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既視感から始まる危険な序曲

夕方前に桜と蓮香は帰って行った。

どうやら蓮香は、お迎えの車を呼んでいたようで、桜も一緒に送って行くそうだ。



引き際が早かったように思える蓮香と桜。

明日香は蓮香に言質を与えてしまったように思えて、少し不安になっていた。

桜はと言うと通常運転な感じだ。

そもそもが突拍子もないところが有るので油断は禁物だが。



そして一人になって明日香の周辺に静けさが戻る。

何だか少し寂しい、、、。

蓮香と桜が傍にいると、賑やかで女の子特有の華やかさが有る。

その雰囲気が後を引いて、一人でいる事がまるで祭りの後のように感じてしまうのだ。



桜や蓮香と仲良くなる前は、こんな気持ちなどにならなかったのに。

『自分は弱くなってしまったのかな、、、』



以前の様に一人で居ることに何も不安や孤独を感じない、、、それが強いか?と言えば肯定も否定も出来ない。

ただ他人と密接になって行く事は、心を裕福にしていくように思える。


そもそも人とはコミュニティーを形成する生き物なのだ。

他人と関りをもって成長していく。

それが当たり前、、、。

今更何を思うか、、、と明日香は自嘲してしまう。




そして漠然ながらに想いが過る。

そろそろ自分はパートナーを選ぶ時が来たのかもしれない。

それは桜と蓮香だ。

普通ならば、どちらかを選ばなければならない。

しかし選んでしまえば、今の3人の関係は必ず崩れてしまう。



だから躊躇ってしまうのだ。

自分が男だとか、それがバレる、または告白する以前に。



気持ちがモヤモヤした。

問題が発生すれば直ぐに対処する性格だが、これはそんなに単純に解決出来るものでは無かった。

明日香は溜息をつく。

「何か気晴らしでもするかな、、、」



今からスーパースターに行っても常連はまだ来ていないだろう。

一人で黙々とゲームするなら自宅でも変わりない。

『なら突発のライブ配信でもするか』



思い立ったら即行動。

明日香は顔だし配信をするので、早々化粧と衣装の用意を始めた。

取りあえずは自分らしさを維持するのだ。


自分は悶々と思い悩むタイプではないのだから。

いつもの様に生活して自分らしく未来を見据える。

”今の私”を桜や蓮香は慕ってくれているのだから。







翌日の月曜の朝、大学の門を潜ったあたりで明日香は声をかけられる。

「明日香さ~ん、おはよ~」

桜の声だった。



振り返るとそこには、明日香が昨日コーディネイトしたそのままの桜が居た。

余程そのスタイルが気に入ったのだろう。

明日香はほくそ笑んだ。



陽の下で見る桜は、より一層綺麗にそしてお淑やかに見える。

明日香のプロデュースは間違っていなかったらしい。

「おはよう、桜」

「やっぱりとっても似合ってるわね」

「綺麗だよ」



そう言ってあげると桜は満面の笑顔で抱き着いて来た。

「嬉しい! 明日香さんのおかげだよ~」


公衆の往来で流石に抱き着かれたままなのは不味い。

直ぐに桜を離す明日香。

「はいはい、、、外では控えてね」


すると素直に頷いて桜は明日香の横に立つ。

そして失敗したとばかりに舌を出した。

「ごめんなさい、、、」

「嬉しくてつい興奮しちゃった」



『う、、、可愛い、、、』

不覚にも桜に萌えてしまう明日香。



そんなキャッキャウフフな女子のやり取りをした後、明日香は桜を連れ立って教室に向かう。

その時、妙な違和感?視線を明日香は感じた。



気になって明日香も視線を”その方向”に向ける。

何だかこの状況に既視感も感じる。

『あ、、、蓮香の時か、、、』


あの時も遠目から蓮香に見つめられていたのだ。

まさか蓮香じゃあるまいな?と笑いそうになりながら、明日香は視線の主を探した。



それは蓮香では無く、可愛らしい様相の女の子だった。

身長は150cmを少し超える程度の小柄で、中学生ほどにしか見えない。

大学にいるのだから大学生だろうし、恰好も大人びているのでそうなのだろう。



見た事が有るような無いような、、、。

明日香が見覚えがないのは、学部が違うからかもしれない。

そして蓮香も一見気が強そうに見えるが、この少女然とした人物はそれにもまして強そうに見えた。



桜も明日香を見つめる少女に気付いたらしい。

「あの子可愛いよね~、ちっちゃくて」

崇城(そうじょう) (みやび)って名前の娘だよ~」



明日香は桜の人的情報保持能力に感心してしまう。

「良く知ってるね、、、」

「この大学で桜の知らない人居ないんじゃない?」



桜は苦笑した。

「そんな事ないよ~」

「偶然ねサークル勧誘の時に一緒になったの」

「代議士の娘なんだって~」


「え」

と少し驚く明日香。

確か、第一党の幹事長をしていた人物が、崇城(そうじょう) (いわお)という名前だった筈。


とすれば、かなり大物の娘と言う事になる。

そんな人物に見つめられていたのだ、嫌な予感しかしない、、、。



明日香はそんな漠然とした不安を振り払うように、桜の手を引いて足早に教室へと向かった。


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