大接近フラグ
明日香によってイメチェンをした桜は、その恰好が気に入ったのか戻そうとしなかった。
なので明日香は、自分がいつも着ているような服に着替えさせることしする。
流石にチャイナドレスのまま過ごされて、家に帰すのも憚られたからだ。
選んだ服はワインレッドのブラウスと濃いブラウンのロングスカートだ。
更に伊達メガネを掛けさせて、良いとこのお嬢様の完成だ。
そして気に入ったなら服を貸してあげると言うと、桜は大喜びをした。
蓮香が少し羨ましそうにしていたので訊いてみる明日香。
「蓮香もイメチェンしてみる?」
すると蓮香は苦笑しつつ手を横に振って否定した。
「いえ、、、楽しそうですが、私はご遠慮しておきます」
「それよりも明日香お姉様のお世話をしたいです」
そう来たか、、、。
明日香は困った表情で笑みを返した。
「う~ん、、、世話の内容にもよるのだけど、、、」
「恥ずかしいのは嫌かな、、、」
言い方が私にとって悪かったのか、蓮香にとって良かったのか、、、。
蓮香の表情が明るくなった。
「で、では、お姉様が恥ずかしくない内容でしたら問題無いと言う事ですね!」
明日香にとって世話される事自体が恥ずかしいのだ。
少しあやふやな言い方が悪かった事を後悔する。
ここでキッパリ言ってしまうのも可哀そうなので、仕方なく明日香は、
「うん、、、」
と肯定してしまった。
それを聞いた蓮香は更に明るく嬉しそうな表情になった。
どうやら蓮香は好きな相手に対して尽くしてしまうタイプの様だ。
明日香はと言うと、好意をもって慕ってくる蓮香と桜を可愛がりたくなる。
勿論、世話もやきたくなる。
桜は桜で甘えたさんであり、私達3人の関係はバランスが良い。
だがここに来て明日香は、この2人と関係を深めても良いのか迷い始めた。
仲良くなればなる程に、好きになればなる程に明日香が男である事が問題になってくる。
きっと真実を知れば、二人は自分に幻滅する筈だ。
そんな不安を抱えつつも、2人を遠ざける事が出来ない明日香。
好きになってしまったが故の迷い。
まさに矛盾だらけだ。
心ここに在らずの明日香を心配した蓮香が、
「お姉様、、、やはりご迷惑でしょうか?」
「え? 世話の事かな?」
と明日香は訊き返す。
蓮香は少し俯くと、小さい声で話し出した。
「それもありますが、、、」
「私が傍にいて、あれこれ言うのがお姉様にとって負担なのではと、、、」
明日香は慌ててそれを否定した。
「そんな事は無いよ」
「蓮香は考え過ぎ」
「私は蓮香が傍にいると嬉しいし楽しいよ」
上目遣いで蓮香が明日香に寄り添ってきた。
「本当ですか?」
その表情が可愛かった為、萌えてしまい明日香はたどたどしくなってしまう。
「う、うん」
そして蓮香は明日香に抱き着くと胸に顔を埋めた。
「私が身近にいても、本当にご迷惑ではないんですね?」
『この子達は直ぐに私に抱き着いてくるな、、、』
『それにやけに同じ事を確認してくる、、、』
と内心で思いつつも少し嬉しい明日香。
可愛い蓮香に慕われていると思えたからだ。
「うん、大丈夫だよ」
すると安心したのか蓮香は明日香から離れて笑顔を見せた。
そして自分の荷物を持つと、
「今日はこれでお暇しますね」
「名残惜しいですが、これ以上ご褒美を頂くと我慢出来そうにないので、、、」
『な、なにが??!!』
と明日香は内心で突っ込んでしまった。
すると桜も自分の鞄を手に取り笑みを浮かべた。
「あ~それは性的な意味って事だね?!」
少し恥ずかしそうに{フフフ」と口元を隠し小さく笑う蓮香。
桜も真似して「フフフ」と笑う。
明日香は愛想笑いして、この2人と自分に引いてしまった。
それは怯えつつも、少し期待している自分が居たからだ。
貞操云々以前に、まずは自分が男である事を隠しているのが問題と言うのに、、、。
色々と先が思いやられそうであった。




