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明日香達とヤン・メイリン(1)

明日香がカラオケで歌声を披露した事で、メイリン社長の琴線に触れてしまったらしい。

いたく明日香の事を気に入ってしまった。



その為、今日はこれから一緒に過ごすと言い出したのである。

水春をメイリン社長から解放する目的は達せられた訳だが、ある意味、明日香が生贄になった感じだ。



嫌と言えば、また水春の方へ行ってしまうかもしれない。

それに水春の為に一肌脱ぐと決めた手前、メイリン社長の申し出を拒否出来ない明日香であった。



「分かりました、、、」

「私と居ても余り楽しい事は無いと思いますが、それでも構いませんか?」

そう明日香は諦めたようにメイリンへ告げる。



するとメイリンは満面の笑みで答えた。

「いえいえ、気にしないで下さい」

「私が勝手にご一緒にするだけなので、お気遣いなく」

「それから下手に持て成そうとも思わないで、自然体でお願いしますね」



何とも気さくな言い様で明日香は感心してしまう。

人の上に立つ優秀な人程、公私を分けてプライベートは優しく気さくだったりする。

そしてメイリン社長はそれに該当していて、とても器用に人間関係を構築するように思えた。



自分の都合に良いよう関係を築き、かつ相手が損をしたような気持ちにさせない。

少しズルい所が自分と似ている気がして、明日香は少しニヤけてしまった。



「では、私は退散するとしましょう」

「延期した選考会の段取りもありますので、、、」

そう告げて水春はソファーから立ち上がる。


そしてメイリン社長に申し訳なく頭を下げて言った。

「折角こんな高級な部屋をとって頂いたのに、すみません、、、」



片手を軽く横に振ってメイリンは笑顔を浮かべる。

「いえ、お気になさらず」

「またお互い忙しく無い時にでも"ゆっくり"お話しましょう」


明日香はそんなやり取りを見て苦笑する。

暗に、今日は見逃すから次は覚悟せよ、とメイリン社長が言っているのだから。


それが分かっているのか、水春は逃げるようにスイートルームを後にした。

去り際、明日香に申し訳なさそうな顔で軽く頭を下げたのが印象的である。




「さて、どうしよっか?」

と桜が可愛らしく首を傾げて言った。

桜のこんな仕草を見ていると、わざとなら"あざとい"なぁと明日香は思う。


もし無意識の天然なら、もう愛され体質というしか無い。

しかし昨夜、二人きりの時に聞いた話だと、これは桜の努力の賜物なのだろう。



そんな風に明日香が想いに耽っていると、雅がしがみ付いてきた。

「雅、どうしたの?」


明日香が尋ねると雅はうっとりとした表情で、

「明日香お姉様の歌声は最高でした」

「もうキュンとして萌えてしまって、、、濡れてしまったかも、、、」

などと言い出した。



『ぬ、濡れるって、何がっ!?』

と突っ込みそうになるが明日香は慌てて堪える。

ここで合わせたら雅の思うツボであり、益々ややこしくなりそうだからだ。



「え〜と、、、どうしよう」

しがみ付いて離れない雅に明日香は困り果てる。


「じゃあ、もう一曲歌ってあげたら?」

と助け舟なのか、余計な事を言い出す桜。



そうすると雅が調子付いて目を輝かせてしまう。

「聞きたいです!」


続けてメイリン社長までもが切なそうに明日香へ訴えた。

「私も神宮司さんの歌声に魅了されてしまったわ」

「是非、もう一曲お願いできますか?」



褒められ、もっと聞きたいと言われて嬉しく無い歌い手など居ない。

メイリン社長の言い様や雰囲気が、あざといとは思うが、ここは雅の事も考え乗っておく事にした。

「では、もう1曲だけ歌いますね」



これには大喜びする雅。

メイリン社長も嬉しそうに軽く頭を下げた後、申し訳なさそうに告げた。

「無理を言ってすみません」

「持て成そうと思わないでと言った手前ですのに、、、」



我儘を言った後は、ちゃんとフォローも忘れない。

流石、巨大企業の社長と言える。

と言うか、この程度の人心操作が出来なくては、EVOの社長は務まらないのかもしれない。



そう感心しつつ明日香は次に歌う曲を選ぶ。

そしてほんの少しだけ、メイリン社長を持て成そうと思うのであった。


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