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トップバッターは桜?

その日は強制的にノンビリとさせられてしまう明日香。


理由は良く分からないがリビングでゴロゴロさせられ、3人に甲斐甲斐しく世話をされる。

まぁ世話をされるのはいつもの事なのだが、いつもに増してそんな感じなのだ。

きっと何か企んでいるに違いない、、、。



徐に明日香が立ち上がると、一斉に3人の視線を浴びる。

「どうしたんですか?」

「どこか行くの? 今日は駄目だよ~」

「お姉様、ジッとしてて」

そう蓮香、桜、雅に言われてしまう。



しかし生理現象はどうしようもない。

「トイレに行くだけだから心配しないで、、、」

と苦笑しながら明日香は3人へ告げた。



すると桜が立ち上がり妙な構えをして恰好を付けると、

「私がお持ちしましょう!」

などと言いだす。



『何をだよ!?』

『大の方だったらどうするんだよ!!』

明日香はそう突っ込みそうになるが苦笑いを桜に向けて丁重に断る。

「だ、大丈夫だから、、、ご遠慮します、、、」



残念そうにする桜を置いてそそくさと明日香はトイレへと向かった。

そしてトイレの便座に腰を掛けて小を済ます。

『我ながら女子的な生活習慣が板についてしまったものね、、、』



小でも必ず座ってする明日香。

女子として生活して来た年月が長い為、当たり前と言えばそうなのだが、、、。

これも色々な事故を防ぐのに染みついた明日香の生活習慣なのだ。

その事故のいい例が咳だったりクシャミだったり、ちょっとした時にでる悲鳴だ。



見た目が完璧に女に化けた男子は、つまり女装であり中身が変わった訳では無い。

故に不意にでる生体現象や仕草は偽れないのだ。

よって女でないとバレる事が有る。


だが中途半端な男である自分に嫌気がさして、明日香は日常から女子として生活している、それも何年も。

だから他人に”女装”をしているとバレることも思われることも一切無いであった。



しかし3人の家族となる美女に、男性で有る事も求められているのである。

”女性同士”として知り合い、今は”異性の間柄”として慕われる状況にあるのだから、何とも矛盾しているなと明日香は自嘲せずにはいられなかった。



リビングに戻ると3人に代わる代わる膝枕をしてもらったり、肩や脚などをマサージされる明日香。

こんなのが今日一日だけなら良いが、宿泊中ずっと続けば身体が鈍ってしまいそうであった。

そして何だかんだダラダラとしていると時間は過ぎて夕食時になってしまう。



充実した時間は過ぎるのが早いと言うが、自堕落に過ごす時間もまた早いと明日香は感じる。

何だか時間が勿体ないような気がしつつも4人で食堂へ向かった。



昼と同じ割り当てでテーブルに着く明日香達。

ふと他の客の事が気になり食堂内を見渡すが、自分達以外居ないのに気付く。

しかも山岸と脇村も来ておらず、貸し切り状態であった。

「ひょっとして宿泊客は私達だけなのかな?」



「そのようですね」

「時期が時期ですから、それに結構な宿泊費が掛かるので一般客は殆ど訪れないかと、、、」

そう蓮香が答えてくれた。



「確かに私達と山岸さん、脇村さんを入れたら一日の宿泊費が約60万、、、」

「それを5泊6日なんだから、、、凄い金額になっちゃうね」

と言い明日香は血の気が引いてしまう。



因みに食堂で食事をしている間に、仲居さんた達が明日香達の泊まる離れを掃除片付けをしていたりするのだ。

こう言った細やかな手入れとサービスが1泊10万掛かる理由の一つでもあった。



そうこうしている間に夕食が運ばれてきた。

今回はコースになっていて中国料理をベースにしているらしい。

中国料理は一人前では無く、数人でシェアするスタイルである為、1品がそこそこの量である。

まぁ4人でシェアするので問題無いのだが。



途中で桜が明日香の為にカクテルを注文してくれた。

「来てからのお楽しみだよ~」

そう明日香に告げる桜は何だか楽しそうであり、少し不気味に感じた。

『絶対何か企んでるよね、、、』

明日香が訝しんでいると直ぐにそのカクテルが運ばれてくる。



タンブラーグラスに並々に注がれたその液体は、少し赤味を帯びていた。

一口飲んでみると思った以上に爽やかな甘さが口内に広がる。

そして僅かだが漢方薬のような風味も感じた。

「これ、、、何だろう、、、」

「飲んだ事がない味ね、、、」

明日香がそう呟くと桜が嬉しそうに言った。



「それはね赤の桂花陳酒とマムシドリンクのカクテルだよ~」

「思ったより美味しいでしょ!」

「私も注文しちゃった~」



桂花陳酒の赤とは又珍しい。

黄色は結構どこのお店でも置いているのだが、赤は取り寄せないと手に入らない事が多いお酒だ。

そしてマムシドリンクとの相性も良く美味しかった。



と言うか、これは完全に夜の事を考えてチョイスした筈だ。

料理の方も良く見ると精が付く物ばかりであった。

『これは色々期待されているんだろうな、、、』

明日香がプレッシャーを感じていると、桜がグビグビと一気にカクテルを飲み干してしまう。



「ふぅ~、、、」

と一息ついた桜は明日香を見つめた。

少し目が据わっている様な、、、。


それから桜は明日香に言い放つ。

「一番手は私だからね!」

「それと明日香さんは食事が済んだ後から朝まで私の物だから!」



突然言われたものだらから明日香は唖然としてしまう。

「え、、、」



見かねた蓮香が苦笑いしながら説明してくれた。

「え~とですね、、、お姉様の1番最初の夜の御相手は桜さんなんです」

「なので私と雅さんは出来るだけ席を外しますので、食事の後から朝まで桜さんと水入らずで楽しんで下さい」


雅が笑顔で告げる。

「桜さん頑張って!」

「お姉様も頑張って!」



勝手に話が進んでいるようで明日香は唖然としたまま硬直してしまう。

そして『何を頑張るんだよ~、、、』

と分かっていつつも、ぼやかずには居られない明日香であった。



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