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第十五話 守護誓祈

 国王との謁見にて王都のイジンであるキシリエが宗二に向けて微笑んでいた。

 その笑みは相手を思うものであって、宗二を侮蔑しているわけではない。


「僕は山本宗二といいます。こちらこそよろしくします、キシリエさん」


 自己紹介されたら、自己紹介して返すのがマナーである。

 馴れ馴れしいかと宗二は思ったが、お辞儀をして体裁を保った。

 引き続き、護衛を任されていた3人が順番に挨拶していく。


「国王、ここで1つ提案がございます」


 礼をしながらキシリエが願い入れる。


「よい、申してみせよ」

「はい。私はソージくんと模擬試合をしてみたく存じます」


 国王は頷くと宗二へ視線を向けた。

 こちらの意思を確認しているのだろう。

 だが、どう返答していいのか困惑している宗二を察してディーグアが代弁する。


「模擬試合に関してはお受けしてもよろしいが、理由をお聞きしたい」


 国王も納得したのか、キシリエへ視線を移す。


「は、これから共に巨兵を討伐するにあたり、お互いの力を知っておくことは有益かと」


 少し間を空けて国王は杖をかざした。


「いいであろう、キシリエ、ソージ、双方は準備を致せ」


 宗二の返答を待たずして国王は宣言した。

 国王も見たいのだろう、守護者同士の戦いを。


「はい、分かりました」


 場の雰囲気に飲まれてうまく返事が出来なかった。

 敬語を使うべきだったのだろうが、そんな余裕は無かった。

 そこにディーグアが耳打ちしてくる。


「ソージ殿そう緊張なさらずともよいですぞ、主賓なのですからな」


 このままでよいと理解しておく。


 宗二達一行は城壁の外まで赴いた。

 城門から離れた壁沿いだ。

 城壁の上に国王はいるらしい。


「さて、準備はいかがかな? ソージくん」


 キシリエはたった1人で宗二達にと対峙していた

 護衛がいないことに疑問があったが、それどころではなかった。

 とりあえず、相槌を打っておく。


「では始めよう」


 2人のイジンは向かい合い、カードを取り出した。

 宗二の白いカードに対して、キシリエは青いカード。

 同時に各々のカードを高く掲げる。



守護起動リビルド 守護誓祈ガーディアン リタットディスター!」

守護起動リビルド 守護機装ガーディアン アディバイスッ!」


 辺りに眩い光が2つ。

 青と白。


 光が収まると、そこには青い騎士があった。

 青い騎士が纏う鎧は頑強。

 過剰ともいえる装甲はまるで隙間が無い。

 頭部の兜は全体を覆い、瞳を守るかのようなゴーグルになっており、そこから2つの目が光って見えた。


「模擬試合といっても手を抜いたら意味が無い。全力で来たまえ、だが、やられそうになったら必ず降参すること、いいね」

「はい、分かりました」


 息を飲む。

 初めての守護者同士の戦い。

 相手はこちらと同じ素手だが、何か違和感を覚える。


「こないのなら、こちらから行くとしよう!」


 瞬間、リタットディスターの手には長い槍が握られていた。

 振りかぶられた槍はしなりながら、アディバイスを狙う。

 何が起こったのかわからない宗二はとっさに手を前に出して身を守った。


 衝突する激しい音が聞こえる。

 その後に来るはずの痛みが全く無い。

 目を開いてよく見ると、腕からバリアが張られており槍の一撃を完全に防いでいた。


「凄いな、それは新しい盾かな? こちらの攻撃がまるで通用しない」


 驚くキシリエだったが、同じくして宗二も驚いていた。

 今までと違い、無意識にバリアを展開できていた。

 それに、素手だったはずのリタットディスターは槍を持って攻撃している。

 その槍は何処から来たのか全く分からない。


「なら、こちらはどうかな?」


 伸ばした手てを寄せ、飛びのいてリタットディスターは距離をとった。

 槍では攻撃の届かない距離ま下がってくれたため、少し余裕ができる。

 それでも、次の攻撃を警戒していつでもバリアを張れるよう気をつけた。


(っ!)


 突然の痛み。

 何の前触れも無い痛みに顔をしかめる。

 混乱する頭を整理する。

 痛みの先には針のようなものが刺さっている。

 前を見ればボウガンを構えたリタットディスターがいた。だが、今まで持っていたはずの槍を持っていない。

 その姿を見て理解した。


(あいつの能力は武器の持ち替えだ! 最初に素手だったのはいつでも武器を持てるからだ。だから、持っている必要が無かったんだ!)


 能力が分かっても何ができるわけではない。

 先ずはボウガンのによる攻撃を防がなくてはいけない。

 範囲は広いが威力は低い。

 バリアを広げれば防ぐことも容易だ。


「これも駄目か、仕方ない」


 攻撃が有効ではないと判断したのか、一足飛びでこちらの間合いに詰めてきた。

 弓でもない槍でもない射程へ潜り込んで来る。

 とっさに剣だと判断した。

 騎士なら持っていないはずが無い


 前方のバリアを絞って狭く強く動きやすく。

 相手の出方を見極める。


「いい判断だ。だが、そこまでだ」


 相手は剣、巨兵と戦った時の経験がある。

 剣を受けるのではなく、受け流す。

 だが、それは過ちだった。


 受け流されることを知っていたキシリエは刃の向きを少し変える。

 刃を滑らし返す刃で腕を跳ね上げる。

 予想と違う展開に、宗二は混乱し正確な判断が出来ない。


「これでチェックかな?」


 アディバイスの喉元に剣の切っ先が向けられる。

 今から剣を払い反撃に転じることは出来る。

 だが、宗二には勝てるイメージを描くことは出来なかった。


「まいりました」


 その言葉を待っていキシリエは剣を収める。

 完敗であった。


 宗二とキシリエはお互いの守護者を解放する。

 巨人達は光の中に消え、そこにはイジン2人が残っていた。


「いやー驚いたよ! 思った以上にやってくれた」


 金髪の騎士はその長い髪をなびかせ、さわやかに笑っていた。

 国王の前でいた騎士とはまた別の顔だった。


「これは私が勝てるように仕組んだ試合だ。それに持ちこたえたソージくんは賞賛に値する」

「は、はぁ」


 『仕組んだ』アディバイスが武器を持っていない、攻撃する手段が乏しいことを知っていたのだ。

 それでも、宗二の実力を測るにはもってこいだっただろう。


「それにしても、ソージくんは寡黙だね。チームを組むなら多少はしゃべらないとね」

「そうなんですか? 戦いのことは良く分かりません」


 アディバイスに乗っている間はそれで精一杯だったので、余裕は無かった。

 そんなに口数が少なかっただろうか。


「そいつが口を開くのは、悲鳴をあげる時ぐらいだ」

「貴方は口を噤みなさい」

「ソージさん大丈夫? 怪我は無い? 変なことされなかった?」


 ディーグア、ドッド、ファルが宗二の下に集まってきた。

 3人といると落ち着くような気がする。

 実家のような安心感とはこういう事なのだろうか。


「人望はあるみたいだね。私もその1人にないたいな。これからよろしく」


 キシリエが再び手を差し出してくる。


「はい。キシリエさんが一緒だと心強いです」


 宗二はその手を改めて握り返す。

 国王の前で行った建前の握手とは違う。

 共に戦う仲間が増えたことを実感できてつい笑顔になってしまう。


 一行は再度玉座の間へ呼ばれ讃えられた。


「この度は見事であった。キシリエが一枚上手であったが、ソージも申し分の無い活躍をしてくれた」


 そこに大臣であるドゥメジティが発言の許可を貰う。


「これよりソージ殿はこの城に住んでもらうことになった。疲れただろうから部屋へ案内させてもらう」


 宗二一行の前にメイドがやってきて王へ一礼、宗二達の案内を行う。


「今日は大変でしたな。王都に着いたと思ったら守護機装で模擬試合とは。ゆっくりと休みましょうぞ」

「そうですね。今日は流石に疲れました」


 メイドに連れられ、宗二は1人部屋、3人は同じ部屋へ通された。


「さっさと休め、倒れられても困るからな」

「それじゃあ、また明日ね、ソージさん」


 割り当てられた部屋は豪華の一言だった。

 家族が寛ぐには十分な広さ。

 家具には全て金の細工が施されている。

 3人が横になっても余るほどの巨大なベッド。

 こんな場所ではゆっくり休めそうに無いと宗二は思った。

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