湯舟の中で癒しの催促(1)
明日香が露天風呂を堪能していると、蓮香がおずおずと告げた。
「私達にも癒しを頂けませんか?」
蓮香が言っている事が良く分からず明日香は戸惑ってしまう。
『癒して欲しい、、、って事なのよね、、、』
『つまり私に何かして欲しいって事?』
そんな明日香を見て蓮香が少し恥ずかしそうに説明を始めた。
「え~と、、、」
「私達は明日香お姉様と一緒に居るだけで幸せなんです」
「でももっとお姉様を傍に感じたくて、、、」
すると雅も続く。
「お姉様に抱きしめて欲しいんです」
これには明日香も少し首を傾げてしまった。
2人が言うような事はいつもしているし、されてもいる。
更にどうせよと?、となってしまう。
察した桜が苦笑して明日香へ告げた。
「何て言うのかな、、、昼間で開放的な少しだけ非現実的空間、、、」
「こんな所だとちょっと大胆になっちゃうって言うか、、、」
「違う気分が味わえちゃう感じがして、、、ね」
何となく明日香にニュアンスが伝わる。
つまりいつもと違うロケーションで気持ちが昂っているから、この良い感じの時に抱きしめてくれ、、、そう言う訳だ。
そうする事がこの娘達にとって癒しになるなら吝かではないと言う物だ。
蓮香は少し慌てる様に、
「勿論、その、、、いやらしい気持ちとかでは無いんです!」
「純粋に抱きしめて撫でて頂けたら凄く嬉しいので、、、」
そう明日香へ照れながら言った。
要するに甘えたいのだろう。
なら話は早い。
明日香は湯舟の中で両れを広げて、
「おいで~誰が一番乗りかな?」
と笑顔で3人へ告げる。
そうすると桜が2人に押されて明日香の前にやって来た。
少し照れたような困ったような表情を浮かべている。
明日香は桜に微笑むと優しく言った。
「一番乗りは桜ね、、、さぁおいで~」
桜はうずうずし出し我慢出来なくなったのか明日香に飛び付いた。
バシャッと温泉の湯が跳ね上がり、明日香は慌てて桜を抱き留める。
「危ないよ、、、桜、、、」
「そんなに慌てなくても私は逃げないからね」
まるで借りて来た猫の様に桜は大人しくなってしまう。
「うん、、、」
そして明日香の膝に跨るように抱き着き密着状態である。
こんな状態では煩悩が顔を出しそうなものだが、不思議と今の桜を抱きしめていると、そんな気持ちにはならなかった。
それは桜がまるで親に甘えて抱き着いている子供のようだからだ。
何と言うか、ある筈の無い自身の母性が目覚めたようだった。
この時、明日香はひょっとしたら中性的な脳の構造をしているのかもしれないな、、、と思ってしまう。
男性でありながら女性の感覚も持ち合わす。
何とも矛盾した存在だと明日香は自嘲してしまう。
なら思いっきり甘えさせてあげようと決めた。
明日香の手は優しく桜の頭を撫で、そして背中へと移ってゆく。
少しくすぐったかったのか、
「あっ、、、」
と桜が小さく声を漏らした。
そして満足したような表情で桜は身を離すと、
「明日香さん、ありがとう、、、」
そう言って明日香の唇に軽く口付けをして恥ずかしそうに離れて行った。
その次は蓮香がおずおずと明日香の傍にやって来る。
そして少し俯くと、
「えっと、、、桜さんと雅さんが家族になるとは言え、、、、」
「私がお姉様に甘えている所を見られるのは、中々に恥ずかしいというか、、、」
そう顔を赤らめて明日香へ告げた。
『なら私はどうなるのよ!』
『いつも君たちの前で恥ずかしい事されてると思うけど!』
と突っ込みを明日香は入れそうになるが雰囲気を考えて堪える。
明日香は取り合えず蓮香がどうして欲しいのか訊く事にした。
「蓮香はどうして欲しいの?」
「何でもしてあげるよ」
優しく微笑んで見せる。
明日香のそんな言葉と笑顔の力が、蓮香の羞恥心を壊してしまったようだ。
恍惚とした表情を浮かべた蓮香は、
「私を背中から優しく抱きしめて下さい、、、」
そう呟くように告げる。
頷く明日香は両手を広げて蓮香を迎い入れた。
蓮香は背中を向けて明日香へソッと寄り添う。
すると蓮香の女性らしい柔らかな背中の感触を明日香の胸に伝えた。
蓮香はスポーツをしているのか、まるで雌豹の様に引き締まった身体をしている。
だからと言ってごつごつしている訳では無く、とても柔らかくて桜程では無いが巨乳でもあった。
さて、どう抱きしめたら良い物かと明日香が考えていると、
「胸とお腹を抱える様に抱きしめて下さい」
と具体的なオーダーが蓮香から告げられる。
明日香は言われるがまま蓮香を抱きしめた。
そのメリハリがある美しい身体に触れ、明日香は恍惚の溜息が小さく漏れてしまう。
その時、蓮香が物欲しそうに呟く。
「もっと強く抱きしめて貰えませんか?」
そんな風に言われたらドキドキしない訳が無い。
明日香は平常心を保とうと必死になりつつ、蓮香の要求に応えた。
ほんの少しだけ力を強めて抱き寄せ、そして掌に力を込める。
「んっ、、、」と小さく蓮香の声が漏れた。
蓮香がこんな要求をしてくるとは、ひょっとしたら親に抱きしめて貰った事が無いのかもしれない、、、。
そう思うと明日香は、ほんの少しだけ蓮香が不憫に思えた。
なら明日香がその代わりに成れば良いのだ。
『この湧き起こる気持ちは、やはり母性本能なのかもしれないな、、、』
そう内心で呟き、ふと明日香は正面を見据える。
するとこちらをジッと見つめていた桜と雅を捉えてしまう。
桜は口元を恥ずかしそうに手で隠して赤面状態。
雅は目元を手で隠しているが、指の間からガン見している様子が見て取れた。
なんだか明日香も恥ずかしくなって居たたまれなくなってしまう。
そうすると蓮香が恍惚とした表情で明日香に向き直り、
「とっても良かったです、、、」
「やっぱり私はお姉様に触れられるだけで身体が悦んでしまうようですね、、、」
と照れた様子で告げ明日香の唇に軽く口付けをした。
そしてフラフラと明日香から離れて行く蓮香。
この時、明日香は思った。
最後に雅が残っていると言うのに、私の平常心と母性は持つのだろうかと、、、。