明日香達とヤン・メイリン(2)
もう1曲カラオケで歌を披露する事になった明日香。
チョイスした曲は月城レインの人気定番曲"clumsy"だ。
これはメイリン社長の好きな曲だったらしく、随分と喜んでもらえた。
更に雅も明日香の歌声に魅了されメロメロになってしまう。
元より懐かれていたのに、前に増して明日香の事が好きになってしまったらしい。
抱き着いて離れてくれない事態に発展する。
「雅、、、お願いだから離れて~」
「身動きが取れないよ、、、」
可愛い雅に抱き着かれるのは嬉しいが、まるで珍獣オポッサムの子供みたいに引っ付いて離れないのは困る。
すると蓮香と桜が羨ましそうに詰め寄って来た。
「雅ちゃんだけズルいよ~、私も!」
「雅さんばかりでは無く、私も甘えさせてください!」
そしてそのまま明日香に抱き着いてしまう2人。
最早、押しくら饅頭もとい、抱き着き饅頭である。
そんな4人の美少女を見てメイリン社長は、
「私もハグして貰っていいでしょうか?」
と少し遠慮がちに申し出て来た。
メイリン社長がそんな事を言うとは、皆んな思っていなかったので少し驚いてしまった。
桜と蓮香は少し呆気に取られて、明日香から離れる。
「え、あ、はい、、、」
「どうぞ、、、」
雅だけ少し強気で明日香から離れると、
「すこしだけですよ、、、」
などと言う。
メイリン社長は何だか申し訳なさそうに3人へ小さく頭を下げると、明日香へ歩み寄った。
『いや、、、私、ハグの許可出してないんですけど、、、』
『私の意思は尊重されないのね、、、』
明日香は内心でぼやきつつも、メイリン社長が迫るのを諦めて他人事のように見つめる。
ゆっくりと、そして優しく明日香を抱きしめるメイリン。
メイリンの女性らしい柔らい体の感触と、ほのかに甘い香りが明日香に伝わった。
『いい匂い、、、』
『それに凄く柔らかくて、、、』
明日香がウットリしているとメイリンもウットリした様子で告げる。
「神宮司さん、凄く良い香りがしますね」
「それに凄く抱き心地が良くて、ずっとこうして居たいくらいです」
お互い同じような感想で、明日香は笑いが込み上げる。
すると見かねた雅が、メイリンを背後から掴み引き剥がそうとした。
「だ、駄目です!」
「そこまでです!」
雅の剣幕に押されてメイリンは名残惜しそうに明日香から離れる。
本来は気弱な筈の雅だが、自分の大事な物が他人に渡そうになると性格が変わるようだ。
この場合、大事な物は明日香になるのだろう。
嫉妬と言えば分かり易いかもしれないが、巨大企業の社長相手に一歩も引かない所を見ると、相当に気が強いと言えた。
再び雅が拗ねたように明日香に抱きついてしまった。
苦笑する桜と蓮香。
メイリンも苦笑いしながら、
『神宮司さんと仲良くなるには、先ずは崇城さんを懐柔しないと駄目そうね、、、』
と内心で呟き溜息をついた。
明日香は抱きつく雅を撫でつつメイリンへ尋ねる。
「これからどうしましょうか?」
「私は勝手にご一緒するだけなので、神宮司さん達の予定通りにされれば良いですよ」
「私の事はお構いなく」
とメイリンは笑顔で答えた。
と言われても、EVOの社長をおざなりに出来る訳が無い。
明日香は困った様子で桜と蓮香を見やった。
「う〜ん、、、私達はプールに遊びに来ただけなので、特に予定は、、、」
「2人とも、この後の予定何か立ててる?」
桜は少し考える素振りを見せたが、
「え~と、、、何も考えてないや、、、」
そう愛想笑いで誤魔化しつつ言った。
無理に格好付けない所が、さくらの可愛い所である。
一方、蓮香はスマホで何か確認しながらメイリン社長へ告げた。
「失礼ですが、メイリンさんの事を調べさせて頂きました」
「ゲーム制作だけでなく、ご自身もゲームが随分お好きなようですね?」
いきなり問いかけられて少し戸惑うメイリン。
「えっ、、、そうですね」
「アクションゲームが全般的に大好きですよ」
すると蓮香は笑顔を明日香とメイリンへ向けて告げた。
「本当は明日にする予定だったんですが、、、」