エスコンディーテ
高速を2つ使い6時間近くかけて漸く軽井沢に到着した。
それでも早朝出発のお陰か時間は午前11時前である。
軽井沢町には大きな公園があり神社が二つ存在する。
その公園の東側にペンションなどが点々と建ち並んでいて正に観光地然としていた。
少し北側に車を走らせ山手に進むと、綺麗に管理された林で囲まれる敷地にやって来る。
そして敷地の奥に建物を目に取る事が出来た。
それは高級な料亭のようにも見えるが、洋風のテイストも含んだような洒落た外観をしていた。
ワンボックスリムジンは建物の前の林に囲まれた石畳の敷地に停車する。
「さて到着しましたよ」
「ここが目的の宿、エスコンディーテです」
そう言って脇村が車後部のスライドドアを開けた。
明日香は車から降りて周囲を見渡すと、まるで森の中に居るような感じがする。
この宿の周囲を木々で覆い隠している為かもしれない。
エスコンディーテは”隠れ家”と言う意味らしいが、その雰囲気を出す為にこう言った外観的演出をしているのだろう。
そしてやはり気温が思った以上に低い。
少し肌寒いな、、、と思った時に雅が明日香へ抱き着いて来た。
「明日香お姉様は少し体温が低いようですから、私が温めてあげます!」
何とも可愛らしい事を言ってくれる。
蓮香や桜はこんな少し子供っぽい口調は似合わない。
正に雅の専売特許と言ったところだ。
そうしていると桜と蓮香が続いて車から降りてくる。
少し蓮香が雅を羨ましそうに見ていたが宿の建物に向かうと、
「ここは温泉があるんですよ」
「昼食を済ませた後、皆で入りましょうか」
何食わぬ笑顔を浮かべて言った。
蓮香は色々段取りをして仕切ってくれるお姉さんタイプである。
例えるなら学生でいう所の学級委員だ。
またこの歳になってくると飲み会などの幹事などが分かり易いかもしれない。
詰まり頼られるばかりで、頼ったり甘えたりする事が日常では無い筈。
だから蓮香は雅を羨ましそうに見るのだ。
そう思うと明日香は蓮香にご褒美をあげないといけないなと、思ってしまうのである。
片や桜と言うと実にマイペースだ。
ちょっと不思議ちゃん的な所はあるが、実は目利きが利き非常に抜け目なかったりもする。
そして私達4人の中のムードメーカーとも言えるだろう。
その為、皆の事を考えてひょとしたら自分の気持ちを殺している所が有るかもしれない。
結局、桜もちゃんと構ってあげないといけないな、、、と明日香は考えてしまう。
否、、、3人皆等しく扱ってあげないといけない。
皆を平等に愛して欲しいと告げられているのだから。
そう一人で思いに耽っていると桜が後ろから明日香に抱き着いて来た。
「ひひひ~」
「サンドイッチ~!」
と良く分からない事を言い放つ桜。
雅が前から明日香に抱き着いているので、多分挟み込んでいる事を言っているのだろう。
そうして桜の豊満な胸が明日香の背中を優しく圧迫してしまう。
明日香は呆れたように、
「桜さん、、、午前中から余り刺激しないでくれますか?」
何故か敬語で言う。
すると桜はニヤリとした。
「ほほう、お主、この程度で反応してしまうとはチェリーボーイのようではないか~?」
「うっ」と言葉に詰まってしまう明日香。
正にその通りであるからだ。
中途半端な男性である自身に嫌気がさして、今までずっと女性の恰好をしてきたのだ。
男性にモテる事は多々あったが、女性と思われているだけに女性とのそう言った行為には至っていない。
詰まり”童貞”である、、、。
雅が何故か心配そうに抱き着いたまま明日香を見上げた。
「明日香お姉様は、サクランボちゃんなんですか?」
『サクランボちゃんって何だよ~、、、』
と明日香は項垂れてしまう。
男としての自分が嫌で女として振舞ってきたのに、ここに来て男のプライドが傷付いた気がした。
なんとも矛盾した事である。
そんな明日香の気持ちを察したのか、雅はニッコリと笑顔を浮かべた。
「大丈夫ですよ」
「私達の全てをお姉様に捧げるんですから~」
そういって恥ずかしそうに明日香の胸に顔を埋める。
桜も明日香に背後から抱き着いたまま胸を上下に擦り付けた。
「そうだよ~」
「この私の豊満で美しいボッデエェも明日香さんの物なんだよ~」
2人の嬉しくも卑猥?な攻撃に半ば悲鳴のような声を上げる明日香。
「きゃぁ~! 助けて~蓮香~!」
「何とかしてこの2人を!!」
高級旅館の玄関先にから蓮香が振り返り、呆れて溜息をついた。
「何をやっているんですか、、、」
「チェックインの手続きをしないといけませんから、早く来てくださいね」
こういう時の蓮香は何とも冷静で冷たい。
ひょっといたら羨ましくて嫉妬しているのかな?
そう思うと嬉しくも有るが、今はこの引っ付き虫2人を何とかしたい明日香であった。




