誕生日祝いはプチ旅行
結局、マンションをリホームする事に明日香は承諾した。
そしてその間、家に居られないのでプチ旅行でも行こうと言う話になってしまう。
桜が少し意地悪な表情で明日香に問いかけた。
「ひょっとして明日香さん、お誕生日とか祝われるの苦手?」
そうこのプチ旅行は明日香の誕生日祝いも兼ねている。
だが正直なところ、明日香は何かをして貰って喜んだりする自分が余り想像出来ない。
他人に何かしてあげても、自分がしてもらう事は殆ど皆無だったからだ。
その為、素直に喜ぶ事が苦手になってしまったのかもしれない。
これも明日香が他人に頼られやすい人柄で、他人との距離を付かず離れずに保って来た弊害なのだろう。
明日香は少し言い淀みつつ、
「そうね、、、」
「正直苦手かな、、、」
「でも上っ面だけは、そんな風には見せないけどね」
と苦笑しながら答える。
すると蓮香が切なそうに明日香を見つめて言った。
「お姉様は他の人に優し過ぎるんです」
「何かをしてあげるばっかりで、、、」
「だから他人から何かをしてもらう事に慣れていないのでしょう?」
桜も少し怒った表情で言い寄る。
「そうだよ~」
「他人は別にいいから、私達には気を遣わずに色々頼ってね!」
雅は明日香に抱き着くと、
「私にお姉様のお世話をさせてください、、、」
そう小さな声で呟いた。
蓮香の言い様は至極常識的な範疇だ。
しかし桜と雅は常識から若干逸脱しているような、、、。
兎に角、3人の気持ちは受け取るべきである。
明日香は笑顔を浮かべる。
「そうね、貴女達の好意にはちゃんと甘えさせてもらうわ」
そう告げると3人とも嬉しそうな顔をした。
だが今回の好意に甘えると1つ問題が生じる。
一週間は大学を休む事になってしまうのだ。
明日香の大学での評価は優良であり、多少休んだ程度ではビクともしない。
しかし、この3人はどうなのだろうか、、、?
「大学を1週間は休んでしまうけど、、、3人とも大丈夫なの?」
心配になって明日香は尋ねた。
きっぱりと自信満々で答える蓮香。
「私は問題無いです」
流石は見るからに優等生な蓮香である。
桜はと言うと、こちらも自信満々で答えた。
「私はいっぱい伝手があるから、大丈夫~」
「分からない所は誰かに頼るから~」
大学で人気者の桜らしい返答である。
と言うかセコイ、、、。
最後に雅は、ボソッと呟くように答える。
「いざという時は、お金の力で何とかします、、、」
それを聞いた瞬間、明日香はソファーからずり落ちそうになった。
『冗談であって欲しい、、、』
そう思い聞き流す。
取り合えず明日香の体調を考えて、明日一杯までは家でゆっくりと療養する事にした。
しかし、プチ旅行とは何処に行くつもりなのだろう?
「桜、行先のプランは立ててるだよね?」
「どこへいくの?」
のらりくらりしている感じではあるが、意外と目利きが利く桜。
内容の心配より純粋に行き先が気になって明日香は桜へ尋ねた。
楽しそうな表情を浮かべて桜は答える。
「軽井沢~!」
「温泉もあるよ~!」
「後ね、明日香さん的にも楽しめそうな所見つけたから!」
5月末の軽井沢は結構気温が低そうである。
温泉に浸かるなら良いかもしれない。
それに明日香が楽しめそうな所と聞いてしまうと、あれやこれや考えてしまい胸が躍った。
「そっか、じゃあ楽しみにしてるね」
そう桜に告げた後、明日香はもう一つ気になった事が脳裏に浮かんだ。
移動手段である。
明日香のフェアレディZでは長距離は正直しんどい。
スポーツカーなだけに乗り心地がそれ程良くないからだ。
心配そうな表情を浮かべてしまっていたのであろう、直ぐに蓮香が明日香に尋ねる。
「お姉様、何か心配事でも?」
桜も直ぐに反応した。
「移動手段の事、心配してる?」
流石、桜である察しが良い。
「それでしたら心配いりませんよ」
「山岸さんに運転手をお願いして、ワンボックスも用意して貰いますから」
そう然も当たり前かのように蓮香は笑顔で告げた。
明日香は感心を通り越して少し呆れてしまう。
「貴女達は察しが良い上に、準備や根回しも完璧なのね、、、」
すると心配そうに雅が明日香を見つめた。
どちらかと言うと不安の色が濃い。
ピンッ来た明日香は、
「大丈夫だよ、雅にもいっぱいお世話してもらうから」
「色々お願いね」
と少し意味深な言い回しになって、恥ずかしくなってしまう明日香。
自分だけが明日香の役に立ていないと雅は思ったのだろう。
そうフォローを入れると安心した表情を浮かべて雅は呟いた。
「はい、、、」
その時、雅のスマホに着信が入る。
電話だったようで雅は直ぐに出ると、1分程度の会話をして明日香を見やった。
「明日香お姉様、届きました」
そう唐突に明日香へ告げる。
『え!?』
『何が?!』
他人が傍から見ればきっと明日香の頭の上には、?マークが浮かんでいたに違い無いのであった。




