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プロローグ(2)

初回は2話連続投稿です!

明日香が教室から出ようと席を立った時、背後から声をかけられた。



「相変わらずだねぇ~、、神宮司さん」

今朝と同じ声、、、そう新見桜だ。



明日香は桜に振り向くと、首を傾げて問い返す。

「うん? 何の事?」

勿論、桜が何を言っているのかは大体わかっているのだが、。



桜はニヤニヤしながら明日香の傍までやってくると、小声で囁いた。

「そうそう、そう言う所、」

「誰も傷付かないように、上手く転がして上手く躱す、、」



明日香は眉をひそめた。

そして気付かれないように直ぐ表情を戻す。



人懐っこい笑顔で桜は明日香を見つめた。

「ねぇ、お昼一緒しない?」



逡巡する明日香。

最近、この娘はやけに私に付きまとって来る。

別に不快な訳でも無いのだが、愉快な訳でも無い。


この新見桜の腹が読めないのが明日香としては不安なのだ。

そろそろこの辺りで真意を確かめておいた方が良いかもしれない。



笑顔で、そして周りに聞かれないように小声で明日香は答えた。

「うん、いいよ」






明日香は桜を伴って取り合えず学外にあるコンビニに向かう事にした。



桜は歩きながら楽しそうに明日香へ話しかける。

「神宮司さんって、みんなと結構仲良さそうなのに、」

「誰かと一緒に居る所、あまり見かけないよねぇ」



少し考える素振りを見せて明日香は答える。

「う~ん、、」

「そうかな、、そんな事無いと思うんだけど、、」


そして笑みを桜に向ける。

「ほら、こうして新見さんと一緒してるじゃない?」



不満そうに考え込む桜。

「う~ん、、そうなんだけどね、、」

「でも今回は私が無理を通したような、、」



自覚あるんかい!、、と内心で突っ込む明日香。



そうこう言っている内にコンビニに到着する。


明日香は、サンドイッチと野菜ジュースをチョイス。

桜は明日香と同じサンドイッチとミルクティーを選んだ。



イートインスペースが有るので、二人でそこで食べる事にした。



問題を後回しにしないタイプである明日香は、早々に桜へ訊いてみた。

「新見さん、、、最近私によく絡んでこない?」

「私に何かして欲しいことでもあるの?」



まるでハムスターが急に食べるのを止めたように、桜もサンドイッチを咥えたまま硬直する。

「、、、、、」


何だか小動物みたいで可愛い、、。


そして咥えた分を急に食べ出して、桜はミルクティーで流し込んだ。



それから桜はジッと明日香を見つめると、

「迷惑だった?」



明日香は、桜のコロコロ変わる表情を見て面白くなってしまった。

不覚にも、、。

そして明日香は苦笑する。

「迷惑って程じゃないよ、、」

「ただ腹の内が読めない相手は不気味かな、、」



今まで近寄って来る者は、明日香からすれば分かり易い人間ばかりだった。


男子なら恋愛的な好意を持っていたり、女子であるならそれに(あやか)って男をゲットしようと近づいて来たり。


打算的な感情は明日香からすれば読みやすくて助かる。



しかし、新見桜は少し違う感じがする。

もっとこう、ふわぁ~としていて掴みどころがない感じだ。


友達でもないのに、そのように接してこようとしたり。

かと思えば今朝のように、恋愛感情がある相手にするようなスキンシップをしたり。

毎回バラバラなのだ。



新見桜は少し恥ずかしそうにモジモジした。


明日香はすかさず、「トイレいきたいの?」と言ってみる。


怒った様子で桜は言い放った。

「ち、違うよ!」



新見桜が何だか言いにくそうだったので、ボケをかまして緊張?を解いてあげたのだ。


すると桜はおずおずと、

「神宮司さんと、、仲良くなれたらなぁ~と思って」



不思議そうに素っ気なく明日香は問い返す。

「え? 私と?」

「どうして、、、?」



明日香のその反応に、「え~~」と少し引き気味の桜。

「だって、、そう思っちゃたんだから仕方ないよ~」

「そんな素っ気なくしなくても~」



明日香は笑みが零れた。

「ごめんね、、」

「悪気があった訳じゃ無いんだよ」


ふと明日香は思った。

『この娘は天然なのかもしれない、、、』

『でも私の立ち回りをよく見てるし、分析してそうだから、、油断は出来ない、、』



桜に優しく微笑みかけて、明日香は再度問いかけてみた。

「じゃあ、、ゆっくり考えてみて」

「どうして私と仲良くしたいのかな?」



桜はサンドイッチをモグモグしながら、コンビニの外を眺め出す。

多分考えているのだろう。



モグモグした分を飲み込むと桜は呟くように話出した。

「神宮司さんは、頭も良くて教授とかからも凄く評判いいでしょ」

「それでいて人当たりも良いし、超美人だし、、」

「ちょっと憧れてたかも、、、」



明日香はサンドイッチに手を付けながら無言で桜に先を促す。



すると桜は明日香を真っ直ぐに見つめた。

「憧れた人と仲良くなりたいと思うのは変かな?」



明日香も桜を真っ直ぐに見返す。

『憧れたというのは多分本心、、、』

『でも何か違和感がある、、、』



小さく溜息をつくと明日香は素っ気なく言い放つ。

「詰まる所、私と友達になりたいって事なのだろうけど、、」

「もうこの状況、友達のような気もするよ」

これは社交辞令で、引っ掛けでもあった。



桜はちょっと嬉しそうだ。

「え?! そ、そうなのかな?」

「じゃあ、休みの日に一緒に遊びに行ったり、おうちに遊びに行っちゃったりしても良いのかな?!」



一瞬、”嫌!”と言う感情が顔に出そうになるが堪える明日香。

『やっぱりそう来たか、、、』


明日香は”友達”という概念があまり好きではない。

友達と言ってしまえば、何でもして良いと考える輩が多いからだ。



友達だから、”愚痴を聞いてくれる”。

友達だから、”一緒に遊んでくれる”

友達だから、”悩みを聞いて相談に乗ってくれる”

友達だから、”共有してくれる”

友達だから、”etc.......”



それは詰まり友達を都合よく解釈して、相手の時間を奪っているのだ。

本当の友達、、”親友”であるなら、その人の事を考えてしまい時間を奪うなんて行動は出来ないはずだ。



だから明日香は”友達”を作らない。

中途半端な仲良しは必要ないのだ。



明日香は何も変わった様子が無い。

だが桜は空気を敏感に感じ取ったようで、心配で不安そうな顔をしていた。


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