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雅の処遇

蓮香の話のよるとこのホテルに雅の人員は、本人を入れて7人しか居なかったと言う事だ。


つまり明日香を拉致した男性4人と、女性が1人。

このホテルに居ただろう雅と千条の2人になる。



一方、明日香を救出に出た人員は蓮香が実家より呼んだ12名と、蓮香と桜を合計して14名となる。

倍する人員により簡単にホテルを制圧してしまったらしい。



蓮香が呼び寄せたメンバーは、母方の事業が警備会社を運営しており、そこの腕利きが集められたと言う。

しかも日本のみならず海外のシークレットサービスも手掛け、その人員の派遣も行っている。

皆、相当な実力者揃いだそうだ。



そんなSP集団に襲撃されれば、お嬢様の側付き程度では対応できる筈も無かった。

結局雅は、逆の立場となってしまう。

今回の落とし前を着ける為、手錠で一旦拘束されたのだ。



雅の父親は、あの有名な第一党の幹事長をしている”崇城巌”なのだ。

警察沙汰には勿論したくないだろうし、そうしてしまえば色々面倒な事になるのは目に見えていた。


被害者である明日香としては、今回の事は謝罪してくれれば大事にするつもりは無いのだ。

そして今後、雅が明日香に迷惑さえかけなければ無かった事にしても良いとさえ考えていた。


それを蓮香や桜に伝えると、二人は怒り出した。

「何を言っているんですか! お姉様は!」

「今回は上手く見つける事が出来たから良かったものの、、、」

「もっと時間がかかっていたら、お姉様がどうなっていた事か、、、」


「そうだよ~蓮香ちゃんの言う通り!」

「明日香さんの事を傷物にして良いのは、私と蓮香ちゃんだけなんだから」



どうも2人は心配してくれてはいるのだが、色々と論点がズレているような気がしてならない。

そこで明日香は2人が納得する提案をした。

「じゃぁ、崇城雅の事は蓮香に任せるから、出来るだけ穏便に済ませて」

「私の希望はさっきも言ったけど、本人と親の謝罪、そして今後私とその周囲に迷惑をかけない事だから、、、」



それを聞いた蓮香は少し呆れたように溜息をついた。

「本当にお姉様は他人に優し過ぎます」

「優しくするのは私と桜さんだけでいいんです、、、」


すると桜は諦めたように、

「仕方ないよ、、、」

「クールなところは有るけど、明日香さんは基本的に皆に優しいからね」

「“特に”優しくするのは私や蓮香ちゃんに、、、と言う事で割り切るしかないかも、、、」



恐らく2人は自身に危害を加えて来た相手に対して甘過ぎると言っているのだ。

これがもし自分では無く、蓮香や桜が被害に合ったら明日香としてもこの程度で済ませる気は毛頭無い。


そんな悪い奴は地の果てまで追って行って、人としての人生を送れなくしてやる、、、。

まあそれは極端で冗談に近いが、自分を慕ってくれている者を傷付ける奴は生半可な事では許してやるつもりは無かった。



そんなやり取りを拘束されて傍で大人しく聞いていた雅。

明日香を拉致して、その後のやりたい放題をした”あの雅”はどこへやら。

親の庇護下で好き放題していたツケがこれから返って来るのだ。

それは大人しくなると言うものか、、、。



その上、親の名声に泥を塗り、下手をすれば失脚しかねない事態ともいえる。

娘の自分がやり過ぎた為、親にカバーできない程の迷惑をかけてしまったのだ。

雅は拘束され椅子に座らされた状態で、俯いたまま小さく話出した。

「私はどうなってもいいですから、、、」

「お父様には、、、お父様の仕事には影響が出ないように、、、」

「お願いします、、、」



そんな殊勝な雅を見て明日香は何だか色々情けなくなった。

『今までこの娘に道徳的、理念的な事を教えれる人間が居なかったのね、、、』

『今回の事でこの娘にとって良いターニングポイントになればいいのだけど、、、』

と思い、ハッとしてしまった。


自分は被害者だと言うのに、加害者である雅を心配してしまったからである。

蓮香や桜は、この事を注意していたのだろう。

自分でも矛盾しているなと思う。



自分の周囲とは出来るだけ付かず離れずの距離を保ちたい、、、。

自分の事を詮索されたく無いからだ。

でも他人が困っていたり、難しい状況にあれば手を貸したくなる。

可愛い女の子なら尚更だ。



結局自分は可愛い女の子に弱く、只のスケベなのでは?と思うと苦笑しそうになった。

なんとか堪えて明日香は蓮香の耳元で囁く。

「手加減してあげて、、、穏便にね」



再び溜息をついて蓮香は小さく頷いた。

すると近くに居た山岸に蓮香は言う。

「山岸さん、崇城雅と他の6人の身柄はお任せしますね」

「それと今回の落とし所は決まりましたので、崇城巌代議士への連絡をお願いします」

「話し合いの場は必要でしょうし、そのすり合わせもお願いします」



山岸は頷くと雅を連れて部屋を出た。



明日香はまだ雅に盛られた薬のせいで身体が非常に怠かった。

立っているのが辛く、堪らずベッドの隅に腰を掛ける。

それを見た桜と蓮香が心配そうに明日香へ駆け寄る。



今夜の2人はいつもと全然雰囲気が違うな~と場違いな事を思う明日香。

動きやすさ重視なのだろう、蓮香はタイトなジーンズにスニーカー、そしてライダーズジャケット着こんでいた。


桜はと言うと、レザーのショートパンツにスニーカーとスカジャンだ。

これはこれで2人とも似合っていて可愛いなと思った。



かく言う明日香は、黒のショーツに黒のベビードールのままだ。

流石に恥ずかしいので今は上に(くるぶし)まであるバスローブを羽織っている。



「おうちに戻りましょう、、、」

「でもその前に着替えないといけませんね」

と心配するように明日香の背中に手を添えて言う蓮香。


桜は少し嬉しそうに、

「今の明日香さんは、ちょっと動くのも辛そうだし、」

「私達でお着替えさせちゃおうっか~」



「え?!」と声が漏れて唖然となる明日香。



時はすでに遅し、ニヤついた2人の影が明日香に迫っていた。



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