54話 送別会後の約束
俺達は宿屋の部屋に入ると、どっかりと座り込んだ。
「いやー、一時はどうなる事かと思ったな〜」
「しかし、研究が再開出来そうで何よりである!」
「みんな、本当にありがとう。助かったわ……」
「水臭いっす! オイラ達は仲間なんだから、このくらい当然っす!」
「そうだわさ! こんな時こそ助け合うんだわさ!」
ダルスとフォンがメルダの肩を叩き励ます。
するとメルダは感極まり涙を流した。
「ありがとう……仲間ってこんなに暖かいものだったのね……あたし……ずっと、独りだったから……うぅっ……」
俺達はそんなメルダの様子を、目を細めながら静かに見守った。
※ ※ ※
「ぐるるるるぅ〜」
メルダが落ち着いた頃、静寂な室内に誰かの腹が盛大に鳴り響く。
「オイラ、腹減ったっす……」
ダルスが腹をさすりながら、俺に訴えかけてくる。
ふと窓を眺めると、外が暗くなっていた。
そろそろ夕飯の時間だ。
俺はすっと席を立つ。
「そうだな、メシにしよう!」
「うん! うん!!」
ダルスは目を輝かせながら大きく頷いた。
仲間達も続いて頷く。
俺はキッチンへ立つと全身炎化し、腹に手を突っ込んで“ニチー”のビニール袋を取り出した。
気分が落ち込んだ時は元気の出る料理が良いだろう。
今回作るのは、ナゾ肉の味噌漬けに決めた。
さて、材料の確認をしよう。
味噌、ケチャップ、みりん、サラダ油、コメ、キャベツ、ナゾ肉だ。
まず、コメを研ぎ腹の中へ飲み込んで炊く。
その間にナゾ肉を一口大に切ると、敵意を込めずに炎で細かく突き刺して味を染み込みやすくする。
そして腹から木製ボウルを取り出すと、味噌、ケチャップ、みりんを混ぜ合わせ、ナゾ肉を投入し、揉み込んで冷蔵庫のような箱へ入れて寝かせる。
次に、キャベツに炎の竜巻を纏わせて千切りにする。
コメが炊き上がると、腹から木皿と共に取り出し、キャベツと一緒に盛り付けた。
そして、寝かせ終えたナゾ肉入りのボウルにサラダ油を塗し、炎の竜巻を投入すると中火程度の敵意を込めて焼き上げ、皿に盛り付けたら完成だ。
火加減を細かく調整したことで、外はカリカリ中はジューシー。
味は勿論だが、噛んだ瞬間に肉汁が滲み出て食感も楽しめる逸品に仕上がった。
ナゾ肉で山盛りになった木皿をテーブルに置くと、仲間達の目が輝く。
「出来たぞ、食え!」
すると、待てを解かれた犬の如く、ダルスが勢いよくナゾ肉を口に放り込んだ。
「んんっ!! うまぁ〜!」
ダルスの顔が緩み、笑顔が溢れる。
フォンへ視線を向けると、凄まじい勢いで箸を進めていた。
「うまっ! うまっ! うまいんだわさ!!」
「あーっ! オイラの肉っ!」
それに気付いたダルスも負けじとナゾ肉を頬張る。
「ダルスに取られるくらいなら……アタシが全部食べるんだわさ……」
「この肉は……オイラが食うっす!」
フォンとダルスは、まるで餅つきの如く交互にナゾ肉を取っていく。
俺達はそんな二人をジト目で眺めていた。
気が付くと半分以上の肉が二人の腹に収まってしまった。
このままだと全部食われてしまうと危惧した俺達は、自分の分の肉を取り分けると、二人の勝負の行方を蚊帳の外から見守る事にした。
皿の上のナゾ肉が残り一つとなると、フォンとダルスの箸がナゾ肉に突き刺さる。
「これはアタシのものだわさ!!」
「いーや! オイラのものっす!!」
二人は睨み合い、デコとデコが激しくぶつかる。
暫しの間、膠着状態が続くが、フォンが動き出す。
「あっ! あそこにグレインが居るんだわさ!」
フォンがダルスの背後に指をさすとダルスが振り返った。
「よぉグレイン! って、居ねえっす!」
フォンのトラップが炸裂し、最後のナゾ肉はフォン口に放り込まれた。
「あーっ! フォン、汚いっす!」
「へへーん! こんな簡単に騙されるアンタが悪いんだわさ!」
フォンは立ち上がりダルスを指差すとドヤ顔をきめた。
「うぅ……オイラの肉……」
ダルスは涙目で空の皿を眺め、俺達はいつもの光景に苦笑する。
こうして、山積みにされたナゾ肉は僅か5分足らずで姿を消してしまった。
夕食が終わり、俺は気になっていた事をメルダに質問する。
「なぁメルダ。家が燃えた時、なんで煙突だけ煙が漏れたんだ? あれだけ燃えていたら、窓やドアの隙間からも煙が吹き出すだろう?」
「前に家の中に温度を抑える結界を張ってあるって教えたと思うけど、結界の中でも物は燃えるのよ。煙突は通気口を兼ねていたから、煙は全て煙突から出ていたの」
「なるほどな。でも、俺が100万度を出した時は家が燃えなかったぞ。あれはどうなってるんだ?」
「あの時は鉱石一点に熱を集中させていたから燃え移らなかったのよ。でも今回は色んな物に火をつけられたから燃え広がってしまったようね」
メルダの回答が腑に落ち、俺は大きく頷いた。
直後、視線を感じフォンに目を向けると、何かを言いたそうに俺を見つめている。
「フォン、どうした?」
「トール様、次はいつ向こうに帰るんだわさ?」
「うーん、そうだな……特にいつとは決めてないが、どうかしたのか?」
すると、フォンの目がギラリと光った。
「アタシ、トール様の居た世界に行ってみたいんだわさ!!」
「そんな事を突然言われてもなぁ……」
(こいつは突然何を言い出すんだ!? そんな易々と連れて行けるわけないだろう)
「あっ、あたしも行ってみたいわ! ねぇトール、前に連れてってくれるって約束したわよね?」
「ん? そんな事言った覚えは……」
(いや待てよ、メルダには|送別会の後(19話)に約束した覚えがあるぞ……)
【あたしもトールの居た世界に行ってみたいなぁ……】
【あぁ、また今度な……】
「覚えは……あるな。あの話、まだ覚えてたのか……」
「勿論よ! 」
メルダは即答した。
(つい勢いで約束してしまったが、こいつらを連れて行って本当に大丈夫だろうか?)
俺が頭を抱えていると、ダルスも話に割り込んできた。
「あーっ! 二人だけズルいっす! オイラも行きたいっす!」
「ダルス、お前まで言い出すのか……」
「当然っす! オイラだって異世界には興味があるっす!」
「うーん、でもなぁ……」
俺は三人の顔を見回しながら思案を巡らせる。
(異世界……か。そうだよなぁ。こいつらからしたら地球は異世界になるんだよな。地球でしか出来ない事もあるし、きっと貴重な経験になるだろう。それは俺にとっても嬉しいが……)
ふと我に帰ると。
「トール様っ!」
三人の。
「トールっ!」
顔が。
「トール様っ!」
近い!
「「「ねぇ!」」」
「……仕方ないな。連れて行ってやるよ!」
俺は三人の勢いに気圧されてしまった。
「「「やったー!!」」」
三人は笑顔で互いにハイタッチをした。
しかし、オルガに目を向けると浮かない顔をしている。
「オルガ、どうした?」
「その……トール様の居た世界には、全員で行くのか?」
「いや、未だ何も考えてないが……何かあるのか?」
「……オレは出来ればここに残りたい」
その言葉に全員の視線がオルガへと向けられる。
「えーっ! オルガは行かないんだわさ?」
「折角の機会なんだから、一緒に行きましょうよ!」
「きっと楽しいっす!」
三人はオルガを誘うが、オルガは首を横に振った。
どうやらオルガは本当に行きたくないようだ。
「オルガ……わかった。お前は留守番だな……数日で帰ってくるから、待っててくれるか?」
「ああ。我儘を言ってすまないな……」
オルガは申し訳無さそうに頭を下げる。
「気にするな。じゃあ、オルガ以外は全員地球へ行くって事で良いんだな?」
すると、ドラムが手を挙げた。
「いや、我輩も残るのである」
「ドラム……お前も何かあるのか?」
ドラムがゆっくりと頷く。
「わかった。じゃあ地球へ行くのは、フォン、メルダ、ダルスの三人だな」
三人は大きく肯首する。
そして気がつくと深夜になっていた。
「よし、出発は明日の昼にしよう。今日は遅いからもう寝るぞ!」
各々は明日へ向けて就寝準備に取り掛かる。
だが、俺は誰かに肩を叩かれた。
振り返るとドラムが周囲を伺いながら、ひっそりと俺に耳打ちしてくる。
「トール様、最近オルガの様子がおかしいのである。少し心配なので、我輩は残ろうと思うのである……」
確かに、ここ数日オルガは元気が無いように見える。
「わかった。すまないがオルガを頼んだぞ!」
「任せるのである!」
こうして俺達は二手に分かれて行動する事になった。
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