6話 全力で叫んだ。すると、全身が炎に包まれた】
俺達は、鉱山都市サルマトラン王国へ向かって歩いているのだが……
「信じられない! なんでアンタは何も考えないで行動できるんだわさ?」
「オイラだって考えてるっす! 良かれと思ってやった結果が、あんなになっただけっす!」
フォンとダルスが喧嘩している。
コンコンワンワンと五月蝿いやつらだ。
本当にどうでも良い事で喧嘩するなぁ……
俺は呆れながら二人を宥める。
「なんだか知らんがその辺にしとけよ」
「「だってコイツが!」」
見事なまでに息がぴったりだ。
俺は溜息を吐いてそれ以上何も言わなかった。
※ ※ ※
「鉱山都市サルマトラン王国。人口は1,000万人で、金属加工が盛んなんだわさ! 国王サルマトラン・マインが治める国で、世界に流通している貨幣は全てこの国で作られているんだわさ! 貨幣を偽造しようとすると、刻まれている呪印で呪い殺されるんだわさ!」
ダルスとの喧嘩も落ち着いて、フォンがこの国について説明している。
しかし、さらっと凄いことを言ったぞ。
この世界には魔法があるが、呪い殺す呪印もあるのか。
「“バカ”が偽造しないように、重い罰が施されているんだわさ!」
フォンは冒頭を強調しダルスを見る。
「おい! なんでオイラを見るんだよ!」
「だってアンタ、やりそうじゃない?」
「なにー?」
「なによ!」
ああ、また始まった。
俺達は、五月蝿い二人に呆れながら、サルマトラン王国へ入国した。
勿論入国審査は無い。
強化スライム以外は平和な世界なんだな。
入国した直後、叫び声が聞こえる。
「火事だ! 工場で火事だ!」
その声を聞き、空を見上げると黒煙が上がっている。
黒煙の量から、広範囲に燃えているのが想像できた。
俺達は黒煙の根元へ向かう。
すると、衝撃の光景を目の当たりにする。
「当社のシェアは国内ナンバーワン! サルマトラン王国最大の金属加工のパイオニア!」
と入り口に書かれた巨大な建物が、轟々と真っ赤に燃え上がり、所々で小規模な爆発が起きていた。
何故かこの世界の文字が読めるんだけど……
「おい! まだ誰か取り残されてるみたいだぞ!」
「この炎じゃ助けるのは無理だ! 中に入っても出られないぞ!」
消防士と思われる人間が、険しい表情で話している。
その会話を聞き、俺は燃え盛る建物へ近づく。
「おいあんた! それ以上近づくと巻き込まれるぞ! 戻って来い!」
叫ぶ消防士を横目に俺は全身炎化し、建物に入る。
暫く中を進むと、翼と二本の角が生えた男が俯せで倒れている。
「おい、大丈夫か? おい!」
「ううっ、我輩は、もう、だめだ……」
意識が朦朧として危険な状態だ。
そして俺はふと思った。
(もしかしたら、この炎消せるんじゃないか?)
建物を燃やす炎と、俺の炎を混ぜ合わせるようにイメージする。
そして、建物全体を飲み込みながら、炎だけを回収するようにイメージした。
息を吸うように力を込めると、炎は俺の身体に吸い込まれていった。
男を担いで外に出ると、野次馬達の視線が俺に集中する。
「き、奇跡だ! あんた、一体何をしたんだ?」
「なーに、炎を飲み込んだだけだよ」
俺は担いでいる男を消防士へ引き渡そうとする。
その時、建物の中から二人の人影が現れた。
一人は見覚えがある。
強化スライムを指揮していた、ガーゴイルのガイルだ。
するともう一人は……
「ほう、イフリート化したというのは本当の様だな」
ガイルの横に立つ男は俺に呟く。
イフリート化? そう思った時……
「……」
俺の中の何かが動いた。
その瞬間、俺は忘れ物を思い出したかの如く、イフリートに転生したのだと悟った。
「イフ…… リート……」
「そうだ。炎を操る魔人。まさかこのような面白いものが見られるとはな……」
(俺は、イフリート。炎を操る魔人……)
「コイツだッピ! プルトニー様! コイツがオイラの作戦を悉く潰してくれたッピ! プルトニー様の邪魔をするコイツをっ…… ピッ……」
プルトニーと呼ばれる男は、ガイルの顔を片手で掴んだ。
「ぷっ、プルトニー様! 何を…… ぴぎぇあああ!」
ガイルの顔は掴まれた部分から変色し、焼け爛れていく。
「何だ君達は! 中で何をしていた!」
消防士がプルトニーに問いかける。
しかしプルトニーは答えない。
ガイルの悲鳴に気付いた仲間達が俺の元へ駆け寄る。
「トール様! 何があったんだわさ!」
「あいつは、ガイル…… 横の男は知らないっす!」
「おい、何か嫌な予感がするぞ……」
次の瞬間、掴んでいたガイルを投げ付けた。
仲間達と消防士はガイルの直撃を受ける。
その衝撃に消防士の体は歪に変形していた。
一瞬の事に理解が追いつかない俺はその場に立ち尽くす……
「また会おう、イフリートよ」
プルトニーはガイルの亡骸を残して去っていく……
プルトニーの圧倒的な強さを前に、俺は見ている事しか出来なかった……
「ううっ、ここは…… 我輩は……」
背中から響く声で我に返る。
慌てて背負う男を降ろし、倒れている三人へ声を掛けた。
「フォン! おい!」
「トール様……」
「ダルス! 大丈夫か!」
「大丈夫っす……」
「オルガ!」
「ああ…… 大丈夫だ……」
怪我はしているが、然程重傷ではなかった。
しかし、横には無惨に焼かれ、原型を留めていない嘗てガイルだった物体と、消防士の遺体が残されている。
プルトニー、異常な強さを持つ謎の男。
可愛い名前とは裏腹に、仲間すら殺す。
そんな奴が俺達の敵だという事実に、強い憤りを覚える。
そして、仲間を護れなかった自身の不甲斐なさに苛まれた……
※ ※ ※
俺達は宿屋へ入り、助けた男から事の顛末を聞き出す。
「我輩は龍人のドラム。此度は助けて頂き誠に感謝している」
建物から救出した男はドラムと名乗った。
槍を背負い、緑色の鱗状の肌をしている。
「実は我輩、プルトニーという男に頭を捕まれ、記憶を消されたのである…… 何の為にあの工場へ入ったのか、何処から来たのか、故郷も全て…… 我輩はドラムである。記憶はその一つしかない……」
ドラムは説明を終えると肩を落とし悄然とした。
自分は何故ここに居るのか、何処から来たのか、そうした情報が無いということは、この世界に一人取り残されているということだ。
これは筆舌しがたい恐怖だろう……
俺もたまたまフォンが声を掛けてくれたから、こうして旅が出来ている。
もしあの場にフォンが居なければどうなっていたか…… 考えただけで恐ろしい。
「なあ、ドラム。お前行く宛はあるのか?」
ドラムは顔を上げ、三人は俺に視線を向けた。
俺は三人へ順番に目線を合わせ、全員それに頷く。
答えは出たようだ。
「いや、我輩は何処にも…… 行く宛など……」
「なら、俺達と来ないか? 俺達はプルトニーの差し向ける、強化スライムの被害を無くすために旅をしている。記憶を消されたならお前も被害者だ。あいつらを倒す理由がある」
俺はドラムに目線を合わせると、ドラムは困惑し暫し黙り込む。
そして覚悟を決めた顔で口を開く。
「このドラム、貴方様に助けられた! この命、貴方様の為に捧げましょう」
決まりだな。
「俺はトール、イフリートのトール! よろしくな!」
「ははっ! 我輩は只今より、トール様の忠実な下僕である!」
それを聞き、三人は歓喜の顔となった。
「アタシはフォン! 狐の獣人よ! よろしくだわさ!」
「よろしく頼むのである!」
「オイラはダルス! 誇り高き犬の獣人だ! よろしくっす!」
「よろしく頼むのである!!」
「オレはオルガ。オークのオルガだ。よろしく」
「よろしく頼むのであっるっ……」
ドラムは喜びのあまり泣き出した。
余程心細かったのだろう。
こうして俺達は、新たな仲間を迎え入れた。
※ ※ ※
翌朝、宿屋に兵士が現れる。
「ここにトール殿は居られるか?」
「トールは俺だが」
「昨日の大火事を消火した褒賞の授与と、消防士の殺害について事情を伺いたい。城へ同行願えるだろうか」
やはり来たか。
消防士殺害の件はいずれ事情を聞きに来るだろうとは思っていた。
しかしこの場所と俺の名前までよくわかったな。
それに、褒賞? 大火事を消火したからだろうか。
何が貰えるのか……
「そうか、すぐ行こう」
俺達は城に向かう準備を始めた。
※ ※ ※
俺達は兵士に連れられて城へ向かっている。
道中は流石鉱山都市といった町並みで工場が建ち並ぶ。
暫く歩くと城が見えてきた。
城内に入り、長い廊下を歩いた先に、一人の人物が座っている。
「旅の英雄よ、よく来たな。儂はサルマトラン・マイン。この国の王だ」
「トールと言います。よろしく」
程良く日焼けしたこの男が王らしい。
年齢は40歳くらいだろうか。
「トールよ、此度の大火事の消火は見事だった。この儂に、どのようにして消火したのか見せてみよ!」
んん? 見せてみよ? 見せていいの? 王様が良いって言うんだから仕方ないか。
でも、一応断っておこう。
「宜しいのですか? 危険ではありませんが、兵士の皆さんが混乱すると思いますが……」
兵士達を見るが、動じる様子はない。
大したことは出来ないと思われているようだ。
「構わぬ! お前達、余計な事はするなよ?」
王様は兵士達に告げると、俺に好奇の目を向けた。
(やるか…… 一応、警告はしたからいいよね。)
そして俺は全身炎化する。
ドラムは少し驚いた様子だったが、すぐに落ち着いたようだ。
「なっ、なんと! 炎を出しおったわ……」
いつもお読み頂きありがとうございます。
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今回のお話で、トールはイフリートであることを悟ります。これにより、今後は全身炎化としていた部分はイフリート化へと変わります。
そして戦闘力です。
トール 30.000
フォン 5.000
オルガ 4.500
ダルス 5.000
ドラム 4.000
プルトニー 30.000以上
ガイル 10.000
次回もお読み頂けますと幸いです。




