宿は高級旅館
明日香と雅がトイレから戻ると桜と蓮香が少し訝し気な表情をした。
雅が咄嗟に言い訳をする。
「女子トイレでも問題無いと思ったのですが、念のために多目的トイレへご案内したんです、、、」
そう言われて2人は少し無言だったが、直ぐに笑顔を浮かべる。
「そうでしたか、、、」
「そっか~雅ちゃんは気が利くね~」
『少し間が有ったのが何だか怖いよ、、、』
3人の間で明日香に対して何か決まり事が有るような気がした。
そして今のところ諍いが起こっている訳では無いので、上手く3人でやって行く為に”何か”あるのは確かある。
そう思うと明日香は自分が蚊帳の外に居るようで少し寂しくなった。
少し気落ちしながら車に乗り込むと、後部には山岸が乗っていた。
「あら? どうしたんですか?」
そう明日香が問いかけると山岸は車内の備品を確認しつつ答える。
「脇村君がね、運転を代わるって言ってくれたのでお言葉に甘えたの」
「まぁ2時間ほど走ったら又私が代わるつもりですけどね」
脇村氏は思った以上に紳士のようで女性に優しいらしい。
そう思っていると桜も乗り込んできて、
「ロリコンでドMで、紳士、、、」
「これは変態紳士って事だよね!」
と目をキラキラさせて言い放った。
すると笑いながら蓮香が雅の手を引いて車に乗り込んでくる。
「どうやったらそんなに変なワードが浮かぶんですか?」
「桜さんってホント可笑しな人ですよね」
雅が明日香の真横に座り身を寄せると、何気なく言い放つ。
「桜さんも変態だから?」
「腐女子とか言うやつですか、、、?」
「ちょっ、ちょっと待って私は別にBLとか好きではないよ?!」
と慌てて答える桜。
『何故、疑問形、、、それに何故慌てる、、、?』
と明日香は口に出そうと思った止めた。
これ以上突っ込んで桜の性癖が露見したら可哀そうだからだ。
バイだけでは無く、腐女子まで確定してしまったら変態紳士もとい変態淑女扱いになってしまう。
そう言う訳で明日香は話題を変える事にした。
「ところで宿はどう言った所なのかな?」
と一同を見渡して明日香は告げる。
それには山岸が答えてくれた。
全員が乗り込んだのを確認して扉を閉めると笑顔で言った。
「中々の高級旅館ですよ」
「実は雅さんのお母様のご紹介で決まった宿なんです」
雅の話によると母方の実家はリゾート関係を手掛けているとの事だ。
またかなり大きなグループ企業でその業種は、高級ホテルや旅館それにリゾートやアミューズメント施設など幅広いらしい。
雅は大企業の令嬢と政治家の間に産まれた子供と言う訳だ。
雅がグレた事を考えると、上流階級には庶民には分からない苦労や苦悩が有るのだろう。
詰まり高い所得や地位は人の幸せには必ずしも直結しないのだなと明日香は染み染み感じてしまった。
そして高級旅館の名前は"エスコンディーテ"と言うらしい。
まさかの横文字に明日香は驚いてしまう。
「また変わった名前だね、、、」
「洋風旅館と言えば分かり易いかもしれませんね」
「基本的に和風建築ですが、洋服のティストを各所に取り入れています」
「因みにエスコンディーテはスペイン語で隠れ家を意味するそうですよ」
と雅は丁寧に解説してくれた。
『隠れ家か、、、』
『大学の近所にある喫茶店もハイデンシーク、、、隠れ家だったわね』
そう思い明日香は楽しみになってくる。
きっとハイデンシークと同じく落ち着けるお洒落な所に違いないからだ。
そうしていると脇村が運転する車が発進した。
やはり揺れを殆ど感じない。
要するに運転手は関係なく車の性能が凄いのだ。
残り5時間はかかる途上を、こんな快適なリムジンで過ごせる事にホッと胸を撫で下ろす明日香であった。




