しおらしい雅
意識が朦朧としている明日香を蓮香と雅でベッドまで運ぶ。
一方桜は、冷蔵庫へ熱冷まし用の冷却ジェル枕を取りに行った。
雅が心配するように呟いた。
「明日香お姉様、男性なのに華奢だし凄く軽いですね、、、」
「ちゃんと食事されているのかしら」
不満そうな顔で蓮香は雅を見つめる。
「お姉様が男性だと知っているのは私達だけです」
「くれぐれも他言しないように!」
雅は蓮香の事が苦手なのか、少し怯えた様子で答えた。
「分かっています、、、」
「そんな怖い顔をしないで下さい、、、」
何だか少し拍子抜けした蓮香は首を傾げながら雅に尋ねる。
「貴女とは余り話した事は無いですが、雅さんらしくないですね」
「調子でも悪いのですか?」
そんな事を言われても、、、と聴こえて来そうな表情を浮かべる雅。
そして困った様子で暫く喋らなくなってしまう。
すると桜が冷却ジェル枕を持って寝室に入ってくる。
そしてベッドで眠る明日香の枕の代わりにそれを敷いた。
雅と蓮香が何だか気まずそうに無言なのを見て、
「どうしたの? 二人とも、、、」
「喧嘩でもした?」
と桜が2人に話しかける。
雅が慌てた様子で両手を小さく横に振って否定した。
「いえ、そんな喧嘩だなんて、、、」
「私じゃぁ相手になりませんよ」
「うん?」と訝しげな蓮香。
雅と蓮香は殆ど面識が無い。
挨拶を多少交わした事がある位で、込み入った話どころか些細な世間話もした事が無い。
蓮香の事を良く知りもしないのに、"私じゃぁ相手にならない"とはどう言う事か?
そんな蓮香の様子を見て桜が、
「雅ちゃんは、蓮香ちゃんの事が苦手で少し怖いんだよねぇ〜」
などと言い出した。
それを聞いた雅が怯えるように2人から視線を逸らす。
そして蓮香は意外過ぎて唖然としてしまう。
『ワガママで自己中な崇城雅が、私の事が苦手?!』
『信じ難いですが、、、この様子は確かに、、、』
『うん? でも何故、、、』
蓮香は疑問が沸き、桜を見つめた。
桜は蓮香の視線に気付き首を傾げると、
「どうしたの?」
そういつも通り可愛らしく訊いてくる。
『この娘は本当に底の知れない所がある、、、』
蓮香は少しだけ桜の事を不気味に思いつつ尋ねた。
「桜さん、、、何故、雅さんが私の事を苦手と知っているのです?」
そうすると桜は雅に抱き着いた。
突然の桜の行動に驚く雅。
「だって~、雅ちゃんいっつも蓮香ちゃん見かけたら避けてたし~」
「性格的に蓮香ちゃんの事が苦手なんだよね?」
小さく雅は頷く。
「桜さんのご明察通り、、、私は蓮香さんのようなタイプが苦手で、」
「いつも避けていました、、、すみません」
正直に言われて困ってしまった蓮香。
「いや、、、そんな事言われましても困るのは私の方で、、、」
「それにこれから一緒に過ご、、、」
言い終わる前に一番の問題に気付く。
『明日香お姉様は雅さんを預かると言いました、、、』
『これは詰まり一緒に暮らすということですよね?!』
不味いと感じた蓮香は、そのつもりは無かったがガッツリと雅を睨みつけてしまった。
「雅さん!」
「明日香お姉様と1つ屋根の下で一緒に暮らすなんて、、、」
「私が許可しません!!」
などど蓮香は雅に言い放ってしまう。
苦手な蓮香に睨みつけられて、真っ向から今後の行動を否定された雅。
怯えない筈がなかった。
「あわわゎ、、、?!!」
桜は雅を庇うように抱き着いたまま、蓮香へ背中を向けた。
「ちょ、ちょっと待って蓮香ちゃん!」
「雅ちゃんが怯えてるから!」
そして愛想笑いをすると、
「そんなに納得がいかないなら皆で一緒に住んじゃえばいいじゃない!」
そう滅茶苦茶な事を言いだす。
ピタリと蓮香の動きが止まった。
逡巡するような微妙な間の後、
「それもそうですね、、、」
「そうしましょうか」
と真顔で桜の提案に納得してしまう。
その代わり今度は雅が困った表情を浮かべる。
それを見た桜も困った様子で、
「え、、、次は雅ちゃんなの?」
「何か不満があるなら正直に言ってみて~」
と優しく促した。
するとおずおずと話始める雅。
「私、、、蓮香さんが苦手なので、、、」
「一緒に暮らすなら上手くやって行けるか不安で、、、」
『なるほど、、、』
『そりゃそうだ、、、』
と思ってしまう桜。
蓮香は雅の言い様に納得いかないのか、
「雅さん、、、何故私の事が苦手なんです?」
「取り合えず、それを聞いておかないと始まらないような気が、」
と少し攻め立てるような感じで尋ねてしまう。
『多分、そんな感じの所とか、と思うよ』
そう思いつつも口に出せなかった桜であった。




