
何だこの状況は?
「ちょっと?聞いてます?」
「はっ!」
「大丈夫かしら?」
「すまん、ちょっと脳味噌が死んでた」
「大丈夫?薬飲みます?どうぞ。シアン化カリウム」
「殺す気か!」
「そっか、地球人には毒なのか。ランコうっかり。てへぺろ」
青酸カリを持ち歩くとかお前はどこの犯罪者だ。
というかさっきの自己紹介といい、まるで自分は地球人じゃないみたいな言い方をするな。
「…てかさっきなんて言った?」
「…地球には女性に何度もプロポーズをさせる文化でもあるんですか?」
「違う、そっちも気になるしむしろそっちの方が気になるけどそっちじゃない。お前宇宙から来たって…」
「ええ、宇宙から来ましたよ?」
「…まあいい。んでその後。俺に何で言った?結婚しろって俺には聞こえたんだけど」
「聞こえてたじゃないですか。あっちなみに拒否権はないですよ?実印貸しなさい」
「何するの⁉︎実印使って何するの⁉︎」
「決まってるじゃない。これで今日から夫婦よ。よろしくね。あなた♡」
「怖い!この子怖い!返して!おうちに返して!」
「それじゃあ帰りましょうか。帰ったら何にします?ご飯?お風呂?それともわ、た、し?」
「ほんと何この子⁉︎え?同居は決定なの?」
「さっきからうるさいですよ?若い頃からギャーギャーしてると早死にしますよ?」
「お前が原因だよ!ってえ?そうなの?」
「知りませんけどね」
「ふざけんな!」
何なんだ一体?この子の言うことが理解しきれない。
宇宙人?結婚?同居?何を言っているんだこいつは?
「では改めて」
そういうと自称宇宙人はは俺の前で正座をして、
「ふたご座β星、ポルックスから来ました、相浦ランコです。不束者ですがこれからどうかよろしくお願いします、あなた♡」
と言ってきた。
…変な夢だ。
「よし、そろそろ起きるか」
「悠矢さん、驚いているのはわかりますがこれは夢じゃありません。現実です。リアルワールドでの出来事です」
「嫌だっていきなり金髪美少女から求婚されたんだぞ?しかもそいつ自称宇宙人だし!どれだけ濃いんだよ!カルピスの原液ももうちょい薄いぞ!」
「美少女だなんて…ありがとうございます。あと私は正真正銘の宇宙人ですよ?」
「それが信じられないから夢だと思ってんの!」
「あ…あの…お二人とも…」
「「ん?」」
二人が振り向くとそこには林先生がいた。
「盛り上がっている所悪いのですが…授業が始まりますよ?」
「「あっすいません」」
そういうと林先生は小走りで去っていった。
「じゃあ悠矢さん。続きは後ほど」
「ちょっと…ああもう!分かったよ!」
そう言って二人は教室へと戻っていった。
これが普通の高校生・相浦悠矢と宇宙人・相浦ランコとの出会いだった。