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過去と明日香

明日香は蓮香とお互いに部屋の鍵を交換し合った後、少し雑談をして自宅へ戻った。



家の合い鍵を渡したのだ、何時来られても大丈夫な様にしておかねばならない。

これはもしや、気の休まる時間が無くなってしまうのでは、、、。


駄目だ、、、ネガティブな事を考えても仕方ない。

流石の蓮香でも連絡無しにいきなり合い鍵で、家に入って来る事は無いだろう。



そう考えることにして、気分転換も兼ねてお風呂に入ることにした明日香。

いつ蓮香や桜が来てもいいように下着もパットが仕込めるブラジャーにしておく。

部屋着もパジャマにする。

蓮香にプレゼントされた3人お揃いの超ミニのワンピースだ。



ライブ配信する時間も考えて、今夜は湯舟にお湯を張らずにシャワーで済ませる事にした。

髪の毛を洗い終えてトリートメントをする。

そのトリートメンを髪に馴染ませている間に身体を洗う。


その時、ふと思った。

『本当に華奢な身体だよな、、、』

『とても男には見えない、、、そのお陰で女装も全然バレずに居る訳だけど』



華奢な身体な上に余計な体毛も全く無いのだ。

普通の女子からすれば、羨ましい限りだろう。

しかし明日香からすれば若干複雑な気分だった。



自分がもっと男らしければ他に別の生き方も有ったのでは、、、と思ってしまうからだ。

心は完全に男なのだが、身体が中性的でそれもかなり女性寄りなのだ。

どうしようも無かった。



幼少の頃はこの外見がきっかけでイジメにも度々合っていた。

そして中学に上がる前に何とかしたいと考え始めた明日香。

悩んで出した答えが、女装して女子として生活する事だった。



家庭環境も最悪で、両親は既に明日香が中学に上がる前に離婚していた。

父に引き取られる事となった明日香は、自分の抱える複雑な問題を父に相談出来る訳も無く、一人で解決しようと試みる。


しかし周囲のサポートも無しに上手く行く訳が無かった。

中学では教師に理解されず、他の生徒には明日香が男で有る事がバレてしまう。

そして明日香は不登校に陥ってしまった。



その時、明日香は他人を信用できず、親も信用出来なくなってしまう。

だから自分の人生を自分自身で何とか出来る様にしたいと考え始めた。


そうして明日香は不登校なりに自宅で猛勉強をする。

全ては自分の道を切り開く為に。

中学校の相談室を利用し、定期的に行われる中間、期末などのテストを保健室で受けられるように校長に交渉し承諾される。


幸いな事に相談室の担当員や保健室の養護教諭は、明日香に理解的で唯一の救いだったと言えた。



そして一切、中学の同級生とは関りを持たずに明日香は卒業を成し遂げてしまう。

しかも常に学年首席の成績で。

これには校長も他の教師達も脱帽だったらしい。



高校は通信制に入学する。

そして父親に許可をもらい一人暮らしをする事になる。

この頃から明日香はスーパースターに通うようになり、新しい自分を見つけ始める切っ掛けとなった。



幼少よりゲームや歌が好きだった明日香。

心は男性だが可愛い洋服などにも興味があり、そう言った感性が無ければ今の自分は無かっただろうな、、、と明日香は思ってしまう。



そしてスーパースターの常連と楽しく過ごしている内に、人との関りも悪くないと思い始めた。

実際、人間関係は人が生きていく上で最も必要とされる物だ。

それを頭で理解出来ていた明日香は、自分の人生を切り開く力として”コミュニケーション能力”を磨こうと思い至る。



そうして今の神宮司 明日香が存在するのだ。



今思えば、そこそこに大変な人生だな、、、と思う。

今でこそ成功したものが有って生活も何とかなっている。

しかしこの先、何が起こるか分からない。



だから自分を磨く事を忘れてはいけない。

更に自分にとって有意義になる存在(ひと)を見つけ、自分がその人にとって有意義な存在になるよう努力しなければならない。

きっとそれが生涯に渡って友人と呼べる物に違いないのだから。



蓮香や桜は、私にとってそう言った存在なのだろうか?

相手に何かしてあげたいと想う気持ちは、意義や損得を超えた先にあると明日香は理念で感じとっていた。



それは言わば人が正論で動くのでは無く、感情で動く生き物だと言っているような物だ。

何とも人間とは面白い生き物だな、、、と自嘲してしまう。



少し過去に思いを馳せてしまい、呆然となっていた明日香。

シャワーで済ませる予定なのに、このままでは風邪をひいてしまう。

少しだけ温度を上げてシャワーで泡を洗い流し、髪に馴染ませたトリートメントも流す。


そしてシャワーで身体を温めた後、手早くバスタオルで身体の雫を拭う。

タオルドライで出来るだけ髪の毛を乾かし、ドライヤーできっちりと髪を乾かしきる。

こうしないと髪のキューティクルが痛んでしまうからだ。



お風呂上り用の化粧水瓶を手に取ると、あと1回分しかなかった。

「あ~、、、忘れてた、、、私としたことが」

と独り言を言ってしまう明日香。


独り言はストレスを抱えていたりすると出てしまうと一般的に言われている。

また自身を安心させる効果もある。

つまり情緒不安定気味な時に独り言が出てしまうのだ。



こんなところを蓮香や桜に見られたら恥ずかしいな、、、と思う明日香。

ウッカリして化粧水の予備を買っていなかった事と、独り言を言う明日香が自分の設定したキャラクターにそぐわないからだ。


しっかり者でクールな神宮司 明日香を大学では演じているのだから。

と言っても、桜や蓮香の前ではそれも崩壊しつつある、、、。



そう思い苦笑しながら手早く服を着て、外出用にロングパーカーを着こむ。

時間的に出かけるには少し遅いが、明日の朝使うシャワー上がりの化粧水が無いのは困る。


そういう訳で明日香は財布とスマホをパーカーのポケットにねじ込んで、近くのドラッグストアーに向かうのであった。



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