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第十六話 共闘

 街道を走る馬車は小石を踏みながら少し揺れている。

 背の低い木が生えている林の道を行く。

 その馬車には3人で運行している。

 1人は、御者としてディーグアが。

 馬車は大きめに作られたもので、かなり余裕があり、キシリエと宗二の2人が乗り込んでいる。

 

 その馬車の窓を宗二は眺めていた。

 馬車の中はいつもの3人ではない。

 今は発見された巨兵の討伐に向かっている最中だった。

 まだ目的の町へはまだ時間が掛かるという。




―――


「ここより2日の距離に巨兵が現れたとの報告があった」


 王国の大臣、ドゥメジティから宗二達へ現状説明が行われた。

 国王から巨兵討伐の命が下った。


「今回の討伐はキシリエとソージ殿でお願いしたい。連携して戦うよい訓練になるだろう」


 模擬試合でお互いの能力を把握したが、実践は行っていない。

 このままでは連携が使い物にならない恐れもあるので、実践を経て錬度を高める必要があるだろう。


 城の外には、キシリエと宗二達一行が集まっていた。


「今回は馬車で巨兵へ討伐に向かう。メンバーは私、ディーグアさん、ソージくんの3人だ」

「私達も付いていきます」


 やはり、ファルが噛み付いた。

 宗二に対して誇れる人になって欲しいと言った手前、それを見届けたいという気持ちが大きい。

 しかも、『達』が加えられており、ドッドは巻き添えを食らっていた。


「2人はここで待機しなさい。馬車で赴くのなら少人数がいい。護衛は私とキシリエ殿で十分ですからな」


 馬車で行くのなら、当然少人数の方がスピードが出る。

 一刻も早く現場に行くためには最低必要限の人数だと明らかに速い。

 2人(?)は納得がいかない様子だったが、ディーグアの言葉に身を引いた。


「ソージさん、気をつけて。怪我とかしないようにね」

「お前は母親か」


 ファルとドッドのやり取りが微笑ましい。


 既に用意されていた馬車に乗り込む。

 いつもの2人がいないことに宗二は漠然とした不安を感じていた。



―――



 馬車にいて不安に思った理由がなんとなしに分かってきた。

 2人がいることでいつもの日常から離れたことが不安の元だと考えた。

 危機的なことが起こる不安ではなく、もっと身近な不安だったのだろう。


「ソージくん。浮かない顔をしているね」


 何故そんな事を言われたのか分かっている。


「少し寂しいのだと思います」


 その言葉に手綱を握るディーグアが前を向いたまま言葉をかける。


「城に戻れば2人はいますから、そう落ち込むことはありませぬぞ」


 ディーグアの励ましにはいつも助けられる。

 きっと、ディーグアと離れても寂しく感じるだろう。

 この世界に来て二十日程度、彼らとはいつもいた。

 変な言い方をすれば、家族なのだろうか。


「君達は仲がいいね。何か理由があったのかな?」


 前に会ったレンとリフォーシャはビジネスライクな関係に見えた。

 キシリエもそれに似た空気を感じた。

 イジンとこの世界の人はあまり仲が良くないのだろうか。

 だが、良く考えればドッドも自分を快く思っていなかった。


「こういうのって、珍しいんですか?」

「いや、そういうことではないんだが、我々は召喚されて日が浅い。お互いを分かり合うには難しい時間だと思ってね」


 一緒にいる時間。

 確かに3人といる時間は1ヶ月に満たない。

 それでも、旅という共に歩く道があったから、今の関係になれたのではないだろうか。

 偶然とはいえ、いい体験をしたのかもしれない。


「キシリエ殿! 馬車と止めますぞ」


 ディーグアは突然、馬を止める。

 何が起こったのかわからず、2人は馬車から降りた。


 外からは遠くに動くモノが見受けられた。

 ここからでも分かるあの姿は一つしかない。

 巨兵だ。


「こちらの方がまだ近い。こいつを任せていいかな」

「任された。私がソージ殿を無事巨兵へと連れて行きますぞ」


 キシリエが宗二へ視線を向ける。

 その意味を理解した宗二はその視線に応える。


「はい。任せてください」


 ディーグアとキシリエは少ない言葉で全てを理解していた。

 遠い方は馬車で今のルートを進む。

 近い方は馬車を降り、徒歩で巨兵へ向かうということだった。


「ソージ殿、私に掴まってくだされ。少しスピードを出しますぞ」


 ディーグアの補助を受けながら、林の中を疾駆する。

 宗二を背負わないということは、ファルほどの力と体力が無いからだろう。

 歳のこともあるし、無理もない。


「いつもありがとうございます」


 ディーグアにはいつも助けてもらいっぱなしだ。

 行動をサポートしてくれるだけではない。

 言葉に詰まってしまったとき、さり気なく意を汲んで会話を進めてくれる。


「気にすることはありませぬ。ソージ殿と一緒にいるとこちらもついつい世話をしたくなりましてな。まるで、孫が出来たようで嬉しいのです」


 ドッドは弟子なのでちょっと意味合いが違うと補足された。

 歳を考えれば、ディーグアに孫がいてもおかしくない。


「これからも頼ってくだされ」


 前を走っており、その顔は見えなかったが、きっと照れているに違いない。

 このような人と共に旅を出来たことは本当に幸せであると宗二は思った。


 走ること半日。

 息は切れているが、体力はまだある。

 この世界に来てからというもの、いつも走っているようなものだったので、随分と体力がついた。


守護起動リビルド 守護機装ガーディアン アディバイスッ!」


 手馴れた様子で白いカードを掲げて叫ぶ。

 次は宗二がディーグアの期待に応える番だ。

 白い光が宗二を包み込み、アディバイスが顕現する。


 巨兵と向かい合ってまず確認するのが、武器の有無。

 今回は素手だ。

 以前のように武器を利用することは出来ない。


 でも、やることは変わらない。

 巨兵からの大振りの拳が迫ってくる。

 剣を受け流したときのように、インパクトの瞬間に力の向きを変えてやる。

 巨兵は攻撃の勢いを殺せず、アディバイスへ迫ってくる。


(これならいける!)


 宗二の拳に激しい痛みと衝撃を受ける。

 カウンター気味の攻撃が見事に巨兵の顔にめり込んでいた。

 拳はしびれているが、相手には相当なダメージを与えたはずだ。


 少し距離を取り次の攻撃へ備える。

 このまま行けば勝てると確信した。


 巨兵は攻撃を受けてなお、アディバイスへ向かってくる。

 先程の要領で、バリアを展開、攻撃を逸らす。

 この繰り返し繰り返そうと思ったが、相手は馬鹿ではなかったらしく、攻撃を控えてきた。


 軽い攻撃でこちらをけん制してくる。

 片方を防いでも、もう片方の攻撃が迫ってくる。

 もっと大振りでないと、カウンターは決められない。

 それどころか、こちらの攻撃チャンスがなくなってきた。



 つもりだったが、間髪いれず拳を振るってくる。

 いくら攻撃を逸らしても、次々繰り出される拳に防戦一方を強いられた。


(何か方法はないか? 一発逆転の一手は)


 この前のようなディーグアの援護は期待しては駄目だ。

 相手が激しく動いているので、その体を登るのは自殺行為である。

 身を守っていると、遠くから乾いた破裂音と陽気な声が聞こえた。


「ヘイ! 随分と苦戦してるじゃねーか! 手を貸すぜ」


 巨兵の体が若干揺れる。

 花火のような音が何度も弾ける。

 何度も何かの攻撃を受けた巨兵はよろめきだした。


「これからが本当のパーティーだ! まだまだ、果てんじゃねーぞ」


 声に振り返ってみると、真っ赤な銃士が煙の出る銃口を巨兵へ向けている。

 両手に拳銃を持った守護者がそこにいた。

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