イメチェン
シャワーを済ませてリビングに戻る明日香。
リビングでは蓮香と桜が仲良く二人掛けのソファーに座り、何やら話をしていた。
戻って来た明日香に気付いた蓮香が、少し怒った様子で、
「明日香お姉様、、、桜さんのお世話をしたとか」
「うらやましいです!」
「ホぇ?!」
と変な声がでてしまう明日香。
何が羨ましいのか全く理解できない、、、。
そして蓮香はソファーから立ち上がると、明日香に抱き着いた。
「私もお風呂あがりに、お姉様にお世話して貰いたいです、、、」
「もしくは、、、お世話したいです、、、」
溜息が出そうになったが明日香は我慢する。
そして抱き着いた蓮香の背中に優しく手を回し撫でてあげた。
「はいはい、、、二人とも子供みたいなんだから、、、」
「今度してあげるから機嫌なおしてね」
すると蓮香は上目づかいで明日香を見た。
「え~と、、、私がお世話するのは駄目ですか?」
明日香は苦笑しながら首を横に振る。
「ダメダメ、、、私が恥ずかしいから!」
少し残念そうにするが蓮香は諦めたようで、
「分かりました、、、」
と言って明日香の胸に顔を埋めた。
そして暫く引っ付いたままの蓮香。
ハッとした明日香は、
「桜みたいに私の匂い嗅いでるでしょ!」
と突っ込む。
顔を離すと蓮香は愛想笑いをした。
「バレちゃいました、、、」
「流石に桜さんのようにはいきませんね」
『もう本当に可愛らしい事してくれるのはいいけど、、、』
『私が恥ずかしいのよ、、、』
と明日香は内心でぼやく。
そうこうしてると桜が少し不満そうに、
「明日香さ~ん、、、私のイメチェンは?」
と催促してきた。
明日香は蓮香を離すと、申し訳なさそうに桜の傍に向う。
「そうだったね、、、」
「じゃあ、とりあえず髪の毛と化粧から変えてみようか」
そして桜をソファーから立たせると、化粧台の前に座るよう促した。
ヘアアイロンの電源を入れて、程よい温度に設定する。
更に明日香が日頃使っているコスメをポーチから取り出す。
桜の日頃のメイクは、どちらかと言うとユルフワギャル風メイクである。
ギャル程コテコテしていなく、かといって柔らかすぎない言わば無害系天然キャラメイクだ。
桜のキャラに合ってはいるが、違う方向性も見てみたい。
故に明日香は、まず桜がしないであろうメイクをしてみる事にしたのだ。
それはクール系のメイクだ。
明日香が大学に通う時のようなクールで品の良い奴だ。
「お風呂上りに化粧水はちゃんとした?」
と一応確かめる明日香。
桜は笑顔で頷いた。
「うん、ちゃんとしたよ~」
「乳液とかBBクリームとかはしてないけど、、、」
明日香はスポンジとBBクリームのチューブを大きめの化粧ポーチから取り出す。
そして適量のBBクリームをスポンジに乗せて、桜の顔に満遍なく塗ってゆく。
「今日は出かける予定はないから、ファンデーションは控えておくね」
そう明日香が言うと黙って桜は頷いた。
その後アイシャドウを乗せていく。
クール系なので、黒、グレー、白ラメ、青系統でコントロールする。
濃くはせず、薄っすら分かる程度で良いだろう。
次はアイラインだ。
リキッドタイプでクッキリするようにラインを入れてゆく。
いつもの桜は少し垂れ目で、淡い感じにアイラインを入れていた。
ペンシルタイプをつかっているのだろう。
リッキドでクッキリ、しかも少しだけ釣り目にすれば、引き締まった印象でクールに見えるのだ。
予定通りその様にアイラインを入れて切れ長にして目元は完成。
睫毛は元々長いので付け睫毛も必要ない。
眉毛はペンシルタイプで、桜の髪色より少しだけ濃いめのブラウンをチョイス。
髪色と同じ色だと、眉毛が髪の毛にぼかされてしまう。
そうすると、顔全体がぼやけてしまう原因になるのだ。
眉毛は意外と重要なパーツで、ドール系やふるゆわ系ならいざ知らず、クール系はシャープなイメージが必要。
故にそれなりにクッキリ見えるよう、シャープに描いてあげた。
仕上げに濃いめの赤い口紅で〆る。
後ろで見ていた蓮香が感心した上に、何だか顔を赤らめた。
「凄い雰囲気変わりましたね!」
「私、、、この感じ好きです、、、」
明日香は楽しそうに頷いた。
「でしょ、桜はこんな感じも似合うのよ」
「後は髪の毛だね」
桜自身も驚いた様子で鏡を見つめて無言のままだ。
続けて明日香はヘアアイロンで仕上げにかかった。
手間はそんな取らない。
綺麗に真っ直ぐにするだけだからだ。
元々くせ毛では無い桜の髪の毛は、ヘアアイロンにより綺麗にワンレンのようになった。
最後に前髪を6:4で分けて完成だ。
大人っぽくなった、、、。
ヘアアイロンの電源を切り、桜を立たせる。
そして明日香は桜の手を引き、衣装部屋まで連れて行くことにした。