旅館の離れ的な、
チェックインを済ませ滞在する部屋に案内される明日香達。
受付フロアーもそうなのだが、日本家屋をベースにデザインされた内装に、アクセントの様な洋風テイストが何ともエキゾチックな雰囲気を醸し出していた。
しかも本館とは別にそれぞれの個室が個別の建物として存在しているのだった。
詰まり基本的にすべての部屋が離れなのである。
離れは本館から細い石畳の道を進んで向かう。
基本的に道は野外になるので、上には道に沿って屋根が備え付けてあった。
一般的に言う通路シェルターと言うやつである。
しかしそんな周囲の外観を損なうようなデザインでは無く、木造で瓦葺きに仕上げてあり少しお寺を彷彿とさせた。
ひょっとしたら日本のお寺や神社などの雰囲気を意識しているのかもしれない。
そして野外といっても旅館の敷地内であり、美しい日本庭園が訪れた客の目を楽しませてくれる。
またこの辺りは幹線道路のような大きな道は無い。
それどころか旅館の敷地はそういった喧騒から隔絶されるような、少し奥ばった場所にある為に非常に静かだ。
故に風になびく木々の音や、人工的に作られた庭園のせせらぎ、そして偶に飛び交う小鳥の声しか聞こえない。
最近は色々な事が有りバタバタしていた明日香。
このような時間がゆっくり流れる空間は正直有難く、正に日本の特有の癒しの空間に感じた。
旅館の仲居さんに案内された離れは、平屋の割と広そうな部屋であった。
部屋と言うか離れなので最早一軒家である。
古風なデザインの玄関、そして入り口の引き戸。
かと思えば洋風のガス灯をイメージした照明。
違和感を感じさせない微妙な洋風テイストが設計したデザイナーのセンスを物語っていた。
中に入ると段差があり、玄関で履物は脱ぐようになっている。
そして横には下駄箱があり、サンダルも人数分用意されていた。
恐らく出入りするときにサンダルを使えと言う事だろう。
「趣のある雰囲気の部屋ですね、、、」
と蓮香が少し感心したように言った。
明日香も頷く。
「うん、私気にったよ」
「ここならゆっくり寛げそう」
桜は余韻を楽しむ事無く、さっさと上がり込むと間取りを確認し始めた。
雅はと言うとトイレを我慢していたのかモジモジして呟く。
「オ、オシッコ、、、」
そうして慌てたように桜に続き上がり込んで行った。
何とも情緒を台無しにする2人である。
そんな2人を見て明日香と蓮香は苦笑してしまった。
「荷物の方は山岸さんと脇村さんが運んでくれますので、」
「私達も中に参りましょう」
そう言って蓮香は明日香の手を優しく引く。
「うん、、、」
と明日香が頷いた時、蓮香がいきなりその胸に飛び込んできた。
慌てて抱きしめる明日香。
「え?!」
「どうしたの蓮香?」
少し心配になって胸の中にいる蓮香に問いかける。
蓮香は明日香の胸に顔を埋めたまま、少しくぐもった声で答えた。
「今朝からずっと雅さんに独占されていたので、お姉様エキスの補充です」
そうして顔を埋めて深呼吸をし出す。
どうやら明日香の匂いを嗅いでいるようである。
匂いを嗅がれるのは正直恥ずかしいのだが、それで蓮香が満足するなら仕方がない。
そう明日香が諦めた時、突然ライダースジャケットの胸元のジッパーを下げられてしまう。
「え? えぇ?!」と驚く明日香。
明日香を見上げる蓮香は真剣な表情で言った。
「ジャケットが邪魔でお姉様の匂いを感じ取れません!」
「もう一度です!」
そう言い放った後に再び明日香の胸へ顔を埋める蓮香。
「は、はぁ、、、」
溜息に近い相槌しか明日香は出来ない。
諦めと唖然が同時に感情を支配したからだ。
明日香はそのままキャミソール越しの胸元をモフモフされて悶絶しそうになる。
そして思う。
『やっぱり蓮香は甘えたいんだね、、、』
更に思った。
『甘えられる対象が私で嬉しくもあるのだけど、その行動が過激なのは勘弁してぇ~』




