抜かりの無い蓮香
明日香が帰った後、蓮香はお風呂上りの桜の世話をすることになる。
子供の様に裸であちこち歩き出すのものだから蓮香も大変だ。
『明日香お姉様はいつもこんな感じで桜さんの相手をしているのかしら、、、』
とつい蓮香はぼやいてしまう。
それでも面倒などとは思わなかった。
桜は蓮香にとっても憎めなく可愛らしいキャラクターなのだ。
明日香に対しては、愛しくてお世話をしたいと思ってしまう。
桜に対してはと言うと、放ってはおけない、面倒を見てあげないと駄目な娘、、、そんなイメージなのだ。
蓮香と桜は性格も真逆で、一見合わなそうだが逆にそれが上手く行っているのだ。
そんな事を自己分析して考える自分に、笑みが漏れた。
なんだか楽しいからだ。
『以前の私なら、桜さんと仲良くなる事もなかっただろうし、、、』
『こんな楽しい気分で楽しい生活を送る事も無かった筈』
『全て明日香お姉様のお陰ね、、、』
と改めて蓮香の中に占める明日香の存在の大きさに気付く。
そして桜の世話が終わってから蓮香もお風呂に入った。
桜が押しかけて来て、背中を流すと言ってきたが丁寧に断る。
桜が不満そうに、
「どうして~?」
「私だと嫌だった?」
蓮香は愛想笑いをしてしまう。
「せっかくお風呂済ませた後なのに、桜さんまた濡れちゃうでしょ、、、」
「次の時に一緒に入って洗いっこでもしましょう」
そう言うと納得した桜は嬉しそうに、
「じゃあ次は明日香さんも一緒に3人でお風呂はいろうね!」
と言ってバッスルームから去っていく。
嵐の様にやって来て、嵐の様に去っていく桜に蓮香は苦笑してしまった。
「本当に面白い娘ね、、、桜さんは」
そうして先を思い描くようにバスルームの天井を眺める蓮香。
「お姉様は恥ずかしがり屋さんだから、難しいかもしれないけど」
「そう出来たら嬉しいかな、、、」
もし明日香と一緒にお風呂に入れて、身体の隅々まで洗う事が出来たら、、、などと悶々と考えてしまった蓮香。
はしたないと思いつつも自分の顔がにやける事を蓮香は止める事が出来なかった。
お風呂を済ませて就寝迄の時間をマッタリと過ごす事にした桜と蓮香。
桜がスマホをいじりつつ呟いた。
「明日香さん、ライブ配信するって言ってたけど始まらないね~」
ノートパソコンを蓮香はソファーに座りながら操作する。
「WorldTubeの告知にも特に出てませんね」
「SNSにも特に出てないし、、、」
キャミソールとショーツのみの恰好で急に立ち上がる桜。
「明日香さん、、、何か有ったのかな?」
蓮香は溜息をつく。
「桜さん、そんな恰好では風邪をひいてしまいますよ」
「それに一緒にいるのが女の私だからって、気を抜きすぎかと、、、」
すると桜が蓮香の隣に座る。
「私自宅では裸族だもん~」
「これでも気を使ってるんだよ、、、」
そしてニヤと笑むと、
「それとも私に欲情でもしちゃった?」
ムッとした顔をする蓮香。
暫しの間の後、突如「がお~!」と言って桜に襲い掛かった。
「キャッ!」と困った顔で小さな声を上げる桜。
蓮香は桜に覆い被さりくすぐり始め、更に首筋や胸などにキスまでし出したのだ。
慌てた桜が苦笑しながら、
「あ~ん、、、ごめんよぅ、、、」
「冗談だから~やめて~」
と言い出す。
それを聞いて満足したのか蓮香はピタリと動きを止めた。
そうしてゆっくりと桜の顔に自分の顔を近づけると、
「私は桜さんの事も大好きですよ」
「でも、明日香お姉様の事が一番だから、、、」
そういって優しく桜に口づけをする。
少し驚いた様子の桜だったが、顔を赤くして嬉しそうな顔をする。
「うん、、、」
蓮香は桜から離れて立ち上がると、
「でも、何か嫌な予感がしますね、、、」
「お姉様の所にメッセージ入れてから、行ってみますか」
桜も頷くとお泊り用に持って来た鞄から、パジャマを取り出して上に着だす。
その間に蓮香はスマホで明日香に対してメッセージを送った。
『ライブ配信の予定だと言っていましたが、始まりませんので心配して連絡を差し上げました』
『特にお変わりありませんか?』
『桜さんと私でそちらにお伺いしてもよろしいですか?』
問う、伺いを立てるなどの文面はスルーしにくい。
これで直ぐに返事が来ないのであれば、なにか異変が有ったと蓮香は考える。
そして5分程待ってもメッセージに対しての返信が無かった。
不安そうな顔で蓮香は呟く。
「やっぱり、、、何か有ったのでは、、、」
蓮香は桜の手を引くとリビングを出た。
「インターフォンを鳴らしてみましょう」
「それで反応が無ければ合い鍵で強行突入です!」
桜は少し驚いた様子で、
「おおお~、蓮香ちゃんやる気だね!」
『何がやる気なのやら、、、』と思う蓮香だったがスルーして明日香の部屋の前にやって来る。
インターフォンを鳴らすが暫く待っても反応が無い。
はやる気持ちを抑えて、蓮香は合い鍵で明日香の自宅に上がり込んだ。
室内の様子は、先程まで明日香が居たように照明も点けっぱなしだ。
明日香の姿は、どの部屋を探しても見つけることが出来なかった。
『どこかに出かけたのかしら、、、』
『でもそれならメッセージを送った時に返信が来る筈』
そう蓮香は思い、更に不安が膨れ上がった。
桜も心配そうな表情で呟いた。
「返信が来ないのは変だよね、、、」
蓮香はスマホを取り出すと何やら操作し始めた。
「余り気が進みませんが、、、最終手段です」
首を傾げて桜は蓮香に問う。
「え? 何かするの?」
「大丈夫なの?」
真剣な表情で蓮香は独り言のように話し出した。
「もしもの時の為に、お姉様に渡した私の合い鍵には、GPS受信機能を内蔵したキーホルダーを付けているの」
「元々紛失した物を探すためのシステムなんだけどね」
「お姉様が肌身離さず持っていてくれれば良いのだけど、、、」
「おおお、流石だね蓮香ちゃんは」
と真面目に驚く桜。
すると眉をひそめて蓮香は桜に言った。
「やっぱり変だわ、、、ここから60kmも離れた場所に合い鍵がある、、、」
「と言う事は、明日香お姉様もそこに居る可能性が高いわ」
そして蓮香は再び桜の手を引く。
「出かける用意をして、桜さん」
「きっとお姉様に何か有ったんだわ」
蓮香の行動力に呆気にとられる桜。
蓮香は実家に電話をかけて応援を呼ぶことにした。
『無事であって下さい、、、お姉様、、、』




