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牛丼と雨と予期せぬ出会い

もう夕方の6時を回っている。

対戦に集中し過ぎて時間どころか空腹も忘れてしまっていた。


気を抜けは急にお腹が減り出す明日香。

取り敢えず古川氏と連れ立って近所の牛丼屋に行く事にした。



日が暮れると若干肌寒い。

マキシロングパーカーを着て来て正解だったなと明日香はニンマリする。



明日香が1人でニンマリしているのを不気味そうに見やる古川氏。

だが少し感心した様子に変わる。

「アマネン、、いつもラフな格好だが、、」

「何か格好いいよな」

「それハイブランドだろ?」



「ほぇ?」と明日香は素っ頓狂な返事をする。

まさかそんな言葉を振られると思っていなかったからだ。


「ほぇって何や、アホの子か?!」

と突っ込む古川氏。



明日香は苦笑しながら自分のパーカーを見る。

「あ〜、これね」

「日本に有るのは、これ含めて3着しかないらしいよ」

「高かったけど偶然見つけて買っちゃった」



古川氏は驚いた様子だ。

「まじか!」

「よっぽど服とか好きなんだな、アマネンは、」


そして少し考える素振りをして、

「じゃあ将来は服飾関係か?」


明日香はとぼけた仕草で否定した。

「いやぁ〜、好きだけどね、、」

「やっぱりやるなら歌かなぁ〜」



「ふっ」と小さく微笑むと古川氏は、明日香の背中をバンっと平手で叩く。

「まぁ頑張れや!」

「俺らは応援しか出来んけどな、、」



むせりながら苦笑する明日香。



そうこうしていると牛丼屋に到着した。

スーパースターから徒歩5分程の所なので、よく明日香達は利用している。

つまり商店街内と言う事だ。



「並と卵、後味噌汁で、」

と手早く牛丼屋の店員に注文を告げる古川氏。


明日香も続けて手早く言ったのが、

「特盛、卵、味噌汁、お新香で!」



それを聞いた古川氏がげんなりする。

「普通の女子なら、、そんなに食わんぞ、、」



にひひ、と笑う明日香。

「お昼少なかったんだよねぇ」

「知り合いの娘が傍に居たから合わせちゃって」


諦めたように古川氏は溜息をついた。

「さよか、、」

「まぁ、たぁ〜んとお食べ」

「俺の金じゃないけど」



1、2分で素早く提供された牛丼を頬張る明日香は、

「うまぁ〜い!」

と周りを考えて小さく叫ぶ。



古川氏は気にした風も無く、

「戻ったらどうする?」

「D&D3でもするか?」


明日香は口に頬張ったまま古川氏に向かって喋る。

だから勿論、ご飯粒やらが古川氏に向かって飛んでゆく。

「おぉう、、いいねぇ!」

「やろう! キャラ縛りとかしよか?」



再びげんなりする古川氏。

「アマネン、、頼むから、ちゃんと飲み込んでから喋ってくれ、、、」



15分程で完食した2人は、5分程茶をすすりながら休憩する。

そして牛丼屋を出ると雨がポツポツと降り出した。



商店街にはアーケードが有るので雨は問題無い。

しかし横路地からスーパースターまでは上に何も無いので濡れてしまう。



「本降りになる前に急いで戻ろう」

そう言って古川氏は走り出す。

明日香も頷くと後を追った。



スーパースターに着く頃には結構な本降りになっていた。

何とかずぶ濡れにならずに済んだ明日香と古川氏。

急なゲリラ豪雨には困ったものだ。



古川氏がスマホで周辺天気を確認する。

「小一時間で雨雲は抜けるみたいだな」


明日香は嬉しそうに笑むと、

「じゃあ、私らには関係ないよね〜」

「D&D3クリアしたら1時間はかかるし」

「どうせ閉店まで居るし〜」



「だな、」と言って両替をしだす古川氏。


先にD&D3の筐体の前に陣取り50円を投入する明日香。



D&D3、、正しくはダンジョンズ&デーモンズ3というタイトルで、横スクロールアクションゲームだ。

ファンタジー特有のキャラクターを数種類の中から選択、そして面のザコを倒して最後にボスを倒して終了。


それをストーリーに沿って繰り返し、最後にラスボスを倒してエンディングである。



上手いゲーマーは、一度も死ぬ事なく1コインクリアを余裕でしてしまう。

なので多少の縛りプレイをして緊張感を持たせたりして楽しむのだ。


そしてこのゲームの売りは、最大4人で協力プレイが出来る事だ。

皆でワイワイ楽しめる名作と言えよう。



古川氏が両替とトイレを済ませて明日香の隣に座る。



2人がスタートボタンを押そうとした時、それは突然やって来た。





土砂降りになった外から慌ただしくスーパースターに入る人物がいた。

全身ずぶ濡れの女の子だ。



常連が来るにはまだ早いし、常連には明日香以外の女子は居なかった。



一見さんも偶に来るので特に気にしない明日香は、ワイワイと古川氏とゲームを楽しみ始める。


スーパースターの入り口が明日香から死角になっている事もあるが、それがまさに油断と盲点であった。



ワイワイと楽しむ明日香に、突然横から声がかかる。

「神宮司、、さん?」



このスーパースターで苗字で明日香を呼ぶ者など1人も居ない。


故に蒼白になる明日香の表情。

そして恐る恐る声がした方を見やる。



そこにはずぶ濡れになった、新見桜の姿があった。


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