World Tubeと明日香
食後のアイスコーヒーを飲み、ホッと一息をつく明日香達。
蓮香と桜が落ち着いているのを確認して、明日香は話し出す。
「2人には私が秘密にしている事を話そうと思うの」
「それを聞けば、桜と蓮香には色々と面倒をかける事や、」
「協力してもらう事が発生すると思うけど、、、」
「大丈夫かな?」
キョトンとする2人。
そして桜は興味津々な様子で、
「秘密を知った代償って感じで格好いいね〜」
「私はオッケーだよ!」
『そんな大袈裟な物じゃ無いのだけど、、、』
と少し恥ずかしくなる明日香。
蓮香はと言うと、物凄く嬉しそうな顔をした。
「明日香お姉様の秘密を教えていただけるなんて、、、」
「私、今ここで死んでも本望です!」
蓮香の過敏な反応に明日香は後悔しかける。
『いや、、死んではいかんでしょ』
『これは桜より酷い、、、』
気を取り直すようにアイスコーヒーを一口飲み、明日香は2人を見据えた。
「World Tubeって知ってるよね」
頷く蓮香と桜。
「はい、世界最大の動画投稿サイトですね」
「うん、知ってるよ〜」
「よく観てるし〜」
明日香は動悸を感じる程に緊張していた。
それでも冷静さを装い、
「では、雨音って言う配信者を知ってるかしら?」
蓮香は笑顔で頷いた。
「存じてます」
「かなり有名な歌い手の方ですね」
「私達の業界では、抜け駆けスカウトされないように事務所同士が牽制し合ってますよ」
蓮香の言う通り、色々な事務所から連絡が来ていた。
もしプロとして活動するなら当社に連絡を、、、と言った感じのものだ。
明日香はWorld Tubeの雨音のプロフィールに、
"現在プロとしての活動は視野に入れておりません"
"スカウト、勧誘等の連絡はご遠慮願います"
と書き込んでおいたのだ。
するとスカウトにギリギリ達しない連絡が、芸能事務所から相次いでいるのだ。
困ったものだった。
そして明日香は話を続けた。
「雨音はね、、、私なの」
「私がWorld Tubeで歌の配信をしている"雨音"本人なの」
それを聞いた蓮香が固まってしまった。
予想外の内容だったからだろう。
そんなにショックだったのだろうか、、、?
「うん、知ってたよ〜」
とあっさり言い放つ桜。
「「え?!」」
明日香と蓮香は、桜を見て呆然としてしまう。
蓮香は少し取り乱した様子で桜に詰め寄った。
「ど、どう言う事なんですか?!」
「明日香お姉様があの"雨音"と言うのに驚愕させられましたが、、、」
「桜さんが、それを知っていたなんて納得いきません!」
明日香も蓮香と同じく納得出来なかった。
確かに桜は、何と言うか変に底の知れ無いところがある。
今のように仲良くなる前は、不気味に感じた事もあるくらいだ。
だからこそバレないように明日香は立ち回っていた。
それなのに、桜は知っていると言い放つ。
納得がいかない。
桜は困った様子で笑みを浮かべた。
「う〜ん、、、そう言われても仕方ないよ〜」
「私、雨音の大ファンだから」
「明日香さん見てたら直ぐに雨音の人だ〜って分かっちゃったよ」
『マジか、、、』
明日香は桜の神眼に脱帽するしかなかった。
大きく溜息をつく蓮香。
「そうでしたね、、、理論では無く感覚で判断する」
「桜さんは、そんな人でしたよね、、、」
そして明日香に切なそうな笑顔を向ける。
「桜さんに遅れをとった感じで悔しいですが、」
「お姉様が秘密を打ち明けてくれた事が、凄く嬉しいです」
「私で宜しければ何でも協力させていただきます」
嬉しい申し出だ。
その熱意が少し怖くもあるが、、、。
明日香は食器を片付けながら、
「じゃあ、私はこれから動画の編集をするから」
すると蓮香と桜が慌てたように立ち上がった。
「片付けは私がしますから」
「私も洗濯物取り入れて掃除しておくよ〜」
少し申し訳ない気持ちになる明日香。
「え、あ、うん、、、」
「じゃあ、お願いね」
そしてリビングから出ながら、
「私は歯磨きしてから編集作業に入るから、」
「貴女達もちゃんと歯磨きするのよ」
ニッコリ笑顔を返す蓮香。
「はい」
桜は笑いながら、
「やっぱりお母さんみたい〜」
「はいはい、良い子にしててね」
と明日香は苦笑しながら言うしかなかった。




