40話 溶けちゃった
「いっ、1億度って……非常識だわ。そんな温度、魔法でも出せないわよ……」
「まっ、そんなわけだから、100万度なんて余裕だよ!」
「そ、そう……じゃあお願いするわ……」
俺はメルダから鉱石を受け取り、全身炎化し腕から『空間収納』へ飲み込んだ。
鉱石を炎で包み込むと、瞑目し全力で敵意を込めて熱する。
「ぬおおおお!!」
5分後、腹に手を突っ込み、熱した鉱石を取り出してメルダに渡そうと手を伸ばす。
「こんな感じで良いのか?」
「ちょちょちょっと! あんた! こんな熱いものを直接触れるわけないじゃない! 魔術式で表面温度を抑えてもこんなに熱いなんて……」
鉱石は薄っすらと赤くなり、巨大な陽炎が立っている。
「おお、悪い悪い。ところで、こんなに熱いものを室内に出して良かったのか?」
「それは大丈夫よ。この家の中は温度を抑える結界を張ってあるから。勿論あたし自身にもある程度の温度に耐えられる結界を張ってあるわ」
「そうか、なら大丈夫だな」
「ねぇトール様、その鉱石触ってみたいんだわさ!」
「ん? いいぞ、ほれ」
「ありがとだわさ!」
フォンは鉱石を手のひらに乗せ眺めている。
そして、メルダが鉱石に向けて詠唱を始めた。
「??????」
「……」
しかし、何も起こらない。
「ダメだわ。温度が低いみたい。もっと高温にしないと……」
「わかった。もう一度やってみよう」
どうやら怒りの感情が足りなかったらしい。
フォンから鉱石を受け取り、再び鉱石を腕から飲み込み敵意を込める。
今度はもっと具体的にやってみることにした。
(面藤めぇぇぇぇ! 俺に面倒事ばっかり押し付けやがってぇぇぇぇ!!)
面藤というのは俺の上司の“遠藤料理長”の事だ。
いつも部下達に面倒事を押し付けてくるので、裏では“面藤料理長”と呼ばれている。
そんな面藤の顔を思い浮かべながら、鉱石に敵意を込める。
そして5分後、腹から鉱石を取り出し、フォンの手のひらに乗せた。
「??????」
「……」
メルダが再び詠唱を掛けるが、やはり何も起こらない。
「う〜ん、ダメだわ。まだ温度が足りないみたい……」
「そうか……もう一度やってみよう」
再度、腕から鉱石を飲み込む。
だが、面藤よりも強い敵意が込められそうなものはあるだろうか?……
俺は暫し思案すると、一人の人物が思い浮かぶ。
漁業都市タナトス王国の国王タナトス・ハイベイだ。
真っ白な顔面に、何も考えていないような空気を纏う残念な国王。
おそらく、俺が異世界で最も虫唾が走る人物だろう。
そんな奴の顔を思い浮かべながら、鉱石に敵意を込める。
(あの歌舞伎野郎ぉぉぉぉ! 俺達を侮辱しやがってぇぇぇぇ!!)
「ドロッ、シュゥ……」
すると、鉱石が溶け落ち、蒸発してしまった。
「あっ、あれ?」
「ど、どうしたの?」
「いや、その……鉱石が溶けて無くなっちゃった……」
「な、無くなっちゃったって……理論上500万度だって溶けないのよ! そんなあっさり無くなっちゃったって言われても……本当に非常識よ!」
どうやらあの国王は、俺の思っている以上に生理的に合わないようだ。
まさかの事態に俺自身も驚愕する。
「まぁいいわ。鉱石はまだあるから、次行きましょう」
「そ、そうだな……」
メルダから鉱石を受け取り、再び体内へ飲み込む。
そして、クソ国王を思い浮かべながら、中火程度の程度を込める。
(あ、あの歌舞伎野郎ぉぉ……)
5分後、鉱石を腹から取り出すと真っ赤に光っていた。
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