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運転手の山岸さん

AM4時丁度に山岸さんが明日香のマンションへやって来た。

蓮香の話によると、この時間に来るようにお願いしてあったらしい。



1分の狂いも無く約束の時間に来るとは、流石蓮香の教育係をしていただけあってルーズさを感じさせない。

今の蓮香が有るのはひょっとしてこの人の影響ではないかと思ってしまう。



山岸さんは武野内グループの関連会社ペアレントで役員をしている。

そこは警備会社で山岸さんはと言うと前線を退き、会社の運営と人材の育成をメインに仕事をしていると蓮香が教えてくれた。

若いのに大した物だと明日香は感心する。



蓮香が山岸の紹介をすると少し大袈裟だと照れていたが、明日香をジッと見つめて驚いた様子だった。

「蓮香さんから明日香さんは男性と窺っていましたが、やはりこう見ると、、、どう考えても女性にしか見えませんね、、、」

誘拐の件で救出時に会っているのに、まだ納得できない山岸。



「それに今日はボーイッシュな装いですけど、それが更に女らしさを引き立てるというか、、、ホント綺麗です」

そう明日香をマジマジと見つめ山岸は呟く。



今日の明日香のコーデは黒のバギージーンズに黒のキャミソール、そして濃いブラウンのライダースジャケットだ。

そしてその手にはジャケットと同じ色のウエスタンハットを持っている。

髪の毛は纏めたり編んだりせずに真っ直ぐさらさらのストレートで、長い髪が背中と胸の辺りで揺れて山岸の言うようにとても女性らしい。



すると蓮香がまるで自分の事のように嬉しそうな表情を浮かべた。

「フフフ、、、」

「容姿だけでは無くて中身も凄くハイスペックなんですよ」

「それにとっても私達に優しいですし、、、」

と少し惚気(のろけ)が入った。



ここで否定や肯定をすれば話がややこしくなりそうなので、明日香は苦笑しか出来ない。

そんな明日香や蓮香を見て山岸も嬉しそうな顔をした。

「蓮香さんに良い方が見つかって本当に嬉しいです」

「こう見えて一途で真っ直ぐな所がありますから、変な輩に引っかからないか心配をしていたのですが、、、杞憂でしたね」


そう言って山岸は明日香の手を取り優しく両手で握り締める。

「明日香さん、、、武野内蓮香の事をどうぞ宜しくお願いします」



まるで親御さんにお願いされたような状態になり少し戸惑う明日香。

「えっ、、、あ、はい、、、」

「こちらこそ、、、私なんかで良かったのでしょうか、、、」


明日香が弱気な発言をしてしまったせいか山岸は苦笑すると、

「貴女は凄く魅力的ですよ、、、」

「私がもう少し若ければ仲間に入れて貰う所です」

などと明日香の耳元で小さく囁いた。



冗談と分かっていても驚いてしまう。

これだから経験豊富な大人の女性は怖い、、、と明日香は困ってしまった。



そんな明日香と山岸の様子を見ていた蓮香が、少し頬を膨らませて不満顔になる。

恋人が他の異性と仲良くしているのを見るのは誰でも嫌な物である。

相手が信頼する山岸だけに口には出さないようだが。


察した山岸が慌てて明日香から離れた。


一方、明日香はと言うと落ち着いた様子で蓮香を抱き寄せ、そうした後に優しく背中を撫でてあげた。

「どうしたの?」

と白々しく(とぼ)けた表情で明日香は蓮香に問いかける。



蓮香はジッと明日香の顔を見つめ、諦めたように溜息をついた。

「もう、、、お姉様はズルいです、、、」

「何と言うか、第三者が居ると急に余所行きになって恰好良くなっちゃうんですから、、、」



「え、、、それっていつもは全然恰好良くないみたいな言い方だけど、、、」

そう言って明日香は苦笑してしまう。


蓮香はそんな言葉を否定するように首を横に振ると、明日香へ抱き着きその胸へ顔を埋めた。

「そんなこと無いです、、、恰好良いです」

「私達だけの時は優し過ぎるだけです、、、」

と小さく呟くように蓮香は告げる。



「「「ゴホン!」」」と山岸と他2人分の咳払いが重複した。

そして困ったような笑顔を浮かべる山岸。

「イチャイチャは宿に着いてから行ってください、、、」

「さぁ荷物を運びますよ!」



「そうだよ~! 何2人でムフフなことしてるのよ~」

などと背後から桜の声がした。


更に雅の少し怒ったような声も続く。

「お仕置きです!」

「行きがけはずっと私の傍に居て下さい!」


明日香は苦笑する。

「それってお仕置きになるの?」

「まぁ私は構わないけど、、、」



「あ~ズルい! 私も!」と便乗する桜。


蓮香はと言うと冷静さと取り戻したようで、

「では行きがけはお譲りするので、宿に着いて1日目は私がお姉様を独占させて貰いましょう」

などと辛辣に言い放った。



そうなると桜と雅が納得せずに五月蠅くなるのは必然である。

実際そうなってしまい、荷物さえ運び出せずに山岸は頭を抱えてしまうのであった。



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