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真実と変らぬ想い

部屋の外で何やら大きな音がした。

気になるが明日香はどうしようもないのでベッドで大人しくする。



しかし千条はそう言う訳にはいかなかった。

明日香を監視し世話をする役目以前に、侵入者があれば対応しなければならない。



千条が椅子から立ち上がり部屋の出口に向かった時、突然部屋の扉が開いた。


「抵抗するなら少し痛い目にあいますよ〜」

と間の抜けた女の子の声がする。



この声に明日香は聞き覚えがあった。

だがまさか、こんな所に来るは筈が無い。


彼女はいつもフンワリしていて可愛らしく掴み所が無く、そして明日香を慕ってくれている。

そんな如何にも可愛らしい女の子が、こんな危険な場所に現れる訳が、、。



そう明日香が思ったのも束の間、千条が両手を後ろ手に持たれて部屋に戻って来た。

そしてその千条の手を拘束していたのが、桜だったのだ。



予想外の展開に明日香は唖然としてしまう。

自分がショーツ1枚、ベビードール1枚の格好でベッドに拘束されているのも忘れて。



明日香を確認した桜は、後ろから来た男性に千条を任せて駆け寄って来た。

「良かった〜!」

「やっぱりここに居たんだね、、、無事で良かったよ〜」

そう言いながら明日香に抱きつく桜。



明日香はびっくりしつつも桜に尋ねた。

「私が拉致されたのが良く分かったわね」

「それにこの場所もどうや、、、」


明日香が言い切る前に、その口を桜の唇が塞いだ。

突然の桜の行動に硬直してしまう明日香。


しっかりと桜に抱きしめられて、明日香は今までされた事の無い程の情熱的で濃厚なキスをされる。

それは愛し合った恋人同士がする口付けに違い無かった。



「ゴホンッ」と咳払いがした。

桜と共に来た男性がしたのだ。

目のやり場に困った様子で片手を差し出していた。

そしてその手の指で摘まれた小さな鍵が見える。



我に返った桜が慌てて男性の元に駆け寄り、その鍵を受け取ると明日香の傍に戻ってきた。

「直ぐに拘束を外してあげるからね」



そして四苦八苦しながら桜は明日香の手枷を外してくれた。

すると再び桜が明日香の胸に抱きつくと、

「心配したんだから、、、」



明日香は申し訳なく弱々しい声で答えた。

「ごめんね、、、」



その時、血相を変えた蓮香が部屋に飛び込んで来た。

「お、お姉様!」



蓮香はベッドの上であられもない格好の明日香と、それに抱きつく桜を目の当たりにする。

それから唖然として固まってしまった。



「蓮香、、、?」

と心配になって明日香は声をかける。



声をかけられてハッと自分を取り戻した蓮香。

そしてヨタヨタと力無く蓮香は明日香の傍に進むと、

「明日香お姉様、、、そのお姿は、、、」



今頃になって自分の格好を思い出す明日香。

自分が男である事が丸わかりの状態で、しかももう誤魔化しが効かない。

覚悟を決めるしかなかった。



蓮香は思いの外ショックだったようで、明日香が居るベッドの傍にしゃがみ込んでしまう。

「お姉様は、男性の方だったんですね、、、」



明日香は蓮香に返す言葉が無かった。

騙すつもりは無かったが、打ち明ける勇気も無く結果的に不誠実な結末になってしまったからだ。



すると桜がキョトンとした顔で言い放った。

「え?」

「明日香さんが男の子だって気付いてなかったの?」



「え?」

「え?」

とユニゾンしたように明日香と蓮香が声を揃えた。



桜は少し怒ったように言い直した。

「だから私は明日香さんが、"女装していた"のを知ってたよ」



ベッドの上に座る明日香と桜を、蓮香は呆然とした様子で見上げた。

「そんな、、、桜さんは気付いていたのに、、、」

「私だけが、、、」



そんな様子の蓮香を見て、桜は首を傾げた。

「明日香さんが男の子だった事が、そんなにショックなの?」

「私は性別なんて気にしないけどなぁ〜」

「私が愛してるのは明日香さん自身だし〜」



桜の発言に明日香も驚かされてばかりだ。

以前から掴み所の無い娘だとは思っていたが、ここまで底が見えず洞察力が凄いとは思いもしなかった。



そうすると蓮香が怒ったように言い放った。

「勿論、私も明日香お姉様を愛しています!」

「私が言っているのは、お姉様が男の子だったと言う事より、それに気付かなかった私自身に失望しているんです!」



『ええぇ〜、、、そこなの、、、?!』

と明日香は蓮香に突っ込みそうになった。



「じゃあ特に問題無いよね?」

と桜は蓮香に訊き返す。


「無論です!」とちょっと被せ気味で返答する蓮香。



明日香は項垂れた。

今まで心配していた事が全て杞憂だったからだ。


そして桜と蓮香の明日香を見つめる目が痛い、、、。

あられもない明日香の姿を見た2人が、自分を見下げているように感じたからだ。



しかし次の一言で全てがひっくり返った。

蓮香が少し息を荒げながら、

「お、お姉様、、、そのお姿は、私には目の毒です、、、」

「我慢出来なくなってしまいます、、、」



桜が明日香に抱きついて怒ったように言った。

「駄目だよ〜こんな所で!」

「帰ってからね!」



男だとか女だとか、、、そんな事を考えていた自分が明日香は馬鹿らしくなってしまった。

それと同時に桜と蓮香の包容力の大きさに驚かされ、嬉しさが込み上げる。



ただ、帰ったら自分はどうなってしまうのか、、、。

そんな些細な心配が明日香を包んだ。




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