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明日香とZとナイスミドル

桜がバスルームに行っている間に、明日香は朝食を用意し始める。



ベーコンエッグを2人分焼く。

そしてストックしてあった大根サラダを2人分取り分けて皿に盛る。

ドレッシングも3種類冷蔵庫から取り出してテーブルに置く。



テキパキと朝食を用意してゆく。

自分で言うのも何だが、いいお嫁さんになれそうだ。


トーストも準備したいが、焼きたてが良いだろうし、桜が戻るまで待つ事にした。



暫くすると桜がリビングにやって来た。

ちゃんと自前の服を着ている。

明日香が綺麗に畳んで、脱衣所の棚に置いたのを気付いてくれたようだ。



桜は頭を下げて来た。

「神宮司さん、、何から何までお手数かけました」


明日香は笑顔を桜に見せると、食パンをオーブンで焼き始めた。

「気にしないで」

「だだのお節介だから」

「それより朝ごはん食べるでしょ?」



頷く桜は嬉しそうに朝食が並ぶテーブルの前に座った。

「うん! ご馳走になります!」



焼けたパンにバターを塗って皿に乗せる明日香。

そして待ち遠しい様子で居た桜の前に置いてあげる。



更に野菜ジュースとアイスコーヒーを冷蔵庫から取り出してグラスと共にテーブルに置く。

「好きな方か、何だったら両方飲んでもいいわよ」

と言って明日香は桜に笑いかけた。



「食いしん坊の欲張りみたいじゃない!」

と少し怒った顔を桜はしたが、直ぐに笑い顔に変わった。



何だが明るい朝だな、と明日香は思った。

1人では淡々と食事を摂るだけなので新鮮な気分だ。



明日香は食べながら少し気になっていた事を桜に訊いてみた。

「新見さん、、自宅まで送ろうか?」

「いくら洗濯したからって昨日と同じ服で大学へ行きたくないでしょ?」



桜はベーコンエッグをモグモグしながら思案しだす。

そして飲み込むと明日香を見つめて困り顔をした。

「うん、、でも結構遠いよ」

「タクシーは勿体無いし、電車だと午前中の講義は間に合いそうに無いから、、」

「講義の方、諦めようかなって、」


そう言った後、首を傾げる桜。

「え?」

「送るって、、神宮司さんが?」

「1人で大丈夫だよ〜」



明日香は苦笑した。

言い方が悪かったらしい。

それに勉学に励むより身なりを気にする所が流石である。

「ここから30分くらいって言ってたわよね」

「私が車出すから新見さんの自宅まで送るよ」



驚いた様子の桜。

「神宮司さん、車持ってるの?」



明日香はコーヒーを一口飲んで頷く。

「うん、、基本的に大学には乗って行かないけどね」


楽しそうな表情で桜は答えた。

「そっかぁ、、神宮司さん車あるのかぁ」

「じゃあ、お願いします!」


そう話しているうちに明日香はサッサと朝食を済ませてしまう。

そして自分の食器を持ってキッチンに向かうと、

「新見さんはユックリ食べててね」

「私は歯みがきしてくるから」



まるで子供のように桜は片手を上げて返事する。

「は〜い」



明日香が脱衣所から歯磨きを済ませて戻ると、桜も食べ終わり食器を片付けていた。



明日香は化粧台の前に座り手早くメイクを始める。

下地はシャワー上がりに仕上げていたので、アイラインや軽くアイシャドウを入れるだけ。

後は口紅を塗って仕上げだ。



基本的にナチュラルメイクになる。

清楚でシックな印象の明日香は、そもそもゴリゴリのギャルメイクなどは合わないのだ。





そうして桜が歯磨きをしている間に、明日香は出かける準備を完了させてしまう。

すると慌てた様子で桜がリビングに戻って来る。

「ごめんね、、待たせちゃって」



明日香は笑顔を桜に向ける。

「大丈夫だよ」

「新見さん、メイクはどうするの?」



「神宮司さんに家まで送って貰えるから、帰ってからするよ」

と、すっぴんが平気そうな桜。


正直、すっぴんでも桜は全然問題が無かった。

逆に可愛らしさに拍車がかかるくらいだ。

恐らく幼く見えるから化粧をするのだろう。



出かける準備が2人共整ったので、戸締り確認を済ませ家を出る。


明日香が玄関の扉に鍵をかけていると、桜が不思議そうに訊いて来た。

「車はどこに停めてるの?」


このマンションは一見すると駐車場が見当たらない。

だから不思議に思ったのだろう。



明日香は車のキーを確認すると、

「駐車場はね、地下にあるのよ」

「駐車場まではエレベーターで向かって、車での出入りはマンションの裏からになるの」



納得した桜は更に興味津々な様子だ。

明日香がどんな車に乗っているのか気になるのだろう。


そして桜を連れ立って明日香は地下駐車場にエレベーターで向かう。



明日香は地下駐車場に着くと、エレベーターフロアから出てすぐのスペースで足を止める。


そこには見慣れない少しレトロな黒いスポーツカーが停めてあった。

明日香がキーレスキーを使うと、それがヘッドランプを一瞬点灯させロック解除の音がした。



驚いた表情を明日香に向ける桜。

「おぉ!?」

「予想の斜め上だ!」



明日香は助手席の扉を開けて桜を乗るように促す。

「これはねフェアレディ240Z-Gって言ってね、半世紀程前のクラシックカーだよ」

「でもオプションで色々内装もいじってるから、レトロさは全く感じないけどね」



桜が助手席に乗り込んだのを確認して、明日香は優しく扉を閉める。

そして明日香も乗り込むと、

「昔、偶然再放送で見た車のアニメでね、」

「登場人物の渋いナイスミドルが乗ってた車種なんだ」



桜は意外そうな顔を明日香に目向けた。

「へぇ〜ナイスミドルが好みなんだ?」


苦笑しながらエンジンをかける明日香。

「違うよ〜」

「確かにアニメではレースで、主人公を寄せ付けない技術と格好良さは有ったけど、、」

「やっぱり車の方に憧れたかな」



クスクスと可愛らしく笑う桜。

「何だが嬉しいなぁ」


Zを発進させ駐車場の出口に向かう明日香は首を傾げた。

「え? どうして?」


すると桜はニッコリ微笑んで、

「だって私の知らない神宮司さんの一面が見れたから」

「それに意外と男の子ぽい所があるんだなぁ〜て」



ドキッとする明日香。

背中に氷水を流し込まれたような錯覚に囚われた。

「まぁ変わってるとは良く言われるよ」

と返して平静さを装う。



そして駐車場の出口で一旦停まって、桜から自宅周辺の住所を訊く。

ナビに入力する為だ。



その後は特に明日香をドキリとさせる事態も起きず、すんなりと桜の自宅付近まで到着する。

桜を降ろした後、一旦帰宅するのも手間なので、大学の近くにあるコインパーキングに車を停める事にした。



何だが騒がしいというか、賑やかな朝だったなと車の中で思い返す。


3年以上一人暮らしをしていた明日香にとっては新鮮だった。

家族とも疎遠で今は連絡さえ取っていないからだ。



もし恋人が出来たりしたなら、昨夜や今朝のような明るい時間を過ごせるのかな、、。

そう思うと明日香は少しむず痒く、恥ずかしくなった。



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