関西弁な肉屋と引率役(1)
蓮香が食事代を払うと言い出したが、明日香はやんわりと断った。
別に金欠と言う訳でも無いし、パジャマも買って貰ったのでここは私が出すべきだろう。
桜はと言うと、、まぁ普通の大学生?なので払わせる訳にはいかない。
それに本人もモテるので奢られ慣れているのか、下手に口を出さない。
流石、リア充な桜だ。
歩いて行っても良いのだが、お好み焼き屋の駐車場に停めたままなのは悪い。
なので一旦Zをスパースターの近くに有るコインパーキングに明日香は停めた。
ここは監視カメラも複数設置されていて安心な駐車場なのだ。
そして徒歩1分でスーパースターに到着する。
時刻はPM8時になっていた。
そろそろ常連連中が来出す頃合いだ。
いつもの明日香なら常連連中とゲームをしてワイワイ楽しむ所だが、今日は事情が違う。
蓮香と桜を連れて、果たしていつも通りに振舞って良いモノだろうか、、、。
取り合えず店の前で蓮香と桜の様子を見ようと振り返ると、蓮香が少し驚いた感じだった。
そしてお好み焼き屋の時のように蓮香は呟いた。
「ノスタルジーな、、感じのところですね、、」
詰まる所、「古臭い!」と言いたいのだろう。
確かに、今どきのゲームセンターとは一線を画する様相だ。
それにしても蓮香は、オブラートに包んで呟くのが上手い、、。
一方、桜はと言うと、特に気にした風も無くいつも通りだ。
まあ、一度来ているし本当に適応能力が高いのかもしれない。
しかし問題はここからだ。
店内に入れば、さらにノスタルジーさが際立つ。
スーパースターの独特の空間と雰囲気に、彼女達が耐えられるのか疑問だ。
広い方のフロアーに入り、目前に広がるのはレトロなテーブル筐体だ。
それを見て桜が感心したように、
「これいいよね~」
「何か食べたり飲んだりしながらゲームし易そう」
明日香は苦笑する。
『そこ感心するところなんだ、、』
そして指でトントンとテーブル台を叩くと、
「これはね、本来そういう使用目的なんだよ」
「昭和時代は喫茶店とかに置かれていたしね」
それを聞いた蓮香も感心する。
「凄いレトロな物が今でも稼働してるんですね」
頷いてから明日香は、率直にここで何がしたいのか2人に訊いてみる事にした。
「え~と、、蓮香と桜は、、ここでどうしたいのかな?」
「私が何をしてるのか知りたいの?」
「それともゲームをしてみたいのかな?」
桜はニッと笑うと、片手を上げた。
「どっちも~!」
蓮香もニッコリと明日香に微笑みかける。
「そうですね」
「出来れば、明日香お姉様が楽しんでらっしゃる物を一緒に遊んでみたいです」
「なるほど、、、」
と言って明日香は考え込んだ。
『中々難しい事だぞ、、、』
『好みも有るし、ここのゲームは全体的に難易度も高いし、、』
すると狭いフロアーから30代半ば程の男性が移動してきた。
明日香を見ると、
「お~、アメヤンやんけ~」
「今日は早いな」
「うぉっ、肉屋!」
と、ついウッカリいつもの感じで明日香は喋ってしまった。
蓮香が不思議そうに、
「アメヤン、、、?」
桜も不思議そうに、
「え? 肉屋?」
桜さん、、普通そこは”肉屋”で不思議がる所じゃ~無いでしょ、、。
と内心でやんわり突っ込んでしまう明日香。
そしてその”肉屋”は明日香を上から下まで見る。
「今日はえらい感じちゃうやんけ~」
「なんかエロイのぅ~」
明日香はいつも通りの”肉屋”に困って苦笑してしまう。
今日はリア充な女の子2人連れてるのに、、。
下品だよこの人、、。
蓮香が明日香の横まで来ると、
「え~と、、この方は?」
ちょっと焦る状況だが、明日香は冷静さを装い蓮香に紹介する。
「このゲームセンター・スパースターの常連だよ」
「ここでは藤君って呼ばれてる」
蓮香は軽く藤に会釈する。
「私は、武野内蓮香と言います」
「え~~と、、、雨音お姉様と同じ大学に通う者です」
藤はほんの少しだけ畏まった仕草をする。
「これはこれは、えらいご丁寧に」
「で、、後ろにいるボインのお嬢ちゃんは?」
「アメヤンの連れやろ?」
『こいつは、、デリカシー無いわ~』
と怒りそうになる明日香。
しかし当の桜は気にした様子も無く笑顔を藤に向けた。
「私は桜だよ~、桜って呼んでね~」
それを聞いた藤は「フッ」と笑うと、
「お~、そのまんまやんけ」
「まあええわ、、桜もあれか? アメヤンと同じ大学か?」
桜は藤に歩み寄る。
「そうだよ~」
「今日はね、、あす、、じゃなかった、、雨音さんが何して遊んでるのか教えてもらい来たの~」
明日香は、この桜と藤が何となく似た者同士でフィーリングが合うような気がした。
と言うか、どっちも人の懐に入るのが上手いタイプだ。
慣れ慣れしいところはあるが、、。
それにしても、蓮香も桜も気を使ってくれているようだ。
わざわざ私の事を”雨音”と言ってくれているのだから。
蓮香が思案するように藤へ話しかけた。
「実は、雨音お姉様と一緒に楽しめるゲームを探してまして」
「3人以上で一緒に楽しめるゲームなんて、普通はないですよね?」
藤も思案する素振りを少しみせる。
そしてわざとらしく何か思いついたように、手のひらを拳で打った。
「あれがあるじゃ~ないか!」
「D&D3とか、エイソルとか、天地を制すとかよ~」
「あ~、、たしかに、、」
頷いてしまう明日香。
「でも3人でやったら難易度が、、それなら4人でやる方がいいのだけど、、」
と反論してみた。
すると藤はドヤ顔で明日香を見やった。
「俺がいるじゃ~ないか!」
「引率してやるよ」
桜が驚いた顔をする。
「藤君、ゲーム上手いんだ?!」
『って、、桜さん、一回り以上歳上の肉屋にタメ口か、、』
『まあ、私もそうだけど、、』
と内心で桜と己に突っ込んでしまう明日香。
蓮香は嬉しそうに藤にお辞儀すると、
「では、お願いしてもいいですか?」
藤は何だか嬉しそうにガッツポーズをする。
「おう! 任せとき~」
まあ、お節介な女好きの引率役をゲットしたのはいいけど、、。
本当にこんな展開で良かったのだろうか、、、と心配になる明日香であった。




