リムジン仕様
皆の衣装お披露目が終わり漸く車へ向かう明日香達。
既に時間はAM4時半を回ってしまっていた。
予定より少し遅れているようだが、山岸は別段慌てている様子では無かった。
流石、大人の女性の貫禄である。
明日香と桜はマンションの前に停めてあった白いワンボックスカーまで案内される。
蓮香は部屋の施錠を確認して遅れるとの事で、雅も同じ理由で明日香の部屋の施錠確認だ。
そして脇村が後部のスライドドアを開けると明日香と桜は驚愕してしまう。
内装が高級なリムジン仕様だったのだ。
座席は高級感のある黒のレザーで、左側面を基準に最後部へL字型に設置されている。
また各所にLEDによる間接照明が点いており、まるで高級ラウンジのボックス席のようだ。
更にお洒落な冷蔵庫らしき物も目につく。
その横にはずらりと高そうなワイングラスやタンブラー、そしてシャンパングラスが並んでいた。
「冷やしたアルコール類を用意してあります」
「よかったら自由に飲んでくださいね」
そう脇村が笑顔で告げ、車内へ乗り込むように明日香へ手を差し出した。
『この人は私が男だと知っているのかしら、、、?』
と明日香は心配しつつ脇村にエスコートされながら車に乗り込む。
知らずに女性を扱うようにされたら、何だか申し訳ない気持ちになるからだ。
しかしそんな事を言ってしまえば大学での人間関係はどうなるの?となってしまう。
それはそれ、これはこれである。
家族となる桜や蓮香や雅の関係者なら気を使うと言うもの。
それに騙しているつもりは無いが、後で男だと気付かれ「ちくしょー!」となられても困る。
要するに明日香の寝覚が悪いのだ。
そういう訳で明日香は率直に脇村へ訪ねてみた。
「脇村さん、、、」
「私が男と言う事はご存知ですか?」
すると桜をエスコートした後に脇村は硬直してしまう。
「え?!」
その様子を傍で見ていた桜は、
「明日香さん、言っちゃうんだ、、、」
「黙ってれば絶対分からないのに」
と言い苦笑する。
『いや、そう言う問題ではないから!』
そう内心で桜へ突っ込み、明日香は脇村の様子を伺った。
ジッと明日香を見つめたと思うと、次は上から下までまるで値踏みするように見つめる脇村。
そして我に返ったように慌てる。
「す、すみません!」
「女性を見つめるなんて失礼ですよね、、、」
「え、あ、違った、、、?!」
明日香は脇村の慌てように笑いが込み上げてしまう。
「脇村さん、落ち着いて下さい」
脇村は深呼吸をして落ち着くと、おずおずと明日香を見て問いかけた。
「本当に女性の方では無いんですか?」
「とてもじゃないですが、信じれませんよ、、、」
後からやって来た蓮香が怒ったように脇村へ告げる。
「何をしているんですか?」
「私のお姉様に余り失礼な事をしないで下さいね」
再び慌ててしまう脇村は、両手を小さく横に振って否定する。
「とんでもないです!」
「それよりも、ささっ、お嬢様も早くお乗りください」
と言って蓮香に片手を差し出す。
だが蓮香は少し嫌そうな顔をしてその手を取らずに車へ乗り込んでしまった。
落ち込む様に蓮香を見送る脇村。
そんな状況を見て明日香は苦笑すると、
「別に失礼な事はされてないよ」
「只、私が男だと知って驚いただけだと思うの、、、」
そう蓮香を諭すように言う。
蓮香は高級な革張り仕様の座席に座ると溜息をついた。
そして逆に明日香が蓮香に諭されてしまう。
「お姉様、、、ご自分が男性で有る事を口外しな方が良いですよ」
「と言うか、こんなに美しいのに男性だなんて誰も考えが及ばないでしょう」
「なので今まで通り女性として振舞えばよろしいのです!」
それから脇村へ向き直る蓮香は、
「脇村さん!」
「貴方も明日香お姉様を必ず女性として扱うように!」
「でなければセクハラで解雇しますよ!」
と半ば脅しのような語調で言い放った。
「えええぇえ!?」
「そんなぁ~、、、」
と項垂れそうになり、脇村は独り言のように呟いく。
「心配しなくとも、こんな綺麗な方を女性以外の扱いなんて出来る訳が無いですよ、、、」
ツーンと少し偉そうな仕草をする蓮香。
「ならそれで良し!」
明日香は申し訳なさそうに蓮香から見えない位置で脇村へ頭を下げた。
それに応える様に脇村は苦笑しつつ、気付かれない程度に小さく頭を下げる。
『何と言うか蓮香は内弁慶なのかな?』
『でも山岸さんには普通に年上に対する接し方だったし、、、』
と少し蓮香の振る舞いに明日香は疑念を持った。
そうしていると雅が車の傍までやって来て脇村を見上げた。
その身長差50cm。
完全に幼児と大人の対比である。
その雅を見た脇村の表情が一変する。
驚いた表情で顔を赤面させたのだ。




