触れ合う乙女達?と遊戯(2)
午後から明日香は、桜と蓮香を連れ立って服を見に行く事となった。
アウトレットモールは車でも遠いので、近場のショッピングモールにした。
それでも車で30分はかかるのだが。
蓮香はお抱えの運転手が居るので、足代わりに使って欲しいと明日香に申し出てきた。
しかし明日香も今日に限っては、車で大学へ来てしまっている。
明日香は困った表情で少し考え込んだ。
「う〜ん、、」
その明日香の様子を見て蓮香が心配そうに、
「何か問題がありましたか?」
明日香は愛想笑い気味で答える。
「実はね、近くのコインパーキングに車停めてて、、」
「ちょっとマニア向けの車だから、置きっ放しは怖いかな〜って、、」
桜が自慢げに蓮香へ向かって言い放つ。
「カッコいい車なんだよ〜」
「羨ましいでしょ〜?」
何故、桜が自慢げなのか、、。
それを聞いた蓮香は困った様子で苦笑する。
「えぇ、、見てないので何とも言えませんけど、、」
「お姉様、車お持ちだったんですね」
そうして少し思案する。
「でしたら、私の方がお姉様の車に乗せていただくと言うのはどうでしょうか?」
2ドアだが、一応後部座席もある。
問題ないか。
明日香は2人を見やると、
「じゃあ、皆んなで私の車乗って行きましょうか」
笑顔で返事をする桜と蓮香。
「は〜い」
「分かりました」
そうと決まれば直ぐに行動だ。
3人とも割とせっかちなので、さっさと大学を出て明日香の車が停めてあるコインパーキングに向かう。
コインパーキングに到着する3人。
レトロなスポーツカーを目の当たりにした蓮香は、桜と同じようなリアクションだった。
「想像の斜め上でしたわ、、」
「もっとこう、、女性らしい車かと思ってました」
桜と蓮香は顔を突き合わせて、お互い頷く。
「でしょ!」
「私もビックリしたよ〜」
そして何故かうっとりして、車と明日香を交互にみる蓮香。
「でもそのギャップが良いです」
「ここまで来るとお似合いですね」
明日香はキーレスキーで車のロックを解除すると、
「これねホントにレトロカーなのよね」
「1971年式だから、、物珍しくて悪戯されたり、盗難に合うのが怖くってね、、」
座席シートを前に倒すと、何故か桜が後部座席に乗り込んでいく。
桜は蓮香にニカっと笑みを向ける。
「私は今朝乗せて貰ったから、次は蓮香ちゃんが助手席に乗せて貰いなよ~」
何だか微妙に気遣いが出来る娘だな、、と思いつつ座席を戻す明日香。
それから助手席のドアを開けて蓮香に乗るように促す。
「どうぞ、蓮香」
すると恐縮して蓮香は助手席に乗り込んだ。
私に車のドアを開けさせたのが、蓮香からすると気が引けたのかもしれない。
次にZに乗せる事があったら勝手に乗ってもらう事にしよう。
明日香も乗り込みエンジンをかけた。
薄手のカーディガンがシワにならないように脱ぐ。
そして鞄と一緒に後部座席の桜に渡す。
ロングなのでお尻とシートに挟まれて簡単に皺くちゃになってしまうからだ。
半袖のワンピースを着ているので、明日香の細くて白い腕が露出する。
スレンダーで尚且つメリハリのある明日香の身体と相まって扇情的だ。
その明日香を横目で見ていた蓮香が呟いた。
「明日香お姉様、、本当に細くて白くて、、スタイルが良くて羨ましいです」
少し照れる明日香。
「そ、そうかな、、?」
「蓮香もスタイル良いし、綺麗だと思うよ」
そう言われて嬉しかったのか、顔を赤くして蓮香ははにかんだ。
「私は? 私は~?」
と突然後部座席から言い放つ桜。
桜も随分スタイルが良いと思う。
身体は細い方なのに巨乳なのだから、女子から見てもハイスペックな筈だ。
羨ましい限りである。
そんな風に考えていると蓮香が不満そうに言った。
「桜さんは、胸が反則です!」
「可愛らしい顔して、、、」
明日香は苦笑するしかなかった。
「そうだね、、桜は女の子が羨む体形してるかなぁ」
『まあ蓮香も中々の胸だと思うけど、、Eカップくらいあるんじゃないかな、、』
ヘヘヘ、、と自慢げな笑いを見せる桜。
こんな少し子供っぽい仕草が、見た目とのギャップを生んでいる。
それが桜の魅力なのかもしれない。
10分ほど車を走らせて信号待ちをしていると、蓮香が指で明日香の腕に触れて来た。
「綺麗な肌してますね、、、」
困ってしまう明日香。
「信号待ちだから良いけど、、、運転中は触らないでね、、」
ハッとした様子から嬉しそうな顔になる蓮香。
「え?!」
「では、それ以外の時は色々触れてもいいのですか?」
この娘は突飛な考えに到達するな、、とぼやきながら明日香は車を走らせる。
「う、うん、、、程ほどにね、、」
「分かりました!」
と蓮香は笑顔で答えた。
すると桜が後部座席から乗り出して来る。
「明日香さん、抱き心地も良かったよ~」
「柔らかいし、いい匂いするし~」
あぶなあぶない、、後部座席でもシートベルトしなきゃ、、。
そう明日香は思い、すぐに注意する。
「桜、、、後ろでもシートベルトしておいてね」
「は~い」とまるで子供みたいな生返事をして桜はシートベルトをしだす。
何と言うか、、、この2人は可愛い。
だからついつい我儘を聞いてしまいそうな自分が怖い。
何だか上手く誘導されているような、、、そして流されている様に感じる。
いつもの神宮司明日香らしくない、、。
もっとクールな筈なのだ。
『調子が狂うなぁ、、、』
昨日までそんなに親しくなかった新見桜。
そして武野内蓮香に至っては今日まで名前も知らず、突然慕っていたとカミングアウトされてしまった。
急転もいいところだ。
少し胸の辺りがむず痒くなり暖かくなる。
この感覚が好意を向けられた事に因るモノなのは分かる。
いつもその様な周りの視線に晒されて来たのだから。
でも、自分の中から出て来るモノも有るように思えた。
明日香はそれが何なのか朧げにしか分からない。
そしてそれがハッキリ理解できるのは、もう少しだけ後になる。